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「貴賓の誘惑」のスピンオフです。前作の攻め(上矢)に、物語の序盤部分でフラれた青年が主人公になります。前作では名前も出ていなかった彼が大出世です!
私は前作未読でしたが、上矢の恋愛模様が前作メインだったことは推測できましたし、それほど支障なかったです。作者様があとがきで「かなり可哀想なことになっちゃっていて」と書いてあって気になりましたが、後で前作を読んだところでは、上矢にフラれただけ。しかも、そういう相手に見られないと言う優しいフリ方なので、拍子抜けでした。作者様の作戦?(笑)
余り詳しくないのですが、こちらのノベルスの傾向がエロ重視なのでしょうか?エッチは4回、しかも合計すると70ページ以上と長かったためか、重厚な印象でした。挿し絵も10ページ中にエッチが5ページでした。でも、表紙イラストで分かるようにエロいから悪いということはないです。ホテルで背後から襲う央成の目つきとか、有名な春画を思い出しました。
主人公・澄夜(受け)目線で進みます。まず強引なエッチで快感を覚えてメロメロになり、次に央成(攻め)の意外な面を知るうちに、心も惹かれて…という話です。単純そうですが、旅館の立て直しや央成のスランプ、両思いになったと思った途端に央成が姿を消してしまうなど、あれこれの展開が入っているので、面白く読めます。
央成が澄夜を好きで、自分を好きになってほしいと望んでいる気持ちが透けて見えるのも良かったです。ただ、央成が澄夜に惹かれた理由で、純真でまっすぐだからと言っていたのですが、抱こうとした時点ではほぼ一目惚れだったんじゃないかと思っています。その辺りが、両思いになるまでの過程重視の自分には物足りませんでした。
あと、上矢が「チェックアウトしたのか」と尋ねる場面があるのですが、旅館でもチェックアウトというのか…とちょっと違和感でした。とはいえ、代わりの言葉は浮かばないのですけれど。
コミカルとまではいきませんが、シリアスでもないですし、切なさはありません。抵抗は形ばかりで流されやすい受けを可愛いと思うエロ重視の方にはお勧めです。
央成は有名な照明デザイナーなわけですが、ただ今スランプ中。請け負った仕事もキャンセルをしているらしい。
でも、スパを成功させ、旅館を建て直そうと必死になって頑張っている澄夜の姿は、仕事を始めたばかりの央成自身の姿と重なるところがあり、『芦ノ家』の仕事をきっかけにして、また頑張っていきたいと前向きになっちゃったわけですよ、央成も。
実は澄夜は修業先だった旅館の若旦那のことが好きだったんですが、しっかり玉砕しちゃってます。若旦那と従兄弟だという央成は、若旦那のことを昔からよく知っているし、澄夜の気持ちにも気が付いており、若旦那と恋人の逢瀬をのぞき見しちゃったところへ央成が現れちゃったら、そりゃへこんでいる澄夜を慰めるのは央成しかいないしねぇ。
こんなに優しくされちゃったら、身体だけじゃなくて心も持って行かれちゃうのは当然の成り行きで~。
想いが通じ合った二人は、力を合わせスパの改装を成功させ(途中、改築業者とトラブルも起こりますが、澄夜は澄夜なりに、央成は央成なりに解決の道を探します)、旅館の方も少しずつ経営が上向いていって、公私ともに充実していく二人。
央成視点がなかったので、央成はいつ澄夜に惚れたのか全くわからない。
しいていえば、初めて会ったあのときに一目惚れ? って気はするんですけどねぇ。
そこら辺だけでも、央成にちょっと語って欲しかったなぁ。
好きになったからこそ、澄夜のために一肌脱ごうって思ったんだろうし、抱くときも「心もじきに俺のものしてやるよ」って、最初っから言ってるし。
おまけに何度か目には「心も全部、俺のものになれ」なんて言っちゃってますよ、央成。本気を感じます。