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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
作者さんのあとがきに王道で古典的な話とありまして、確かに、王道だなと思いました。
安心安定の展開で面白かったのだけど、少々薄味に感じてしまい凄く何か残るというものでもなかった。
こういう王道話になってくると、いかに登場人物に独自の色を持たせるかって話になってきて、この色で物足りないと感じるか、満足するかそれはやはり好みが別れるところ。
名前しか知らない一夜を共にした相手は、実はプレゼンのコンペを行う予定の会社の社長さんでした、というもので、仕組まれた再会ではなく偶然の再会。
しかし、この偶然の再会は受の直人にとって予期せぬ最悪の事態、仕事に対しての姿勢を改めやる気を出させるきっかけ、そして組んでいた同僚の裏切りを経験するという要素を含んでいた。
直人はゲイで少ないながらも同性との恋愛経験がある。
好きだから浮気をされても健気に耐え尽くし、服装などその時の彼氏の好みに左右される、少し自分が無いタイプ。引っ込み思案で仕事の企画立案の才能があるにも関わらず、なかなか芽が出ないでいた。
一方、攻の矢野はノンケで、若くしてアパレル会社の社長。地位も名誉もあり仕事もバリバリこなすタイプ。
一夜を共にした直人が実は自社で企画しているブランド立ち上げのプレゼン参加している企業のひとつに勤めており、説明会に来ていたのを見つけた矢野は、呼び出し直人に意地の悪い提案を出す。
はっきり言ってその提案は直人にとって社会的地位を失うかもしれない卑怯な提案で、それに対して直人は矢野自身もバラされたら困るのではないのか?と返すけれど、矢野は「そんなことで自分の地位は揺るがない」と答える。
あ、もう男としての格の違いが出ちゃってる…でも、直人はくじけなかった偉い!
それどころか、今まで仕事に対して消極的だった部分をなんとか頑張って積極的になって行こうと頑張る。
矢野の出した提案を飲む、遂行する、が前提だとしても。
直人と矢野の関係は条件を満たすまでの仮の恋人、矢野の口からいつかは結婚するが~という言葉もでて、彼は根っからのノンケなんだな、と直人は思ってしまうのだけれど、でも、矢野は直人に対して凄く優しく接する。本当の恋人の様に。
(それに実は矢野は直人にかなり早い段階で惚れていて、どうやって直人を自分の側に繋ぎとめようかと考えていた、というのが後々に明かされて、この独占欲をもっと読みたかった!と思ってしまった)
だから、好きにならない方がいいと思ってもだんだんと好きになって行く心を止めることができない。
矢野は口での奉仕は慣れているが、後ろで受け入れる事に不慣れな直人に対して、直人が今まで経験したことが無いような快感をくれる人で、初めてイタした時からメロメロ。
矢野は経験があるはずなのに不慣れで、やたら口で奉仕しようとするのを見て、直人の過去の男たちに対して「手抜きしやがって」とつぶやく。
それは直人に奉仕されることばかり望んで、直人の全てをちゃんと可愛がって感じさせる事をしてあげていない見えない過去の男たちへの不満。
あぁ愛が見える・・・!とこのシーンはちょっと好きなシーンであります。
レーベルがショコラノベルスHYPERですが、イタしているシーンは回数こそあったものの、どこもかしこもあっさりしていていやらしさを感じさせない。確かHYPERはイタしてるシーンがよりアダルト路線だったと記憶しているのだけど。なのでレーベルの事を考えるとちょっと物足りないかもしれない。
話は薄味に感じたけれど、面白かったので甘めの話が読みたい時におすすめです。
もうちょっと色づけが欲しいと感じた部分があったのですが、読みやすかったのと萌えるシーンがあったので中立よりの『萌』です。