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93年に出版された作品で、98年に舞台化もされたそうですよ!
当時のBL界の上でこの作品の位置づけは斬新なものだったようです。
JUNE的といわれれば、登場人物の少年の生い立ちや、その生活など、確かにそれを周到してはいるし、エンドの仕方も其れ風の展開をしているのですが、主要主人公がゲイである大人である部分。
彼の姿が、体験記的なゲイ小説風な様相をしていることから、どちらともとれる作品になっているのだと思います。
作品的には、一種の映画を見ているようです。
今でも、こんな作品映画になってもおかしくないというか、シナリオ的に有なんですよね。
それくらい、何だか切ないというか淡々としているというか、複雑な気持ちを余韻として残すのです。
ゲイとして、中年男性の愛人としてフリーライターの仕事はしながらも、囲われ者の生活をしている秀一が、隣に住む、やはり年上女性のヒモをしている18歳の青年・望とベランダで出会ったことから始まるお話。
秀一は、自ら望んで囲われ者の生活をしているのに、望に会ったとたんに恋に落ちて、それでも彼が部屋を訪れるのを欲望を隠して、ひと時一緒に過ごすことを楽しみにしている生活。
望は、水商売の女性と複数関係を持ちながらもあっけらかんとその生活を続けている、過去に訳ありの青年。
「自分なんか・・・」という自己卑下の言葉を散々口にして、望は秀一にあこがれを見せているような、甘えているような感じです。
そして望から語られるその過去は、とても悲惨な体験なのです。
でも、秀一はそれに同情したり、彼を慰めようとしたり、そういった態度はないのです。
彼を受け止めて、聞いてあげる。
ただそれだけなので、いくら秀一に望に対する欲望があるといえ、二人の仲の進展は、一向に訪れる気配はありません。
しかし、普通でいうところのヒモのような生活ですから、相手の女性の男とモメたりもするわけで、そういうダメージを負う望を助けるのは秀一です。
助けるにしても、修羅場に乗り込んで諌めるというではなく、ただ病院に連れて行くことしかできないのですが・・・
そういったヒーロー的でない部分が、やけに人間臭く、ありのままの等身大の人物なんです。
望が全てを秀一に話す時、秀一は望への気持ちを告白します。
そして二人は結ばれる行為へと進んでいくのですが、望の「オレ、今犯されてる」という言葉に秀一は萎えてしまうのです。
元々ノンケで、性に関するモラルは低く、女性や大人に親を求める望だから、秀一に抱かれてもいいと思ったのだと思うのです。
愛かもしれないけれど、愛じゃない。
そんな部分がとても切ない。
でも、二人は今後に希望を持とうとするのです。
その矢先・・・
この終わりはバッドエンドです!
しかし涙はさそわれません。
望が、秀一の隣人であった理由、そんなものが明かされても、何故か淡々として秀一は彼にいつまでも固執することはなく、きっと思い出に変わっていってしまうのだろうと予感させました。
ドラマティックだけど、ドラマティックじゃない、
やけにリアルを含む、そんな作品ですが、色々と技巧がこらされた昨今の小説を思うと、ダイレクトで綺麗事は存在させない、こんな小説はなかなかに貴重だな、と思うのです。