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yoake no koe wa amaku
一途な恋のお話。
甘く切ない?幼なじみ再会ラブ。
っつか、これ、ただのヘタレなチキン野郎が逃げ出すどさくさに暴走した落とし前を、無言のままヤリ逃げされて酷い後遺症を負いながらも健気に前を向いてまっとうに生きてきた主人公が男らしく赦してあげる話、かな。
思っていることを、勝手な自己完結でため込んで、溜めに溜めちゃうから暴発しちゃって、挙げ句の果てに逃げ出したりする前に、思いをちゃんと口に出してさえいれば、こんなに拗れずにすんだのにね。
まあ、ラブストーリーは、全てすれ違いからってことです。
“萌え”とも“神”とも少し異なる、マイフェイバリット作品。
ちょっと懐かしいテイストのスタンダードなBLで、だから安心して堪能できる素朴だけれど小粋な物語だった。
何だかんだ言って、私が繰り返し読み返したくなるBLというのはこのタイプ。
攻めの一陽は名前に反して、ややストーカー気質なネガティブツンサマ?
せっかくのイケメン設定なのに、視野狭窄気味でユーマ以外には吠えまくりの噛み付きまくりの残念な(犬)キャラ。
受けの佑磨は、比較的度量の大きいサバサバした性格なので、好対照をなしているとも言える。
とはいえ、彼が努めて淡白に振る舞うには彼なりの事情があり、単純にネガティブ×ポジティブという関係で換言できる訳ではない。
見かけとのギャップが大きいからこそ、二人は面白いし、大変魅力的なのだ。
若くて未熟で無力な青春時代には、どうにも出来なかった“心のキズ”あるいは“過ち”は、時の流れと共に彼らが社会的基盤を手に入れ、世間に揉まれて柔軟性を身につけていく過程で、ある程度リカバリーできる(折り合いをつけられる)ようになるモノ。
“過去”の楽しい思い出も辛い記憶も全部引っくるめて、彼らのかけがえの無い“現在”の土台になっているし、幸福な“未来”への次元も開かれていく。
学園祭用に急遽結成した一度限りのアマチュアバンドの“再結成”により、二人の間に生じてしまった無用の垣根は取っ払われ、商店街の活性化という当初の目的も達成されるというトントン拍子な大団円がホントーに心地好い。
一癖も二癖もある個性的な脇役達による、半畳/チャチャ入れも楽しく、メインのへたれカップルを盛り立ててくれる。
カルラ焼きが甘さ控えめで美味しいのは、佑磨が切磋琢磨して妥協せずに和菓子の道を極めた成果である。
同様に、この作品も下ごしらえがしっかりしているので、シンプルで甘さ控えめだけど、否、だからこそ豊かな作品に仕上がっているように感じる。
願わくば、二人のいちゃラブ番外編や先代編も読んでみたい。