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hanachiru koi no yukue
おやじ受けというか年下攻め、しかも義理の親子。
片や親子ほどもの歳の差カプ。
ということで、弁護士同士の義理の親子を通して歳の差カプの物語も展開していくという、実に欲張りな内容でした。
別々に1本でもよさそうかな?とも思いましたが、そこはベテラン作家さん、スベることなく上手く絡ませ、程良い配分量で弁護士達が歳の差カプをまとめあげていくというストーリーは、ちょっと悲しく、でもほのぼのと、甘いばかりでなく、ほろ苦さも含んだものでした。
弁護士の室町は年上子持ちの女性と結婚していましたが、病気で妻は早くになくなり、義理の息子と2人暮らしをしていたのですが、だんだんと疎通がなくなり、ある出来事をきっかけに全く絶縁のような状態になっていました。
でも父親の室町は、義理の息子・千芳史を気にかけ、弁護士としての働きも密かに身守っていたのです。
そんな2人が、有名会社の社長の愛人だったという男が慰謝料を請求するという依頼により久々の再会を果たします。
人の為を思う気持ちは同じだけれど、人情を重んじる室町と、大手事務所で事務的に処理する千芳史。
依頼人達の関係をひもときながら、2人はだんだんそれぞれの気持ちを通わせていくのです。
お父さんの室町が、ちょっと鈍感で天然?
千芳史の気持ちに気が付いていたかというと、そうではなく、本当に息子として愛していたみたいなんですが。
ただ、千芳史が一方的に焦がれて、ままならさに絶望して、どうしようもできないから離れていってしまったという部分で、ちょっと父親に対してはツンな態度気味。
”貧乏くじを引く”という表現がぴったりな程、室町は人情派ですね。
でも、それがかたくなに事実を語ろうとしない依頼人・英の心を溶かすのには役立つ。
知性派と人情派がうまくミックスすることで、英と年上の恋人・武尾の関係もひもとかれていくということで、いいコンビ具合でした。
このカプについては、息子が強く押している感じで、お父さんは「好き」という気持ちがどこから生まれたか、何となく弱くて(本人にも語らせている)ま、いいか~な感じなんですが、
もう一方の竹尾と英は、少し現実的問題も含みながら切なかったです。
互いに相手を思いやるがゆえの、すれ違い。
理由がわかるにつけ、もう~ラブラブじゃん!というのがあるのですが、竹尾が英を遠ざけた理由が悲しいので、そこがわかるまでがすごくドキドキ・ハラハラして飽きさせる間もありませんでした。
この歳の差カプのみだったら、重くて悲しくてやりきれなかったでしょうね(涙、、)
だから相乗効果は抜群に効いていたのだと思います。
何気に出てくる室町の共同経営弁護士の芦屋も、千芳史のパラリーガルの小日向も、いい味出してまして、妃川さんはシリーズものにすることが多いので、ひょっとしてこの二人のどちらかでスピンオフが?と勘ぐらずにいられませんでしたよ。
弁護士の義理親子カップルのお話だが、それぞれのクライアントもゲイのカップル。あとがきによると、もともとこちらはそれぞれ別々のお話として考えられていたものだが、依頼人カップルがBLとしてはちょっと…という感じになってしまったため、このような形になったらしい。
確かに、妻子を亡くしたおじさま×バーテンの若者、という親子ほどの年の差で、老いや命の終わりまでもを意識した関係なので、これ単体だと現実的で重苦しい話になってしまいそう。でも私はこっちのふたりに萌えた~!
受けの青年が、めっちゃ健気。大企業の社長からの贅沢なプレゼントを断り、料理を覚えて家でおもてなし。ただ愛人としてじゃなく、攻めのために介護の勉強をして、残りの人生をずっとそばで支える覚悟でいたらしい。
それなのに一方的に手切れ金を突きつけられたものだから、公平に慰謝料請求をしてもらう、と喚く羽目になったわけだけど。
なぜ社長が別れを告げたのか?という理由が切なくて…。そしてその拒絶のわけを知ることで、千芳史と公平も自分たちの関係性を見つめ直すことになっていく。このあたりの流れは不自然さがなく、よかった。
主人公の公平目線の話なのに、彼の気持ちが四人の中でなぜか一番わかりにくかったのが、ちょっと不思議な読後感。
もともと異性愛者で千芳史の母親とは普通に恋愛結婚してて…という設定なのに、千芳史に熱い想いをぶつけられたからと言って、こういう態度になるのかな、と疑問に思ってしまった。
過去にあんなことがあったのに、冒頭で千芳史の出てるテレビ番組を見ながら「千芳くん、かっこいいなあ~」なんて呑気に言うかな、という気もするし、その前から自覚してたなら再会後はもっと違う態度になりそう。再会後に自覚したのなら、いつそうなったのか、変化のきっかけが読み取れなくてなんとなく萌えそびれてしまった…。