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以前掲載依頼した小説の掲載がキタので、書き置きしてたレビューのうpをば。
図書館で借りた本は、書き置きしとかないとダメですね。
作曲家の風間という男が主人公です。
彼は、みずからが作曲した歌の歌い手である良に傾斜し、執着していく。
いささか衒学趣味チックでもある小説なんだけど、そのすべての知識を『良』という男を修飾し賛辞するために惜しみなく使っているのがスゴイなと思いました。
音楽の知識、神話や文学の知識、当時まだ20代前半だった栗本さんの知識量は、同作家のなかでも飛び抜けてると思うんですが、その無尽蔵な知識をほとばしらせて、良は表現され、飾られます。
そこまで作者から愛されてる良という受けですが、正直いうと魅力に欠けている。
や、正確にいうと、魅力はあるんです。
この小説のテーマの上で、彼は絶対無二のナルキッソスでなくてはいけないので、そういう意味での魅力はある。
ただしそれは、『人間らしさ』とは無縁の魅力なのだ。
人間らしくて泥臭い魅力に溢れてるのは、彼を取り巻く人々のほうだ。
良に心酔し、良に振り回され、諦め、許容し、折り合いをつけ、泣き、怒り。
取り巻く人々の揺れ動く心理描写が、めちゃくちゃ面白かった。
引き込まれた。
で、メインとなる主役の風間とそのライバルの巽の、意地の張り合いや葛藤は、非常に読み応えがありました。
派手に言い合ったり殴りあったりするわけじゃなく、水面下での微妙な大人の駆け引きをしてるだけなんだけど、ゾクゾクした。
風間も巽も、二人とも好きな男だと思った。
正直、二人ともナルシス良なんかにこだわる必要ないと思うんですがw、でも、良という存在があってこそこの物語は物語となったんだよね。
そして、風間と巽は、良がいたからこそ魅力的に映るのだ。
萌えとは無縁の小説なので、BL的萌えを期待する方にはオススメできません。
でも、ドロドロに濁った機械油のような重い小説を読みたい方にはオススメします。
ちなみにこの小説、上巻だけなら『真夜中の天使』に軍配を上げますが、下巻だけなら『真夜中の天使』よりも面白かったです。