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『青の軌跡』の久能さんの'93年のデビュー作、2009年の新版です。
1930年代、魔都・上海。
タイトルになっている大型バイク陸王に跨がる将校・藤堂と、美貌の新聞記者・折原。
折原は、軍の暗部をスクープするも、記事は握り潰されボロボロになりまで拷問され、
死を覚悟したところで華族の父に助けられ、飼い殺しにされる為に上海に飛ばされる。
美しく、プライドが高く気が強く、手負いの獣のような彼は、決して誰にも膝を折らない。
上海でも狙われて殺されかかるところを、助けてくれようとした藤堂にも噛み付く勢いだったが、
やがて彼らの間には静かに心の交流が生まれる…
うーん、なんとも好みの世界と好みの主人公。
なのだけれど、全体に特に後半が物足りないというか、不満です。
これだけの要素を入れるのだったら、もっと端折らないで上下巻位で長く書いて欲しかった。
何より、生まれ変わってのエピソードが中途半端で蛇足に感じる。
悲恋で終わっても良かったと思うし、輪廻で生まれ変わって幸せになる、ということならば
陸王のプレートをキイにしてそれを匂わせるだけくらいでよかったのではないか。
映画のような雰囲気のある世界が良かっただけに、残念です。
ところで「陸王」、ほんとにあるのか調べてしまった。
あったw http://ja.wikipedia.org/wiki/陸王
タイトルにした「南京路に花吹雪」っていうのは、昔懐かしい森川久美さんの漫画です。
久能さんの商業誌第一作目で、10年以上前に書かれたものだそうです。
大幅に加筆修正されているようです。
193X年代~というと、満州事変、日中戦争、第二次世界大戦という出来事のあたりでしょうか。
“共同日報”の記者だった折原は、軍の物資の不正横流しを暴いたことが元で日本を追われ上海支局に異動させられてしまうが、危険分子扱いの折原は仕事はさせてもらえず、いわば飼い殺し状態。
しかも、物資横流しの責任者・元少佐の梶(かじ)に、上海で命を狙われる。
危機一髪のところを救ってくれたのが、上海在任中の陸軍大尉・藤堂克己。
軍人嫌いの折原は反発するが、梶から身を隠すため、折原は藤堂の隠れ家で生活することになる。
軍人が大嫌いで山猫のように気性の荒い受と、無口で硬派な軍人攻。
気の合わない二人がやがて・・・というのはそのとおりなのですが、しかしこれは悲恋のお話。
いろんなものにがんじがらめになっている時代でもありますし、昔の人ですから(笑)愛だ恋だに浮かれてる感じでもないわけで、はっきり言うと「ラブ」はあると言えばそこはかとなくあるが、ないと言えばない(笑)
折原が藤堂に惹かれていく過程はよくわかりますし、猫を手なづける藤堂のシーンは手なづかされていく折原の象徴のようなワンシーンだと思います。
が、全体的に時代や意に反することに従わさせられていく重さの方が勝ってるように思います。
タイトルにもあるように「リインカーネーション」ですから、悲恋から輪廻転生して「ラブ」になってくれればこのタイトルは“正しい”と思うのですが、輪廻してからがちょびっとしかないので、なんか凄くサビシイ(笑)
もちろん本心を抑えに抑えた秘める恋というのも素敵なのですが、「輪廻」とするには構成が違ってるようにも思います。
だからやっぱりこの作品は「輪廻」ではなく「悲恋」(そのわりに“恋”が足りない)で、「でも悲しい二人も生まれ変わって幸せになる・・・かもよ?」というオマケつき、という認識で読んだ方が外れないような気がします。