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hanagao no ningyou ni koi wo shiru
1冊すべて表紙カップルの話です。
長編の表題作「花顔の人形に恋を知る」は蛍(受け)視点。
柳田という初対面の男に請われて、人形として派遣された九条(攻め)の心を知り、恋人同士になります。
短編の「九条」、「九条と蛍」は九条の視点。人形派遣を依頼するまでと、その後の二人のデートの模様です。
そこではまだぎこちなかった二人ですが、ショート「好きなこと」では互いに好きなものを話し合って距離を縮め、甘いエッチもするという生活を蛍視点で語られます。
花魁の格好で人形のふりをしたり、人形のふりをしている状態でエロいことをされる、攻めに足を舐められる、という萌え場面が序盤にあります。エロがそのまま過激になるのかと思いきや、翌日は何もないという肩透かしも予想外で面白かったです。
蛍が戸惑いながらも「九条の求める人形になりたい」と惹かれていく心情や人形としての切なさも良かったです。ただ、表題作では九条の心情はちょっと分かりにくかったです。
あと、二人の運命の出会いをあっせんした柳田が謎めいていてその後が気になりました。二人がうまくいったあとにもチラリと出てきて、まるで魔法使いのような雰囲気を漂わせて退場されると面白かったかもしれません。派遣して終わりだったので、冒頭の蛍への強引な勧誘がえらく唐突だと感じました。
香坂先生のイラストが作品の雰囲気にぴったりで素敵です。表紙はふつうの服装ですが、カラーイラストは花魁姿です!
200ページ弱とページ数は短めですが、初対面から甘い生活までがきれいにまとまっていますし、読みやすい作品です。
細かいところは気にせず、設定に流れに任せると楽しめると思います。
ひとめ惚れという言葉があるぐらいので、恋に落ちるのに時間は関係ない、それは非常に思います。
それに案外ひとめ惚れカップルが多いですもんね、BLの世界って。
受けの蛍は大学生、とある事情でまとまったお金が必要で、そんな蛍にアルバイトをしないかと声をかけてきたのは全く面識の無い胡散臭い雰囲気の柳田という男。
柳田に上手く乗せられて『人形の振りをして動かずにいる』仕事を警戒しつつも受けてしまった蛍。
いざ、仕事場という屋敷を訪ねると…振袖を着せられ、化粧を施され、アンティークな椅子一脚だけ置かれた部屋に通される。
そして部屋へやってきたのはやたらと顔の整った冷たい雰囲気をまとう男・九条。
はっきり言って後半まで、九条の性格や思いがよくわからなかった。
とにかく、複雑な人で『人形』である蛍に求めるものの意味や思い、感情が解かりづらい。これは良いけどこっちは駄目、その基準が本当に理解しがたくて。
蛍も九条はこういうことを求めているのではないか?と必死に考え、これは良くて・・・こういうのは気に入らなかったみたいだから、こういうこと?と結論を出し実行してみるのだけど、駄目で眉を顰められてしまう。
えぇっ!正解じゃないの?と私も蛍と一緒に思ってしまった。
九条さん、難しい人だ。
さっぱり理解できない。
逆に蛍は解かり易く、九条の行動に戸惑い混乱し翻弄される。理不尽な振る舞いもされたけれど、なんとか九条を理解し気に入ってもらえるようになろうと頑張る。
そして蛍はどうしてこんなにも自分は頑張るのだろう?と考えるんですね。
アルバイトとして請け負った『人形』という仕事。お金をもらうのだし、ちゃんと九条に気に入られる人形にならなくては…それだけではない、人形として正解の行動をとった時の九条が見せる無表情で寂しそうな色の瞳が柔らかい笑みや優しい眼差しに変わる、それがどうにも忘れられない。
そういった優しい部分を『人形』の自分に向けるのではなく、素の『人間』である自分に向けてほしい!
考えた末に出した結果が「九条にひとめ惚れしているから」という結論に至ります。
しかし、ひとめ惚れして二日半でそんなに全てを明け渡せるものなのか?疑問も残る。二日半で理解するには、九条は複雑で難しい人物です。
生い立ち、父親との関係、広々とした屋敷での鬱屈した感情。
人間が好きそうではなく、上辺は愛想が良くても深い部分では人づきあいに不器用で苦手で嫌そうに見える。
負の感情がどんよりと籠ってそうな人。
作中で出てきた『お人形遊び』のような行為は成人男子がするには病みすぎています。
ちょっと怖い・・・。
それでも、蛍はそんな九条を好きになってしまったんですね。
最後は蛍の告白に逆切れの逃げ腰な九条でしたが、結局は蛍の情の深さの押し勝ちです。
九条視点からの「九条」では蛍と出会う前の九条の話で、なぜ彼が『人形』を柳田から求めることになったかという部分のエピソードが読めます。
この部分は本編を読んでいて、どういう経緯で九条は蛍という『人形』を屋敷に招くことになったのか?という疑問が明かされすっきり。はやりこちらでも、柳田はどうしようもなく胡散臭い人物として書かれており、正体不明。
「九条と蛍」では、本編終了後の二人の話。
しかし、九条の不器用さは相変わらずで、愛しい相手への接し方の不慣れさや、どうして蛍が不機嫌になってしまったのか解からずにオロオロする姿が良かった。
「好きなこと」こちらもその後の二人。
ラブラブな短編で九条が蛍にベタ惚れで、蛍はとっても甘え上手です。穏やかな雰囲気で病んでた九条さんどこえやら?
少し解かり難い部分もあったので、萌えよりの中立です。