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カリスマデザイナー×デザイナーの卵のゴージャス・ラブ!
表紙が大変甘い雰囲気で、押せ押せ攻めと流され気味の受けのデロ甘溺愛気味の話かと思いきや、意外に甘いだけではなかった。全体的には面白いのだけれど、どうにも納得できない部分もあって複雑な心境になる。
受けに幻想を見過ぎていたのかもしれない。
出だしは上々。読み始めの受けの郁巳とローランの出会いの流れはお約束ですが、なにやらわくわくさせられるものがありました。
いかにも伊達男なローランのプレイボーイっぷりと純で初心な郁巳。
ローランが郁巳を可愛がり、からかい、色恋慣れていない郁巳をどんどん口説きにかかり、翻弄される郁巳の構図はやはりお約束でも読んでいて楽しい。
郁巳もただ翻弄されるだけではなく、ローランに抗議(可愛いものだが)するぐらいの気の強さも持ち合わせている。橘さんの作品のこういうちょっと気の強い所のある受けは大好きです。
ローランは男女構わず遊び慣れた伊達男で、郁巳もその流れで口説いているのかと思いきや、意外に本気になる相手はスレていない初心な郁巳のようなタイプが好みらしい。
しかもそれを不本意ながら他者に指摘される流れ、遠まわしに「お前は郁巳に対して遊びでなく無意識に本気なのだな」というのも恋愛上級者が落とし穴に落ちたような感じが美味しい。
しかし郁巳がローランへの恋心を自覚した中盤あたりからアレアレ?という展開になった気がしてならなかった。
デザイナーとして憧れていたローランへの気持ちは恋心に変化していく、けれどローランにはパオラという女性がいる。ふたりの口から恋人ではないと聞いていても親密なのには変わりなく。
自分を口説く一方でパオラとも関係しているのでは?疑いの気持ちと郁巳の勘違いで、心が手に入らないならなら体ででも、という心境に。
しかも体を重ねる流れの段階で、郁巳は恋人じゃないからと体を重ねてはいけない事はないのだ、という自暴自棄というかヤケを起こしたような暗い心境になるし。
ローランはローランでやっと郁巳が自分に全てを明け渡してくれるようになった!と盛り上がってるし。
ふたりの気持ちのチグハグさが読んでいて微妙な気持ちにさせられた。
ローランは郁巳も自分を好きでいてくれる、だからパオラとの関係について詳しく話さなくても大丈夫と思いこんおり、その考えが郁巳を追い込むし傷つけてしまって。
またそれを他者から指摘されてという所がう~ん・・・駄目な男だと思わずにはいられない。
遊びの恋と本気の恋では気持ちの深度が違うんだって事を、もっと考えなきゃねってことです。
それに気が付いてからの、ローランの行動は素早くそしてなりふり構ってられないという状況も手伝って頑張ってたので、ドキドキワクワク感は後半また持ち直して楽しめました。
郁巳のデザイナーとしての第一歩のオチも納まる所に納まった感じで、末永くふたりでお幸せに!です。
短編では本編でちょこちょこ登場するローランの秘書ルチオ(美人)とパタンナーのセルジオ(野獣系)の短編が収録されていました。
ツンデレで素直になれないルチオと、惚れた相手にはとことん弱くぞっこんなセルジオ。
好きなのに、素直に好意を言葉に出来ずつっけんどんな態度をとり、辛辣な言葉を口にした後でドーンと後悔の念に陥るルチオ。
だけど本当は、そんな風にルチオを誘導して自分の方がやり込められてるというのを装っているちょっと腹黒いセルジオ。
このふたりの恋の駆け引き話が読みたいです!