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「小説道場を始める!」
凛とした掛け声が道場に響く情景を思い浮かべます。
実際は、肉声はおろかご尊顔を拝したことすらないのですが、
中島梓(=栗本薫)先生の遺された功績の1つに、この
「小説道場」があった事は随分前に知りました。。
これは、1983年に隔月刊として創刊された「小説JUNE」の
上記コーナーにおいて、投稿作品への講評をまとめたものです。
現在もBL界で活躍されている作家達を輩出した場であり、
道場主(中島先生)によって、級位・段位が与えられ
上級や有段者には本誌への作品掲載という作家デビューへの
門戸でもありました。
榎田先生や柏枝先生の投稿作品が読めるかも、という
ミーハー心で読み始めたのですが、覚悟が甘かった。
小説とは何か、それがJUNEである必要は何故か、
真剣に語り伝えようとする先生の情熱が言葉の礫となって
ビシビシ飛んできます。投稿者(通称:門弟)でもないのに、
なぜか気分は満身創痍といった体だったのは、
詠み手としてもプロである先生が、時に作品とも呼べない
物語にも真剣な言葉を残していたからです。
先生から言葉を掛けていただいた門弟達は、どれ程
胸に響いたことでしょう。それが厳しくても励ましでも。
一時期マンガも小説も読み散らかしていた我が身を振り返って
恥じ入ってしまったんですよ。とほほ。
歯に衣着せぬ批評と叱咤激励は正に門弟達との言葉の真剣勝負。
書く事への姿勢や先生ご自身のJUNE論などは大変勉強になりました。
これら投稿作品は編集部(通称:門番)の選考を経て
先生の元に届くのですが、添えられてくる寸評にもきっちり
お小言と辛口コメントをつけています。これがまた面白い。
そもそもJUNE小説の内容の希薄さを憂い道場を開いたと
仰っており、当時の業界への苦言もこぼしていらっしゃいます。
1巻目でお名前を存じ上げている作家さんでは、
異色の大作「私説・三国志」シリーズの江森備先生、
たった2作ながらも鮮烈な作品を残された野村史子先生が
登場されています。この回の先生のテンションはいつにも増して
高かった。可能性を秘めた作品に出合えた興奮が
伝わってくるようです。
正直、作品を読まずに講評だけを読むのはしんどいと思ってしまうの
ですが、今更ながらJUNE時代の作品に魅せられている身として
最後まで見届けずにはおれないのです。