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俺がお前を解放してやる…。
katsuragi fukuhenshuchou no saigo no kake
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
この21世紀に!
主従ですよ。
分家筋の坊ちゃんと、本家の使用人ですよ。
本作は「成澤准教授の最後の恋」のスピンオフ作品で、主人公は老舗出版社の文芸誌の副編集長・葛城夏彦。
「成澤〜」の舞台は都会なのですが、本作は一転「常盤」という土地の閉鎖的で土着的な人間関係に縛られた空気感が色濃いのです。
夏彦の実家自体は、父親が本家の意に染まぬ女性と結婚したため永らく絶縁していたけれど、本家の家政婦の息子・深見諒は、長じてもずっと本家御曹司の和也の世話係として家に縛り付けられていて…
東京に住み、普段「葛城本家」の重圧から離れている夏彦は、運命に従っている諒を助けたいと心で思いながらも若さゆえ結局は何もできず。
和也の飲酒運転事故の罪を被った諒を助けられずに完全に本家と訣別して10年、再び夏彦の前に諒が現れ…と物語が動きます。
前半は、諒の不憫な生い立ちと健気さが、回想の形で描かれます。
後半、研修のために東京に来た諒に、その健気さに、その強さに、同時にその哀しさに、心を攫われる夏彦の心の葛藤。熱を出した諒の譫言のような告白に遂に応じる夏彦の激情!
高遠先生の文体は、華やかな語彙と流されすぎない硬質な文章が美しいですね。読みやすいんだけど、実に華麗だと思います。
途中で三島由紀夫の「春の雪」が引用されますが、三島的文章世界とも通ずると感じます。だからこそ現代の中の「主従」テーマに自然に引き込まれるのかも知れません。
Hシーンは最後に一回。夏彦が諒を「常盤」の地から奪い、諒が夏彦を選ぶ。その2つは対等で、悦びに満ちている…
「成澤准教授の最後の恋」のスピンオフ。元の作品は読んでないけど、これ単体でOKでした。
地元の名家を飛び出して、編集長をしている葛城夏彦、なっちゃん。もっさり風味ながら素材が良いのでなにやら貴公子の臭いが。
一方、実家で使用人をつとめてきた諒。かわいくて純情ながら、使用人として自分の感情は表に出さず静かに暮らしている。健気受けくんが可憐で可愛い。
これまでのいきさつや事件、子供の頃からの2人の交流が丁寧に描かれていて、無駄なく無理なく楽しめる。
当て馬くんは実家の跡取り、和也。これがどうしようもないキャラで、未練なく憎めるのでよい。まあ、勧善懲悪物語ですね。
和也について東京に出てきた諒は、和也と共に暮らしながら夏彦の父の会社で研修することになった。が、無責任な和也は、高熱で倒れた諒を放置して遊び呆けており、夏彦がかけつける。
「夏彦様」「ここにいるよ」「夏彦様、夏彦様」
のせつないやりとりが泣ける。
この、名前を連呼するのってやばいですよね。
諒がすごく可愛かったので、もう1個星をつけようかと思いましたが、実家を継ぐことになってしまった夏彦の境地とか、いい味キャラの親戚の子が生かし切れず都合がよいキャラだったなあ、とか、色々思い出しているうちに、やっぱりストーリーとしての出来でつけようと、この評価になりました。
前作は未読ですが、楽しくよめました。
多分他の作家さんならそこまでピンときたお話じゃなかったかもしれません…が、高遠さんの文章がやはり語感がよく綺麗なので小説として惹かれるものがありました。
設定は遠距離恋愛で主従で幼馴染で…好きな相手は自由にならない檻の中にいて、主人公はそこから奪いたいと思っているのに自分にはどうすることもできないと長年距離を置き、でも最後は「お前が望むなら連れ出してやる」と自分からそこを出たいと口に出すよう訴えます。
半分くらいが回想シーンで、時間が遡ったり上ったりで一体今どういう状況なのかちょっと分かり辛くもあったのですが…
ずっと結ばれない身分差や距離差が付きまとっていて、2人ともよそよそしくて、せつなくもどかしい恋愛がお好きな方には胸をうつ作品かもしれません。
ただ私は途中まではよかったのですが、ラストの展開がなんだか急ピッチな気がしてもう少し「奪ってやった」感が出ていればよかったなぁと少し残念に思いました。
それと、何となく「諒」というキャラクターのことが掴めず終わりました…。健気で一途なのはわかるけど、それなりの屈折を抱えて育ったとあります。事故の後泣いていた姿・出て行きたいけど出られないと訴えた姿・ずっと好きだったと言った姿・出版社も買収すればよいといった姿や和也に対しての思いなどなどがなんだか同じ人間に集約していかなくてちょっと萌えきれませんでした。
ただ、小説としてはやはり作者さんの文章力や構成力が素晴らしいので良くできた作品ではないかと思います。
『成澤准教授の最後の恋』のスピンオフです。
『葛城副編集長〜』読みたいがために、前作は読みました。
攻めの葛城夏彦は文芸誌の副編集長で、31歳。
父方の実家は有名な豪農でありながら、それを厭い本家とは一線を引いていました。
受けは、葛城家の関連企業で働く深見諒、29歳。
母が住み込みで葛城家で働いていたため、葛城家では使用人という立場。
幼い頃に母と死に別れ葛城本家に生活から学費まで何もかもを世話になった諒は、精神的に葛城家に縛られていると言えます。
子供の頃から、それが理不尽に感じていた夏彦ですが、子供ではどうにもならずそっと小さく手を差し伸べることしか出来ませんでした。
将来の本家のために、東京の大学へ通う間だけ夏彦の実家預かりとなった時も、本家の使用人としての立ち位置を踏み出さずにいた諒。
そんな頑なにも思える諒が、次第に普通の若者としての生活を謳歌し始めていた矢先、事件が…
それがきっかけとなり、夏彦は本家との縁を切り、十年諒とも疎遠でした。
昔から黒目がちの瞳が可愛いと思っていた夏彦は、しっかり子供の頃から諒へ惚れていたようです。
よく十年も会わずにいられたなと思いますが、夏彦は自分が無力で諒に何も与えてやれないと思い込んでいたので、この時間は必要だったのかもしれません。
夏彦はずるい大人の面を持っていますし、自分に対して言い訳をし、熱をやり過ごしていますが、わたしはこういう攻めキャラは好きです。
自分が大人になってしまっているせいか、『そうなのよ、大人も辛いのよ』なんて思ってしまう(笑
本当はもっと早く諒の手を引いてやれば良かったのですけどね。
ああでも、引いたら余計なものまでついてきちゃいましたけど。
全体的に、夏彦の回想が多い作品です。
子供の頃に初めて会った時から始まり、大学在学中に起きた事件まで。
その中で、本家の嫡男である和也が出てきますが、将来こいつが嫌な当て馬として登場するんだろうなーなんて思っていたんですが、ただの馬鹿なだけだったようです(苦笑
葛城は前作の攻め、成澤の学生時代からの友人で、受けだった蒼井の上司。
夏彦は前作にもかなり出演しておりました。
そのお返しではありませんが、今作には成澤たちがよく出てきますので、やっぱりセットで読まれた方が良いかもしれません。
前作に引き続き、イラストは高永ひなこさん。
前作は表紙がイマイチ(すみません)で中の挿絵が素敵だったのですが、今回は表紙の葛城が不遜な感じでイメージ通りで素敵でした。
「成澤准教授の最後の恋」成澤の親友で文芸誌の副編集長をしている葛城夏彦と葛城本家の使用人、深見諒の恋。
お世辞にも上品とは言えない見た目の夏彦でしたが分家とはいえ旧家の血筋。
幼い頃から葛城家の使用人として仕えていた諒にとって外からくる夏彦は自由の象徴であり憧れでもあったのですね。
高永さんの描く出会いの時のカットがとても素敵でした♪
囚われの身の姫を救い出す王子(笑)
王子は、姫に自分から望んでそこから出てこいと言います。
姫が王子の手をとりハッピーエンド。
しかしこの姫、意外としたたかでした。そこがまた良い(笑)
夏彦、頑張れ!
高遠さんではかなり好きな作品です。今まで読んだ中でも上位には入りますね。
ただ、諒(受)の置かれた状況が、何とも時代錯誤過ぎないかい・・・と思ってしまいました。いっそ時代ものならすんなり受け入れられたかもしれません。でも、そこに目を瞑れば、キャラクターもストーリーもよかったです。
終盤の和也に対する言葉からもわかるように、諒が結構したたかで、でもそれがよかったんですよ。ホントに健気でなんでも言いなりで耐え忍ぶような薄幸の受も、それはそれで大好きなんですけどね。
その分、葛城(攻)が意外と純だった?
お約束通り、自分が捨ててきた『家』に縛られた使用人である諒を、葛城が助け出すストーリーかと思ってもいたのですが(ほら、ルビーですから)、いや違いましたね。なんといっても、実は諒が助けを待ってるだけの無力な存在じゃなかったし。
しかし、これラストはどうなるんでしょうか。諒の思惑(?)通り、葛城は『家』の後継ぎに?それがちょっと消化不良と言えなくもないですね。タイトルが『最後の賭け』なんだから、なおさらはっきりさせてほしかったんですよ。
ルビー文庫だから、これ以上長くできなかったんでしょうか。もう少し、最後余裕を持って書き込んで欲しかったな~と、そこが惜しいです。
でも、トータルではよかったです。好きなんですよ。ラストにモヤモヤが残るのに好きと言えるのは、それだけで稀有ですね。
『成澤准教授の最後の恋』のスピンオフです。そちらは読んでなくても大丈夫です。でもこの作品を読んだら、そっちも読みたくなるだろうと思います(笑)
すごく良かったです。
数ヶ所気になる点があったので神評価にはしませんでしたが、萌×2がなかった頃なら、たぶん神評価にしてたと思います。
まず文章ですねー。
高遠琉加さん、本当に文章が素敵。高遠さんて、たぶんきっちりプロットを立てるタイプじゃないと思うんですよ。大枠だけ頭のなかで決めてて、あとは筆の流れるままに執筆されるタイプじゃないかなァと。パキッとプロットを立てると逆に書けなくなるタイプ。BLでは高遠琉加さんと杉原理生さんがそうじゃないかなと踏んでます。で、私はこのお二人の文章がめちゃくちゃ好きなのです。(違ってたら、高遠先生、杉原先生ごめんなさい)
ミルフィーユみたいな文章だなと毎度思います。エピソードを積み重ね、セリフより、エピソードを何層も何層も重ねることによって心情を説明する。
やばい、文章の話だけでどんだけ文字数使うんだよ私。
内容は、幼馴染みモノで主従モノかな。
田舎の豪族みたいな旧家で使用人をしてた母親を亡くし、天涯孤独となった受け。そのままそこで養われることになるんですが、まるでシンデレラです。愚痴ひとつ言わずに「家」に仕える受けは、健気の見本。
そんな受けを幼いときからずっと見てきた攻め。けど攻めは、年に数回しかそこに帰らない親戚で。さらにまだ力もない子供であることから、庇っても庇いきることができないんですよね。
しがらみにがんじがらめにされてる二人は果たしてどうすれば結ばれるのか。
まあ、タイトルにある通り、攻めが「賭け」に出るんですけどね。
すれ違い続ける前半はひたすら切なく、賭けに出てからの後半はひたすら気持ちが良かったです。
ちなみに気になるところは、ドアホの和也が「父親には借りるな」と言うのは変じゃないかなと。お金に困ってないならそう言っても不思議はないけど、本当に困ってるならそういう条件はつけないんじゃないかな。
それに類して、前半の緻密さに比べると、後半はやや不自然な箇所が多かった気がしました。
まあでもこのあたりって、この物語においては大事じゃない場所なのでokok。
高遠作品、まだ数冊しか読んでいないけど、読む毎にこの作家さんの文章が好きになるのが分かります。
背景や心象の表現が自分の中にぴったり嵌る、それが心地良い。
所々から本当に作者は本好きなんだなと、それを基としてこの文章が出てくるのが感じられ、まさに天職ではないかと、自分の中で大絶賛を送っています。
葛城夏彦の父の実家は、歴史も名誉も資産もある名家。
諒は、その家の住込み雇人の子として封建的な身分制度そのまま、葛城家本家に使える事になる。
2才下の雇人の子、幼いながらも主従を崩さない諒との出会いは、夏彦が8つの時だった。
夏彦は、雇人の子は雇人じゃないないのに恩やしがらみで本家に囚われた諒をどうにか解き放ちたいと思い続けていたが・・・
好きや愛しているとか無くても、夏彦の心から離れない諒へのこだわりが、諒の貼りついた仮面から漏れる感情が、2人の強いつながりが見て取れるんですが、本家への恩と言う「檻」は諒を離してくれない。
ここに鬱々としている自分だけど、でも諒があっさり振り切ったら、それはそれで薄情だと思ってしまうだろうし!(悶)
夏彦が「本懐が遂げられないのなら来世に夢を」という三島由紀夫のかの時代を出した事で、時代錯誤感と諒の窒息する環境に重みが加わったようでした。
切ない作りでしたが、立つ瀬が多かったのも良かったです。
夏彦の祖父や従兄弟の光夫、明るい父母が上手く働いてくれ、友人・成沢恵も和也絡みで手伝ってます。
諒もやられ放題だった訳でもないと知った終盤になってからの、
「高い買い物をなさいましたね」(諒を手に入れた事で、夏彦の負担増に)
「和也様なんて本家後継ぎじゃなかったら相手にしませんでした」(諒、冷たい微笑)に、本家バカだけじゃなかった事が分かります。
可愛く甘える・そそる事を言える諒とクールな諒、夏彦全部の良いパートナーになれる資質に安心しました。
タイトルの、夏彦の「賭け」の勧善懲悪も良かったです^^v
さすがは高遠先生♪