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nemurenuyoru no hitsujitachi
ミステリーとサスペンスが混ざったような、ちょっと痛々しい作品でした。松前さんは可愛らしい雰囲気の作品ばかり今まで読んでいたのですが、最近になってかなり昔の作品に手を出したら痛々しくせつないものが多かったために少し驚いています。
そんな中でもこれはかなり主人公の境遇が辛く、最後にそれを主人公が許せたとしても、私はなにか周りの大人に対してもやもやとしたものが残りました。
お話は、主人公の成実がレンタルビデ店で強盗(?)に出会い、犯人が落とした拳銃を拾うところから始まります。
中身はけっこうとっ散らかっていて、私は前半部分はよくわからないところが多くて読むのが大変に感じることもありました。
成実は有名俳優が不倫して生まれた子供で、母親が亡くなったために父親に引き取られます。
しかしそこの本妻に冷たくされ、義理の兄で人気俳優である裕也のマンションで同居を始めるものの、裕也が優しくしてくれたと思ったのもつかの間、彼はぞっとするほどの演技力で、世間では好青年を演じ、家では成実を凌辱します。
俳優である裕也のファンで、義理の兄ということもあってひそかに憧れの存在だっただけにショックの大きな成実。
もうやめて下さいと泣きながら訴えるところはかわいそうというより怒りを覚えるくらいでした。
凌辱系は嫌いじゃないんですが、BLのある意味王道ネタとして楽しめるように書かれていなければ、どうにも…。もはや家庭内暴力、虐待を見ている気分。成実は追い詰められ、拾った拳銃で裕也を殺し自分も死のうと計画します。
このお話がとっちらかってると思ったのは、成実と裕也の関係と、冒頭の強盗のお話が混ざり会っているのにそれがうまく描けていないような…サスペンスにしては説明不足でバラバラした印象を受けました。
まだ初気作だからかな?とも思いますが、ストーリーはハラハラ出来ても、BLの萌えのようなものはほぼ感じませんでした。
お相手になるのは直行という、冒頭の強盗事件に関わっている謎の男なのですが、自分の中でどうにもこの男性が消化不良な存在でした。
そして、この男性になぜ成実が惹かれていったのかもわかりづらかった。
ネタバレになりますが、最後に強盗事件の犯人にさらわれ、駆けつけた裕也と直行が知り合いで実は…というオチも失礼ながら、驚くというより都合が良すぎる感じも…。
キャラの存在感としては裕也のほうが大きく、裕也でなく直行を攻めキャラにしたのはなぜなのか、その説得力がもう少し欲しいところです。
直行と強盗事件の部分を除いて、成実と裕也のドロドロした関係とその収束はうまいお話だったと思います。
BL的な楽しさや萌えはあまりないお話だと思いますので、そのあたりは注意したほうがよい作品ですが、サスペンス好きなら楽しめると思います。