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興味本位で抱いたと知りながらも惹かれていき――。
作品タイトルの『好きにされたい』はまんま受けである青衣の性的思考に繋がっています。
好きにしたい、のではなく好きにされたい。
青衣は快楽に弱く命令され、相手の望むように動く事に悦びを得る、けれど性格が臆病でネガティブ思考のM属性の受けです。
昼間は社長であり、恋の相手である津賀に煩がられるぐらい有能な社長秘書。
地味過ぎないが目立たないスーツにセットされた髪型と眼鏡(若干視力が弱い)で素顔を隠す。
それらは青衣にとって昼間の自分とあまり大っぴらにできない夜の自分の性的思考を隠すため、忘れる為、切り離す為の必要な武装で、遊び人がONとOFFを切り替えるというのとはちょっと違う。
最初はそういうタイプなの?と思わせる描写でしたが、話が進むにつれそうではないと分り、キャラに深みが出ていました。
自分から動くのではなく、命令されれば自分の振舞いを考えなくても『相手が望むように』振舞え自分も嬉しいし、相手も嬉しい、という考えを持っている。だからとっても受動的で、常に相手に嫌われる事、愛想をつかれる事に怯えている。
青衣が最近読んだ小説の中で抜群のネガティブです。ポジティブさの欠片も見えなくて、ここまでくると鬱陶しいを通り越して可哀想で、青衣というキャラを嫌いになれなかった。
津賀との食事中に昔の男に偶然出会い、厭味を言われ津賀にも迷惑を掛けてしまいそれ以来津賀と並んで出かけるのを嫌がるようになる。
理由は昔の男との偶然の出会い。嫌な思いを自分もだが津賀にまでさせそうで怖いと思ったりするから、健気でもあるけれど津賀をもっと信頼して頼ってあげてと思ってしまう。
津賀はちゃんと、青衣の厭味な昔の男を撃退し、護ってくれたのに!
また津賀を見る目が上司を見る目ではなく、物欲しそうであるというようなことを第三者に言われ、それが名目上『仕事』中であった為、ついに自分は昼夜の区別なく、欲情してしまうようになってしまったのだとどん底まで落ち込む。
言った方からすれば津賀の恋人をからかっただけという深い意味がなくても、常に特殊な性的嗜好からくる怯えの悩みを抱える青衣にとっては大打撃な一言で、津賀と別れることを決心したり。
そのくせ泣いて、泣いて、ぼろぼろになってしまう。
んもー!もうちょっとポジティブに頑張って!!
津賀は青衣のまさに理想の男で、容姿だけではなく青衣の性的嗜好部分も理解し「命令」してくれる存在。
逢瀬を重ねる部屋では自分に逆らうなと青衣に命令し、昼間の自分に立て付く秘書の青衣も尊重している。
イタしているシーンでは青衣を従わせ存分に可愛がり、事後は存分に甘やかす。
命令されるのが好き、とはいっても嫌なこともあるわけでそういう部分の見極めもできる大変『出来た攻め』です。
しかし、言葉足らずな所があり青衣に自分と津賀の関係は恋人ではなく、簡単に切り捨てられるセフレだと思われていたりもして、津賀からの強引なアプローチというスタートがいけなかったんだと思うけれど。二人にはイタしてばかりではなくもっと話し合いによる歩み寄りも大切!と思わずにはいられない部分もありました。
表紙のイラストの雰囲気は良かったのですが、中のモノクロ挿絵は申し訳ないのですがイマイチで。リーマンの話なのに、社会人に見えない。特に津賀がとても30代に見えない。なので、ひたすら表紙のイメージを頭に思い浮かべて読みました。
あ、H度は標準よりも若干エロエロ寄りです。