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稀代のクリエーター2人が生み出す奇跡。
”BL以外に何読んでる?”トピかと思いきや、情報登録がありましたので、
レビューさせていただきます!
漫画は以前さらっと読んだ程度だったのですごいなーと思いましたがそれほど思い入れのあるファンではありませんので(名作であることは別として)、もしかしたら読み込まれた方の感想とはだいぶ違うかもしれませんので、その辺はご容赦ください…。
単純なノベライズではないことに意表を突かれました。贅沢な二次創作みたいな感じですw。物語の繊細な世界観そのまま見事にアレンジしていて、ぶっちゃけオリジナルよりわかりやすかった…というか、オリジナルとは異なり、オスカーという少年の視点で描かれることによって、第三者的に理解しやすくなっていたような印象をうけました。詩的な漫画に対して、こちらはややミステリ的という印象です。でもデカダン、お耽美は共通!意外だったのが、自分がいまさらながら、この森版ジュブナイルに何度も心が震えてしまったことです。
最初少し戸惑ったのが、設定の違いです。ドイツの寄宿舎の気分で読んでいたら、あれあれあれ?な…。そう舞台は日本なんですよね。んで名前もあくまでニックネームなんです。で、ちょっと混乱しました。ゆえに、原作未読のほうが没入しやすいのかなと思ったりしました。
というわけで、萌?と言われるとそういうことではないような気がして(ただ、ちょっと涙腺にきました),作品としての面白さと、原作にあった”美しさ”のエッセンスをそのまま小説にしているという偉業は”神”かなと。さらに、あとがきで作家様が、これを執筆した目的として「漫画の”トーマの心臓”を読ませたくすること」とあり、はい、まさに大成功で、久々に読み直してしまいました。そして、時代を経て二つの審美眼が見事にコラボレーションしてることに感動をあらたにしました。
本作の語り手であるオスカーは、
漫画「トーマの心臓」においてユーリを見守り、
エーリクの手を引く先達であり傍観者でもありました。
この小説においては、舞台は日本となり
時代背景は曖昧にされています。
不朽の名作である「トーマの心臓」は、
小説だけではその世界の深淵を知ることが難しいです。
ぜひとも漫画と併せて読むことをお勧めしますね。
世話焼きで飄々とし大人びたオスカーは
とても魅力的な少年ですが、
そんな彼の抱く戸惑いや葛藤というものがあったとしたら、
と考えると、この小説はオスカーの成長物語ともとれます。
彼がユーリの存在に心休まるひと時があった事や
母の姿を重ねていたという見方は、
語られなかった心の揺らぎを上手く示しています。
ユーリに対し、オスカーが知りたいと望んだことと、
エーリクが知りたいと願ったことの先にあったものは
異なっていたのでしょう。
ユーリの真実が語られるまで待つ、と心に決めるまで
教授や保健医と交わしたやり取りはとても意味深いです。
漫画とは似て非なるものですが、
小説はこの奥深い世界で1つの標となるコンパスのようでした。