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確かBL帯の検索サイトで初めて知ったと思います。
あらすじを読んで面白そうだったので、古本で購入しました。
榊先生の作品は初めて読みましたが、文章表現というか、
今回の作品で用いられた言葉が私には合わなくて、読んでいて辛かったです。
方言のようで方言ではなさそうな、一般的な言葉でも十分に伝わる言葉も、
わざわざ聞いたことも見たこともない知らない言葉がたくさん使われていたり、
日本語で十分に伝わる言葉でも、わざわざ英語(和製英語?)で書かれていたり、
漢字を使わず全て平仮名で書いていて読みづらかったです。
偶然にも、この作品を読む前に、他の作家さんの作品で、知らない言葉が
何度か出てきましたが、その作品の時は「新しい単語を知った」という程度で、
前後の文章とも適した単語を使っていたので、知らなくても違和感なく
スムーズに読めました。しかし、上手く表現できませんが、
この作品は前後の文章とも、作品の雰囲気とも合っていないので、
読んでいて強い違和感を何度も覚えてストレスになってしまいました。
もし舞台に合わせて心理描写以外の説明文や情景描写も全て方言に
統一しているのなら、あとがきなどで解説してほしいと思いました。
地方といっても、どこなのか、舞台となっている地域の規模が
どのくらいなのか、とか、全く記述が無いので、
作品の世界観が掴めませんでした。
また、これは完全に個人的な好みになってしまいますが、
攻めの名前の読みがどうしても生理的に受け付けられませんでした。
生理的に受け付けない名前があっても、読んでも大丈夫な作品は
今まで何作品かあったので、今回も名前の読みが駄目でも漢字が
違っていたら大丈夫だろうと思って購入しましたが、今回は駄目でした。
今回の評価は「萌」と「中立」で非常に迷いました。
元指名手配中の逃亡者と、通報した者の組み合わせは、
とても面白いので、迷わず「萌×2」です。
人物設定、物語の構成や内容自体は、世界観が伝わってきて
面白いと思えたので「萌」です。
しかし、作中に使用されている単語と攻めの名前が、
どうしても引っかかりました。
攻めの名前については、自分が受け付けられない名前の一つだから
ということで、それで評価を左右するのは違うと思うので、
そんなに評価を迷うことはありませんでしたが、
やはり、使われていた言葉に関しては、読むのが辛くなるほど
ストレスを感じていて、どうしても妥協できませんでした。
面白い材料が揃っているのに、心苦しいですが、
今回は「中立」評価にしました。
使用した単語さえ抵抗を感じなければ、「萌×2」に近い「萌」でした。
他の作家さんで、同じテーマの作品をもっと読んでみたいと思いました。
最初に言っておくと、思い切り犯罪者×年下受け、なのでダメな人はダメなのかもしれない。
朱砂は十五歳の時に、病院帰りの電車の中で、唇を奪われた。
その朱砂の唇を奪った相手は、指名手配中の逃亡者だった――。
片田舎のローカル線の車内で突然起こった出来事。
それが、朱砂と稲月真男との出会いだった。
その後、真男が指名手配犯であることに気が付いた朱砂の通報で真男は逮捕される。
そして、七年後、二十二歳になった明日なの前に再び稲月が現れた。
驚くと同時に、怯える朱砂をよそに、稲月は勤務先を告げただけ……。
生まれつき身体も弱いことを理由に、高校を卒業してから、定職にも就かずふらふらとしている朱砂にとって七年前の稲月との出会いはとても印象深い出来事だった。
朱砂は、そんな稲月に対して興味を抱き、距離を近づけようとし始める。
という感じの話でした。
病気がちで友達もいない朱砂にとって、稲垣との思い出が今までの人生で一番強烈に印象に残る出来事で、その思い出から出てきた稲月は強烈に朱砂の興味を誘って。
朱砂はその気持ちに正直に、稲月に近づいていくけれど、犯罪者ではあるものの、しっかり地に足を着いて真面目に仕事をしている稲月に近づこうとすればするほど、朱砂は自分の心無い言動で稲月を傷つけたり、自分の至らなさを思い知ったりする……そうやって朱砂が少しずつ成長していく。
なんだかとってもキレイな話でした。
じんわりきました。
これ、BLじゃなかったらドラマみたいな話だよなー……と、なんだかしんみりしてしまった。
なんだかキレイな世界観で作りこんで、静かなドラマにしてほしいなー……とか思ったりするくらい、あったかくてゆっくりな話。
扱うテーマが「犯罪を犯した人間」だっただけに、ちょっと重くないかな? とドキドキしながら読んだ部分もあったんですが、消化不良を起こすこともなく、重くも、軽くもなくちょうどいい加減でその過去も描いた話でした。
静かでしっとりした小説がお好きな方にはオススメです。
帯『無理やり唇を奪ったのは指名手配中の男だった-』
話の始まりのシーンは唐突です。
病院帰りに空いた電車に乗っていた朱砂〔受〕に突然に隣り合った男・真男〔攻〕がキスをしてくる。
呆然としつつ電車を降りた朱砂はその相手が駅内に貼られている指名手配犯の男だと気付き、やや躊躇した後に通報します。
そして7年後、22歳になった朱砂は高校卒業後に進学も就職もせずに過保護な母親を少し鬱陶しく感じながら所謂ニート生活を漠然とおくっている。
そんな朱砂の前に、公園で真男と再会するのです。
真男は近くの木工所で作業員として働いていて、最初こそは自分に復讐に来たのかとも思った朱砂だったけれどどうやらそうではなく、公園の子猫を真男が飼い始めたのもあって何となく朱砂は彼が働く木工所へ行っては、昼食を一緒に公園でとる様になる。
朱砂は田舎町の結構お坊っちゃんで病弱な事もあって、ニート生活をしていても特に非難される事はなく、木工所へ行き、真男と会い昼食を食べる。
そんな不思議な関係が続くも、あるきっかけで真男はその町から、朱砂の元から去ってしまう。
その3年後、緩く止まっていたかの様な主砂の時間は動き出し精力的に一人暮らしをし進学しながら働いていて、そして再び真男と出会うのです。
自分は本来なら成人してるのにニートで母親が世話してくれるのを当然だと思っていてありがたみを感じていなそうなタイプってそんなに好きじゃない方なんですが、不思議と朱砂にはイラッと来ないで素直に感情移入出来ました。その辺りの匙加減が榊花月さんの上手さかなあ。
指名手配犯という設定の割には淡々と語られるトーンは静かで派手さはありませんがじっくりと読める話。
挿絵の葛西リカコさんは、特に淡く抑えた感じのカラーの色味が内容と実に合っていて良かったですよ。
榊さんの文章は私にはキツイと感じることがあるのですが、
今回はそれがうまく作用して心にひっかかってきました。
病弱であることと、坊ちゃん育ちで過保護であることに甘んじて
無気力だった主人公の朱砂が、恋という感情を知って
心をきしませながら相手を思うことで成長していく話です。
ただ健気でいい子じゃないのがミソです。
お相手は10歳近く上で前科持ち。おまけに無口で不器用で
わかりにくい男なので経験のまったくない朱砂はかなりもがきます。
でも、自分の幼さ、至らなさに気付く聡さもちゃんと持っています。
世間知らずのぼっちゃんと逃亡者という立場で出会ってから10年、
相手に向かって手探りながら懸命に手を伸ばし続けて
周囲の理解者にも助けられ(いい感じの脇がいてくれてよかった)
やっと届いたときにはホロッときました。
やや前途に不安(過保護な親)はありますが、幸せを祈りたい気持ちです。
単にさわやかでもほっこりでもない、少しきりきりとしたお話です。
でも心にいつまでもいるような予感がします。
葛西さんの絵もいいです。
かっこいいのに意外とヘタレな攻め様の背中にはなまる!です。