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資産三千億のやり手社長×デザインディレクターの“声”が紡ぐアダルトラブ
aisuru to iukoto
デザイナーの壱は、毎年、恋人の命日の近い晴れた春の日になると、体調を崩す。
それは、ちょうどその時に恋人が亡くなってしまったから――。
ところが、そんな時、どうしてもそんな最悪な体調を押してでも参加したいと希望したコンペの席で、今は亡き恋人とよく似た声を持つ男・灰田に出会う。
彼は、急遽コンペに参加となった人間で、誰も彼の詳しい経歴を知らなかった。
そんな彼は、実はこのコンペの最高責任者であったようで、壱の作った案に注文を付け、せっかくの案が「再コンペ」になってしまう。
ついつい不安定な感情から、言い合いになってしまった灰田にどういう訳だか、壱は気に入られてしまい、翌日には灰田が壱の事務所を訪ねてくる。
当然のように居座る灰田は訪問の理由を尋ねても「特に理由はない」。
呆れる壱に、しばらくすると今度は「ここで働きたい」と灰田が言い出す。
堂考えても、一流のしかも外資系の起業の立場のある位置にいる人間にとって、従業員が壱も含めて三人しかいない職場に再就職したがるなんておかしすぎる、と思った壱が尋ねると、「この場所が気に入ったんだ」と答える。
何がなんだかわからないままに、再コンペへの時間だけが過ぎ、何とか再コンペで仕事をモノにしたけれど、今度は亡き恋人の命日が近づいてきて、例年のように壱は事務所にも現れず、自宅にこもりきりになってしまう。
事情を知らない灰田が心配になって自宅を訪ねると、そこにはよれよれになった壱と、大切に飾られた恋人とのツーショットの写真があった。
てっきり今も恋人が生きているものだと勘違いし、「恋人の看病してもらえ」と言い残して去った灰田だったが、しばらくしても出社してこない壱を心配し、事情を聞きだし、墓の前で佇む壱を保護した。
そのまま自宅に帰った壱と灰田だったが、思わず「好きだ」と告白してしまった灰田の声に昔の恋人を思い出した壱は、そのまま「勘違いしてもいい」という灰田の言葉に甘え、灰田に抱かれてしまう。
それではまずいと思った壱が、翌日「誰とも恋人になるつもりはない」と言った壱だけれども、逆に灰田に「すまないが、お前を諦めるつもりはない」と宣言されてしまう。
というような話でした。
実は灰田は、その筋では有名な投資ファンドの社長で、その仕事を本当に辞めちゃって壱のところに就職しようとするんだけど、壱はどう考えてもそれはまずいだろう……と言って止めるけれど、灰田は聞いちゃいなくて、勝手に仕事を辞めてあろうことか、最終的に履歴書を持ってやってくる。
壱のところの他の社員は、みんなデザイナーなので、経理とか営業とかやってくれるとなったら万々歳で、灰田はすっかり事務所に馴染んでるしで、結局反対するのは壱だけになるんだけど、壱には表向きじゃない理由もわかってるから、素直に「うん」と言えなくて。
でも、あることがあって最終的に「うん」と言ってしまうところで物語は終わっています。
なんというか、終わり方がいい。
あくまでもこの巻では、壱が「うん」と言ったのは壱の事務所で働くことであって、壱と付き合うとか恋人になるっていうことには一切「うん」って言ってないんですよ。
このスローさがいいなーと思いました。
だって、人間、そう簡単に亡くなってしまったからと言って、次の恋人を見つけられるわけじゃないし、その気持ちを整理できるわけじゃないから、そういう気持ちを大事に書いてくれてあるこの話はすっごくよかったです。
ただ、まだまだ謎がたくさんありそうですよね。
灰田が壱にだけ、そんなに執着している理由、とか。
どうして今回の仕事だけ、体調悪いのを押してまで壱が取ろうとしたのか、とか。
灰田も「この仕事は自分で直接関わりたかった」というようなことを口にしているから、その辺りが結局、灰田と壱の亡き恋人の声が似ている理由に繋がったりするんじゃないか……とか、勝手な妄想をしてみたり。
とにもかくにも、続きの含みの持たせ方が絶妙で個人的にはすっごくよかったです。
早く結論を知りたいような気もしますが、この二人にはこの距離でしばらくいてほしいような気もします。
柔らかな日差しが降り注ぐ、春。
この時季になると体調を崩す壱はどうしても取りたい仕事のため、体調の悪い中プレゼンを行う。
しかし仕事となると顔つきは変わりその様は堂に入っていて熱意が伝わる、が。しかしながら再プレゼンを言いつけられてしまった。
再プレゼンを言いつけられたこと、そしてその人物の『声』に気持ちが治まらないままだった壱。
そんな中、目の前に現れたのは、再プレゼンを突きつけてきた張本人、灰田だった。
壱が体調を崩す理由が少しずつ明かされ、そしてよりによってそんな時季に最愛の人と同じ声を持った灰田の存在に揺れ動く壱に切なくなりました。
そんなにボロボロになってまでずっと想い続ける壱。
そんな壱に灰田は身代わりでもいいと告げますが、壱は首を縦には振りません。
結局このお話が終わっても、二人の距離は曖昧なまま。
灰田の声に反応し、だけど音さんとは違う匂い、仕草、言葉。
壱に変化は現れるのか。
まだ謎も残されたままです。
壱はどうしてそんなにその仕事が取りたかったのか、そして灰田もその仕事になぜ関わりたかったのか。
灰田が壱にあんなに執着するのは果たして、初めて好きになったから、だけなのか。
謎と共に、この二人の『これから』は続編へと持ち越しです。
購入の際は続編も一緒に購入することをお勧めします。
谷崎さんの続きありの作品。
買って持ってはいたのですが、あらすじを読んだ時の受けの印象と挿絵の印象が違っていて長らく積んでおりました。
が、読んでみますとわたしのイメージがどうやら違ったようで(長身綺麗系のクールビューティーだと思っていた)、受けの説明には目が大きくて顔が小さいと。
なのでイメージを捨てて…と思いましたが、性格は男前系でどうしても自分の作ってしまったイメージを引きずってしまいました。
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受けの壱は、小さなデザイン事務所を主催するデザイナー。
業界では名が知れ仕事は尽きませんが、日差しと車が苦手なヘビースモーカーで、恋人を五年前に亡くしています。
攻めは、外資系企業で大きなプロジェクトを任される(と、見せかけて実は別の立場を持っているのですが)灰田。
有能ながらどこか仕事に情熱を持てずにおり、壱の事務所で働きたいと言い出した変わり者。
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恋人が死んだ季節になると、仕事も私生活も立ち行かなくなる壱。
周辺はそれを熟知していて、彼の行動に口を出すことはしません。
壱も周囲もじっとその季節が去るのを待つだけ。
そんな生活に割って入ったのが、灰田の存在でした。
灰田は壱の死んだ恋人と同じ声を持ち、そんな灰田と皮肉にも命日前の弱った時に出会ってしまったことは、壱にとっても灰田にとっても幸運とは言えなかったかなと思いますね。
灰田にはまったく罪はなくとも彼の声が壱を奈落へと落とし、またその声が至福をも生むんですから。
ひじょうに切ない設定です。
初めて体を重ねた時は、お互いがお互いの感情やタイミングを利用するような形だったわけですが、それが転機にもなったのかなあとも思ったりいたしました。
印象的だったのは『芸術家』と『デザイナー』というものの違いの演出でした。
序盤、灰田が壱へ「あなたは芸術家ですか」と嫌味たっぷりで尋ねます。
それに対して壱は「俺はデザイナーだ」と答えるシーンがあるのですが、それは読み手に『芸術家=自分の自由構想でものを創作する』、『デザイナー=クライアントの求めるものと己の構想を融合させる』ということを強く意識させ、壱はただ殻に閉じこもって自分の創作にふけっているわけでなく、外の世界も見れる男だということを印象付けるのではないかと。
そんな壱が日常を置いて逃げることが苦しくないわけないのだと思うと、こちらまで苦しくなりました。
ちなみにこれ一冊では、きちんとラブラブハッピーエンドというところまでは落とされておりません。
恋愛面については。(お話自体は着地してます)
日常生活に支障をきたすほど壱の中での亡くなった恋人の存在は大きいのですから、慌ただしくラブりました!とされるよりも谷崎さん潔良いなあと思いましたし、そのせいか性急な感じもしません。
ただこの作品、次作は商業、それ以降は同人誌で出ています。(同人誌の方は時間を遡って壱と元恋人のお話のようで、紙同人誌は完売ですがKindleで出ています)
谷崎さんのシリーズ作品は最後まではなかなか商業で出ず、読者救済と納得のいく形に書き上げるためにご自身で同人誌発表されているのかなと思います。
出版社さんも最初に少し長くなりそうなお話だとわかるでしょうし、自分のところで出すならきちんと最後まで出させて差し上げて欲しいと思います。
一般作品のシリーズならばちょっとあり得ないのではないかな、こういうやり方。
個人的な意見ですが、BLジャンルやBL読者を出版社が軽くとらえている表れかなと感じて、ひじょうに残念です。
声フェチとしては、一声聞いただけで元彼と同じ声だってわかる声が
どんな声なのか気になりますよね~
好きな声優さんの声にはすぐ反応して、
アニメ見てるだけで誰の声か言い当てられるぐらいだけど、
何年も付き合った元彼の声なんてキレイさっぱり忘れましたww
話は戻って、谷崎泉さん初読みでしたが、
句点(。)が多くて慣れるまで少し気になりました。
普通なら読点(、)だと思うところが句点(。)になっているので、
話の流れが中断された感が...
でも、文章がページぎっしり詰まってて、読みごたえはたっぷりです♪
「丹野事務所」の代表を務めるデザイナーの丹野壱は、
プレゼンの場で今は無き恋人の音羽と同じ声を持つ男に出会う。
でも彼はプレゼンの責任者の灰田という男であったため、
壱に再プレゼンをするよう要求してくる。
音羽にそっくりな彼の声にとまどっていた壱だが、
その不遜な態度に対抗心を燃やし対立してしまう。
しかし、翌日なぜか灰田が事務所を訪れる。
そして変更案が採用された後も通い続ける灰田であったが、
ある日、音羽の命日に雨の中泣き続ける壱を見つける。
「声だけ...聞いててくれればいい」と言いながら壱を抱く灰田に対して
その優しさに流されるまま体を重ねたことを後悔する壱。
さらに、明らかになった灰田の正体に驚きを隠せない壱は、
もう来ないでくれと告げてしまう。
灰田さんは大企業の社長ってわりに、
デパ地下でお昼ご飯を買出しして差し入れしてくれます♪
案外庶民的、でもそんな人がうちの会社にも欲しい...
と思うのはみんな同じでは??
そんな彼は音羽の身代わりでいいからと優しく壱を抱き締める...
金持ちのイケメンにこんなに尽くされるなんて乙女の夢真っ盛りww
まだツンツンの壱は音羽の面影を灰田に重ねつつ、
最後の一件で少しだけ気持ちに変化の兆しが見え始めたばかり。
高座さんの儚げなイラストに反して、強気で口も悪い壱でしたが、
音羽のことを想い、時折見せる弱い部分がちょっぴり切なく
でもそんな彼を一途に愛してせっせと世話を焼く灰田さんは
一見ワンコ系に見えつつもイイ男だとつくづく思います★
続編での2人の関係の変化に期待ですね♪
恋人を5年前に亡くし、その季節になると毎年ドンと落ち込む自分のデザイン事務所を持つ壱。
恋人の飼っていた犬と一緒に暮らしています。
その季節、プレゼンに訪れた先で亡くなった恋人にそっくりな声の持ち主と出会ってしまった。
その男は灰田といい、とてつもない金持ちの社長で、壱の事務所を訪ねてきてそこで働かせて欲しいという。
そっけなくする壱だが、ほとんど毎日のように日参する灰田。
壱はよく泣きます。
5年も前のことなのに未だに恋人が忘れられなくて、季節のせいもありますが、これ以上の恋人はこれからもいないと思っているのです。
灰田の前でもよく泣きます。
最初、灰田はプレゼンの時の意志のしっかりしたインパクトのある強い態度に惹かれて事務所へ訪ねてきたのですが、壱の涙にどんどん引き込まれていったのでしょうね。
しかも、数多くもっている会社の社長を辞めてまで壱の事務所で働きたい、側にいたいというのです。
とんでもない発想と展開ですし、灰田の気持ちが図りあぐねて読み手としては疑心暗鬼にさせられます。
壱はそんなに何もかもを捨ててまで側にいたい存在なんだろうか?
壱の気持ちは声が亡くなった恋人に声が似ているというしっかりしたポイントがあるので、ものすごくよくわかるのですが、灰田の愛情のステップがどうもぼんやりと予想でしかないのがじれったいです。
灰田目線の文章もあればよくわかったんですけどね。
物語の最後は、無事灰田は社長職を辞め壱の事務所に勤めることになり、この二人の愛はこれからだね、ってな終わりになっております。
ただ全体を読み進めるにはとてもスムーズで、周りの人々が過保護なほどに壱に優しくて、どうよ?感もありますが、切なくても優しい感じの物語ではあります