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――俺から逃げるのなら、今のうちだぞ。 孤高の英国伯爵とけなげな執事見習いのキスから始まる禁断のノーブルラブ♥
祖父が執事として仕える英国のオーランド伯爵家で働くため、渡英した紫里。
実は紫里は、幼少時代を祖父に預けられる形で、自身も幼少時代をこの伯爵家で過ごしたのだった。
その時に弱虫だった自分に自身を与えてくれた現当主で、幼なじみでもあるライオネルに恩返しがしたくて、ライオネルの元で働くために紫里は、再び英国まで戻ってきたのだった。
ところが、ライオネルとの再会を心待ちにしていた紫里とは違い、冷徹な伯爵に成長してしまったライオネルから、出会い頭にいきなり「不法侵入した罰だ」と唇を奪われ、挙句、屋敷で働くことを拒否されてしまう。
なんとしてでもライオネルの元で働きたいと思っていた紫里は、どんな条件でも従うから、とライオネルに懇願する。
そんな紫里にライオネルは「働きたいなら、お前には夜の相手をしてもらう」といきなり押し倒してきて……。
という話でした。
ライオネルのことが好きで好きでたまらない紫里が、頑張ってライオネルを追いかけていくけれど、ライオネルにはそっけなくされ。
それでも引き下がらない紫里にライオネルは何とかあきらめさせようとするけれど、紫里はあっさりその条件を飲んでしまって。
ライオネルは紫里を抱くけれど……という感じで。
自覚がないまま、紫里はライオネルのことが好きで。
その気持ちに気づく頃にはライオネルには「恋人」がいて。
紫里はその嫉妬に苦しむ。
物語を通して紫里視点で話が進むので。
ライオネルに憧れる紫里の切ない気持ちが伝わってきます。
ただ、最後のシーンは個人的にはできすぎている気がしました。
あえて何、とは言いませんが、それは乙女の理想過ぎるのかなー……と。
でも「伯爵」だし「英国」だし。
そういうキラキラした感じには事欠かない舞台設定だとは思うので、それはそれでありなのかなー? とは思えるので、そこまで気になる……というほどではありませんでした。
幼なじみ再会シンデレラストーリーがお好きな方はぜひ、どうぞ。
2か月連続刊行第二弾、続きものではありませんでしたが前作とリンクした場面が一箇所あります。ふたつの物語の時間軸もそう違わないようで、どちらから読んでも支障はないかと。
お話は受であるユカリと攻であるライオネルの幼い頃の出会いと、ふたりが成長するにつれに起こる出来事と気持ちのすれ違い別離、そして再会したふたりの現在という構成になっています。
『侯爵は甘やかな恋人』同様、受のユカリがとっても一途です。
幼い頃の出会い。内向的で痩せっぽちな自分に根気よく付き合ってくれ、遊びやスポーツを教えてくれた素敵なお兄さん。憧れや尊敬、そんな感情の擦り込みがユカリの恋情の中にはあると思うのです。憧れかがいつしか恋心にとはよくある話ですが。
またライオネルもユカリを兄弟のように可愛がっていて、やがて恋愛対象に変化してくけれど、ライオネルには複雑な感情や事情があって態度を硬化させるということでユカリを遠ざけようとする。
ユカリはライオネルの態度が変だな、と思ってもまた優しく接してもらえるという希望を捨てずにうろちょろするのです。・・・ちょっとストーカーぽい、かな?
やがてユカリはライオネルの真意を知らないまま日本に帰国し、ただひたすらにライオネルの元へ帰ることだけ思い成長していく。8歳から始まって22歳の現在までライオネルへの思慕は募るばかり。
ライオネルがユカリに対して冷たくあしらうような素振りを見せるのには訳があり、その訳によってライオネルはユカリまで間接的に嫌な思いをしてしまう(実際幼い頃にあった)のでは?という危惧を抱いていて。
でも、ユカリはそんなライオネルの気持ちに気が付いていない。だからどうにかしてひたすらに傍にいたい、役に立ちたいと頑張る訳なのです。
一途なのは良いけれどあまりに過ぎると、自分の気持ちばかりじゃなくってもっと相手の気持ちを考えてー!と思ってしまう。
一途って紙一重だなといつも思います。
相手の事を好きになり、恋愛感情あるなしに慕う、慕われるのは凄く良い事だと思う。でもあまり気持ちが強いと押しつけているみたいで、健気・一途ってやっかいよねぇと感じてしまう。
ユカリはまさに、それでした。
そしてライオネルは自分の側にいるなら体を差し出せと傲慢とも思える条件を出したのに、あっさりユカリが飲んだことで、実は内心焦っていたりしたらしく・・・ちょっとヘタレ?
貴族なんてそんなもの!と型破りな伯爵らしいという出だしだったのに、ユカリに冷たい態度を取る理由も、分からなくもないけれど跳ね返す破天荒さは持っていたのでは?とも思ったので、そういう部分がキャラとして弱かったです。
それだけユカリが大事だったのかなぁ?
それとも時として、恋する男はヘタレるものなのか??
ユカリの母親がシングルマザーを選択した数十年後の今、何故ユカリの実父と結婚できるようになったのか?という点が明かされておらず、気になるところ。
同じく、ライオネルと両親の関係にしても、回想で父親とのやりとりはあったけど、母親との確執的部分は一文で語られているのみなので、あとは噂話程度の存在で真意などは分かりません。
それが全てと言えばそうなのですが、そういったことを含め親族達が位が高いライオネルを軽んじているが彼がいないと一族が成り立たないという問題の存在感がもうちょっと欲しかったです。
ライオネルが葛藤していた問題にも通じる部分なので、もっと語られていたら物語の厚みが出たのにな、と思ってしまいました。
もうひとつ気になた点は、高座さんのイラストに比べて祭河さんのイラストはあっさり気味で、ユカリはまだしもライオネルまで日本人に見えてしまい文章から受けるイメージと少しかけ離れた印象を受けました。