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はるか昔、竹宮恵子氏の表紙で出ていた「真夜中の天使」「翼あるもの」
あれっきり栗本氏の作品とは疎遠になっておりましたが、あの今西良に魅入られた男達の物語がまだ続いていたとは、そして「ムーン・リヴァー」を最後にもう読めないのですね。
良に魅入られ、憎まれ全てを失って自暴自棄な抜け殻になってしまった作曲家・風間俊介が主人公です。
前半は風間の荒れ果てた姿と、良への後悔と思慕で埋め尽くされています。
金を借りようと野々村と待ち合わせた二丁目のバーで、強姦されそうになった19歳の忍を助けたことから、彼の人生が再び動き始めます。
忍は、借金のある母親からヤクザの黒須に売られたのを逃げているところでした。
黒須のサディストぶりに耐え切れず、風間の元に身を寄せる忍。
そこで忍の天才的ともいえる、音楽の才能を見るのです。
良がミューズの伝達者であれば、忍は音楽そのもの。
風間は良と音楽を一体として信仰していた狂信的な信者だったのです。
しかし、良に否定されたことで音楽に愛されていないと絶望してしまっていたと、音楽という言葉をしゃべり、そして音楽は嘘をつかないと語る忍に風間は、良の呪縛から逃れるきっかけを得たようです。
また、良を強姦したことで歪んだ性欲が、サディストの黒須との出会いと、彼とのSEXでひとつ抜け出したような感を与えます。
黒須はとても歪んだ性癖の持ち主で、ダークな男ですがこの風間・忍・黒須の三つ巴が後半の物語を動かしていくことは間違いありません。
忍は新たな音楽家として開花していくのか?そして黒の黒須は?風間はどうするのか?
女は誰ひとり出てこない、男だけの男の愛の物語、ゲイではなくホモと書かれている部分にこだわりを感じます。
久しぶりに栗本氏の小説を読んで、昔と変わらない風に懐かしさを覚えました。氏の小説はいまでいうところのライトノベルに近い作風ですね。
この手法は山藍紫姫子氏や吉原理恵子氏が近いものがあるかもしれません。
「真夜天」に「翼」実家の本棚にまだあるかな?探し出して読み返したいと思いました。