ぎが
木原音瀬・名倉和希・杉原理生による魅惑のオヤジ受け同人誌第3弾にして一応最終作。
全体的には、収拾をつけるために少々無理のある展開あり。
木原音瀬『ラブ&キャッチ3』は、著者コメントにもある通り「コメディのはずがどんどんシリアス寄りになり、かつ未完」という内容。
前2作ではひたすらオヤジの勘違いを若者が是正できないというおかしさであったが、本作でついに二人は一線を越えてしまう。
オヤジの風貌という点ではかなりぶっ飛んだ設定であるものの、主人公二人の性格設定においては比較的常識的なラインを選択している以上、恋愛関係をコメディの文脈で進行させるのは厳しかったということであろうが、その分木原氏らしいドロリとした嫌な雰囲気は楽しめると言えるかもしれない。
名倉和希『黒い悪魔は天使のごとく3』は、「ハゲデブオヤジをストレスで痩せさせる」という、ちょっとずるい展開。
もっとも本作の受けは10キロ痩せたところで決してきれいになるわけではない点が良。
あくまでもコメディのラインを保っている点も評価できる。
杉原理生『夜には月を見上げて3』も受けのハゲが治ってくるというずるい展開であるが、受けにとっては意外にもそこが問題である。
受けは攻めが「ハゲフェチ」であると思い込み、その上でそれまでの攻めの好みとは真逆であるにも関わらず愛の告白を受けたため、この治りつつあるハゲに戸惑うのである。
ところで、名倉作品の「デブ」も杉原作品の「円形脱毛症によるハゲ」も、今回の作品中に実際に描かれているように改善の余地のある欠点であるのに対し、木原作品の「ヅラを手放せないほどの老化に伴うハゲ」だけは、当然のことながら治りようがない。
当の本人が受け入れなければ解決しない、残酷な状況とも言える。
この状況をコメディとして描くのは、木原氏をしても相当の難題だったのだろうと推測する。
シリーズ当初の衝撃は薄まり、若干尻つぼみの感もあるが、こういった作品群を世に問うたと言うだけで十分評価に値すると考える。