kirara
romance no mokuhiken
商業誌『ロマンスの黙秘権』の続編同人誌です。(コピー誌を除いて)前回の同人誌『ロマンスの黙秘権~a miracle for you~』でも同じように思いましたが、ホントに内容は商業誌(文庫)に遜色ないです。前回よりさらに増えた154ページ・2段組みだよ。
准己(攻)と啓(受)は、いよいよマンションを購入して(しかも啓の1人ローンで)同棲生活を始めます。
今回は、少年事件です。准己が前に在籍していた事務所からの紹介で、強盗傷害で逮捕された少年の『少年院送致を回避する』ために動きます。ただ、この少年がまったく協力する姿勢を見せないんですね。
これまでは、メインの事件は啓が担当し、准己はアドバイスしたりするケースが多かったんですが、こちらは准己が担当します。准己が啓とは全く違うスタンスで、どういうアプローチで進めるのかも興味深いです。
さらに、この件を紹介した准己の元同僚が啓に・・・?
CP(ラブ)面に関しては、啓の母親へのカミングアウトです。
このシリーズは、今回に限ったことではなく、『家族関係』に絡むエピソード・ストーリーが目立ちます。啓の弁護士としての根幹にかかわる問題と直結しますから、切り離しては考えられないんでしょうが。
父を交通事故で亡くしてから、母一人子一人で生きて来た啓は、母との結びつきがすごく強いんですね。その啓が、母に准己を会わせるというだけで、大変な覚悟がいったでしょう。
それにしても准己の家族は、単に『実家が弁護士事務所・父も兄も弁護士』という設定以上のものはほとんど出てきませんね。作家さんが『機会があれば准己が家族にカミングアウト』も~と言われているので、気長に待ってます。
でも、前回の同人誌でもそうだったんですが、作家さんがあとがきで『今回の表テーマは啓のカミングアウト』と言われていて、『そうか、事件は裏なんだ』と素で思ってしまいました。あ~、事件ものじゃなかったのね、と『いったい何読んでるつもりだ(BLじゃないのか)!』と自分突っ込みしたくなりました。
ホントに、商業誌3部作じゃ足りないと思ってたんですが、ここまでしっかりした『続編(番外編じゃない、まさに続編ですよ)』を出してもらえて嬉しいです。もちろん、商業誌だったらもっと嬉しいけど。
シリーズのいままでの作品とと比べると、事件の面白さや説得力がわずかに減っているように感じました。
ですが、それを補って余りある、主役二人の物語が描かれていました。
もっと二人の事を知りたいと思わせる内容でした。
先生のあとがきを読んで、もしかするとさらに続きを書いてくださるのではないか、と期待しています。
短編を収録した同人誌も、このあとで出していらっしゃったと気づき、そちらももちろん読むつもりですが、長編も書いて下さることを願っています。
主役(語り手)が入れ替わるこのシリーズですが、今回は准己の方。
啓が主役だとどちらかと言うと重くなる印象ですが(そちらも大好きなんですが)准己主役だと、物語がサクサク動きますね。
彼は啓に関することを除けば、気持ちいいくらいの自信家で仕事も出来るので、読んでいて楽しかったです。
お話は、准己が前事務所の同僚に頼まれて、とある大会社の重役の息子さんが起こしてしまった強盗事件を担当することから始まります。
少年の父親からは「年少に行かないようにして欲しい」と依頼されますが、一方、肝心の少年は何故か事件について黙秘をし、「家に帰りたくない」と言い張ります。
少年から供述を得られない准己は、仕方なく彼の家族関係と彼を取り巻く周囲の環境を探るにつれ、ある事実にたどり着きーーといった内容です。
今回のテーマも「家族の再生」といった重いものなんですが、「miracle」 よりも比較的落ち着いて見れたのは、やはり准己が主役だったのと、このテーマと同時進行でもう1つ大きなテーマがあったからかと。
そのテーマとは、ズバリ「啓の母親と准己の対面」です。
まぁ同性同士なので、三者三様にそれぞれ葛藤があるんですが、そういったものを差し引いて、とにかく准己が可愛すぎます笑
啓母の前で啓について熱く語ったり、元同僚の啓への態度に分かりやすく嫉妬したりと、全編を通して啓への想いがぎゅっと詰まっていて、ここまで准己に深く想わせる啓は大物だと改めて思いました笑
こういった恋愛面もちょくちょく挟むので、全体的にテンポ良く読めますが、私が交通事故を扱った「miracle~」の方で号泣してしまったように、家族関係について思うところがある方だと、この作品もずっしりくるかもしれませんね。
ただ、前回同様に、読後は前向きな気持ちにさせてくれるので、同人誌ではありますが、是非多くの方に手にとって貰いたい作品です。
そしてそして、嬉しいことに、最近こちらに続き第3弾も出ました*
そちらも落ち着いたらレビューしようと思います。