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表題作サミアはどこまでも切ないお話でした。
エイリアンと人間の恋。
数千年の時を死ぬことも叶わずに生きてきたエイリアンはずっと自分を殺してくれる存在に思いを馳せ生きてきた。恋とか愛という言葉では追いつかないほどに。
最初にちょっとだけ本当の姿を見たときには気絶してしまった友則も、サミアを殺すときは自分も後を追おうとまで考えるほどにサミアを好きになり、最後お別れの時には彼の本当の姿をみて彼の星での愛情表現をしてお別れする。
幸福の中でサミアを殺してあげられたことを悟りサミアとの別れを受け入れるラストは何かこみ上げるものがある。
「いつか地球が海になる日」は、ギャグだと思っていました。
変態でわがままで変態で変態な主人公のギャグ話でどんな展開になるのやらと思っていたら、まさかの大号泣。
完全にしてやられた!
ラストはハッピーエンドでよかった。
「ミルク」これは笑いこけながら読みました。こっくりさんって・・・爆笑。
サミアの日本名が俵米三(たわらよねぞう)だったり、この作者さんのセンスに惚れ惚れしてしまいました。
ちるちるのレビューを見て大変に興味を持ち読みましたが、本当良かったです!
エイリアンなんて、とんでも設定とおもいきや"ET”より切ない話に涙があふれてしまいました。
昔住んでいた星で罪を犯した為に最高刑とされる「不死」を与えられたサミア。
唯一死ぬ為に放出されたツールを求めて果てしない旅で、出会った人間が友則。
彼の不思議な色を持つ爪がサミアを、その苦しみから解く為の唯一の存在だった時、「わたしを殺してほしい」と望むその孤独がひしひしと伝わってきます。
友則との生活の中で、封印していた感情が解き放たれ、そして最後に望みがかなう時、もう涙がとまりません。
友則の気持ちも、その友人貴志のとる態度も、どちらも間違いではないのがより切ないです。
しかし、サミアが逝くことで永遠に友則の心に住むことになり、一緒にいられることができるという、この結末をバッドエンドとは決めつけられません。
一見エイリアンという設定にキワモノを連想しがちですが、本当に心を打つお話に心が洗われるようでした。
この悲しい話のあとは、少し愉快な「いつか地球が海になる日」と「ミルク」があって、少し気持ちを落ちつけてくれます。
「いつか~」の中にある主人公が書いた小学2年の時の作文というのが、また泣かせてくれるのですが、クラスメイトの女子の武藤のトラウマも悲しいものがあるのですが、あっけらかんと対応する主人公達がさわやかです。
「ミルク」はハムスターに憑依しちゃうお話ですが、笑わせてくれます。
取り合わせがとてもバラエティに富んでいて、とても印象に残る本です。
前編通して読了した後深い息を吐きました。
この混沌こそがあの当時のJUNEだったんだなぁ、と。
それでいて古びた感じを受けないと言うのは、
今だ文章にそれだけの力があると言う事なのでしょう。
世紀が変わってから書かれた筈の『ミルク』でさえも
またJUNEである事に軽く驚き、そして深く安堵しました。
ボーイズラブの進化の過程でこういう世界も展開して
いたのだよ、と言う事の証左として読み継がれて欲しい
ものです。
友達にJUNEとはなんぞやと聞いたらそっと手渡された本。
な、なんでもありですね!!
エイリアンと恋をしたりヘンタイだったりハムスターになったり。
表題作の切なさもすさまじいですが残りの二本もすごかった。
「いつか地球が海になる日」
変態性欲をもてあました高校生がクラスメイトの女の子と画策してターゲットを落とそうとするが……
「ミルク」
気がついたら宮城はハムスターになっていた。
しかもその飼い主はクラスメイトの瀧又で、彼の話によると自分は死んでしまったらしい。
彼の部屋で飼われるうちに、瀧又が自分のことをスキだったと知るが……
ぶっちゃけギャグだと思って読み進めていたら途中からものすごく重くなって、最後は泣かせるという超アクロバット技。
須和さん初読みでしたが、これはちょっとはまりそうな予感。
他の作品もチェックせねば。
前々から気になっていた本の新装版です。
全体に軽妙な文体で書かれた、でも内容はとてもいい物語でした。
『サミア』
自分だけがサミアを殺せる。今自分が殺せなかったらサミアはもう永遠に死ねないかもしれない。
そんな状況の中で、それまで普通の高校生だった友則は迷います。
ひとりぼっちで宇宙をさまよい、友則が生まれる前からずっと友則のことばかり考え、愛していたというサミア、そういう彼をいつの間にか愛してしまう友則、友則の親友で、密かに友則に惹かれている貴志の三人模様がとても切なかった。
読んだ後ちょっと『星の王子さま』を思い出しました。
『いつか地球が海になる日』
『俺は変態である』という一文から始まったので、最初は「これはなんだ!?」と思いました。
文章もギャグ調だし。
でも読み進めてみたら、これは本当に切ない物語でした。
男を泣かせたいという強い欲望を持った主人公七宮と、彼に近づいてきた同級生仁科のラブストーリー。
七宮は最初は仁科を遠ざけようとするのだけれど、そのうち仁科を泣かせたいという強い願望を持つようになります。
やがて泣かせたいという七宮の望みに反して、ある日事故のように抱かれてしまい、こんなはずではなかったと混乱して、「俺はおまえを好きじゃない」と言ってしまいます。
そして男を泣かせたいという願望の正体が明らかに。
変態な同級生武藤真弓がいいキャラクターでした
小学生の頃の作文は泣けます。
『ミルク』『ミルクの後で』
カフカの『変身』はある日目覚めると虫になってましたが、これは同級生瀧又が飼うハムスターになっていたお話。
ミルクというのは、そのハムスターの名前です。
なんでこんな姿になったのか。
自分は死んでしまって、こんな姿に生まれ変わったのだろうか。
瀧又は何を悩んでいるのだろうか。
小さな姿になってしまった主人公ですが、カッターを手首に当てる瀧又を止め、何とか意思の疎通を図ります。
がんばるハムスターが何ともかわいい、楽しい話でした。
新装版で読めて本当によかったです。
お勧めの一冊。
もう恋とか愛とかでいう言葉では追いつけないほどに―
思わず作中の言葉を借りてしまいましたが、表題作「サミア」を
読んでは、ふつふつと湧きいでる気持ちが上手く言葉になりません。
肉体という殻を取り払って、互いの存在、魂そのものを慈しみ合う
限られたひと時が、夏の日々に書かれています。
想い人がエイリアンという、ややもするとキワモノ設定が、
こうでなければ表現し得なかっただろう物語の核となっています。
気の遠くなる程永い時を、その存在が在る前からただ想ってきた
という果てのなさと深さに、ただ陶然とします。
直接的な描写もない言葉での交歓は神聖さすら感じました。
また、主人公の心を地に留めた、幼馴染みの存在と彼の言葉が
とても良かったです。真実の一面を突きつけても、命が巡る希望を
伝えてくれた彼の想いもいつか届くといい。
僅か100pの短編に深い読後感がありました。
同時収録の「いつか地球が海になる日」で、男性の苦しむ姿に執着する主人公の偏愛の底にあった真実。
それがタイトルと結びつく構成が素晴らしいのです。
また、主人公と変態という秘密を共有する少女なくして
このお話の魅力はありません。
彼らが感じてきた孤独、疎外感は大人達のエゴによるものなのに、
実にあっけらかんとした姿がたくましく愛おしいのです。
「叶えて」という大好きな曲が、この作品のイメージに合うなあと
個人的に思いました。叶えて、砕いて下さいその指で、という
空気に溶けるような曲です。
初見の作家さんでした。
15年前位にルビー文庫で出ていた復刻版の短編集みたいです。
あらすじだけ読むとエイリアンが出てきたり、トンデモ系?な香りがプンプンしますが、中身は切ないお話です。
お恥ずかしい話ですが、ホロリ…となりました。
表題作も良いのですが、他の短編集の
俺は変態である…から始まる「いつか地球が海になる日」
目を覚ますとハムスターになっていた…の「ミルク」
その書き下ろしの「ミルクの後で」もおもしろかったです。
久々に面白い作品に出会いました!!
おススメします☆
こんなに泣かされたBL小説はありません。
15年以上前に書かれた作品ですが、古さを感じさせないどころか、人物の心の動きは今でも十分に読み手の胸に迫ってきます。
最初は、突飛なサミアの言動に 読みながらも頭がふわふわしていたのが、次第に描写の美しさに引き込まれ、友則の気持ちでサミアを愛しいと感じ始め、そして近づくタイムリミットに、痛いほど胸がしめつけられていきます。
何度も何度も読んでいて、救いのないふたりだとはわかっていても、結局同じところで涙が止まらない。セリフの一つひとつに嗚咽がこぼれる。感動の色褪せない作品とは、本当に「サミア」のようなお話をいうのだと思います。
本のデザインも印象的です。
表紙で 眠るサミアを包む白い花が、扉絵では途端に鮮やかな色に。読了後もう一度扉絵を見ると、まぶたに口づける友則の姿にハッとさせられ、どうしてもまた涙してしまいました。
同時収録の「いつか地球が海になる日」(タイトルが素晴らしいです…)「ミルク」も、文章は読みやすくあっさりしているのに、登場人物の可愛さやエロさがしっかりと伝わってきて、とても好きな作品です。「ミルク」は特に門地先生の絵柄がぴったりなお話。
一冊のうちに泣いて、爆笑して、ときめいて、読み終えた後の充実感がとにかくすごい。
夏が来るたび読み返す名作です。
タイトルと門地かおりさんのカバーや口絵イラストから、甘くてロマンティックなお話をイメージさせます。でもクスリと笑えるんですよ。小説道場ご出身の作家さまで初出も古い作品ですが、古臭さを全く感じません。JUNE作品ですから、作風に色んなロマンを求めたとしてもあながちズレた要求でもないのかもしれないけれど、どんなテイストであれ、BLのルーツ的JUNE作品にはハズレがなさそうな予感がいたしまして…。
短編が三作収録されており、主人公は全て男子高校生。とにかく全員、メンタルがオトコマエです。たとえ不条理な状況に陥っても怯まない。作家さまが笑いに変えて読者もろとも流れに乗っからせてくれます。表題作「サミア」は、ど田舎の山奥に住む友則が、幼馴染の貴志と一緒に学校からの帰宅途中で謎の美しい男と遭遇。その男は宇宙人だった、というストーリー。B級コメディ映画のような設定ゆえか、笑っていいのか戸惑いつつも切ない異(人)種間の心の交流(エッチ付き)にキュンとします。
「いつか地球が海になる日」が個人的に最も心打たれた物語。自称「変態」の主人公、七宮の視点で語られる形式で、ストーリーが進むにつれ彼の生い立ちが明らかになります。男の性癖に理解を示す女の存在感はBLではなかなか難しいけれど(そこはJUNE作品ということで)、このお話では女子クラスメイトの武藤がキーパーソンです。七宮が己の変態的な欲求を仁科という彼の苦手な男子生徒で果たそうとするのですが、事態はあらぬ方向へ。自分はゲイではないと釈明するシーンで、「ストレート」というワードを使っているところに時代を感じます。ま、いくら耳年増とはいえ、今日日ノンケという言葉もノンケ本人は使わないのでしょうけども…。さらっと読めるのに笑いと涙の両方を誘う、実は色々なテーマを取り込んだとても深い作品といった印象を受けました。
「ミルク」&「ミルクの後で」がこれまた、男子高校生が可愛ハムスターに…。というお話で、笑わせてくれつつ、やっぱりホロリとさせられちゃう。飼い主の瀧又を励ますハムスターのミルク。健気というより、父性すら感じます。どの主人公も男に寄せられた思いに受けて立つ!恋情とも微妙に違う、相手を心に懸ける姿が男っぽくて、とってもカッコよかったです。
初出が1993年という話の新装版。
『サミア』『いつか地球が海になる日』『ミルク』『ミルクの後で』の
四篇が収められた短編集。
エイリアン、変態、ハムスターと、ぶっとんだ設定の古きよきBL。
軽妙な筆致で書かれながら、ふっと心の深いところに嵌るような物語達。
個人的にはSFというには抵抗があるが、
淡々とコミカルでありながら、とても優しく誠実な物語は
BLジャンルを外したファンタジー短編集としても悪くないと思う。
逆にBL的な萌えを感じるか?……と言われると、
『ミルク』意外は個人的にはNo。
『ミルク』は、設定を猫でも犬でもなくハムスターにしたところが出色だが
切ない自慰を日々(って3日に1回らしいけれど)を見ているあたりでキュン。
濃いエロを求める向きには合わないかもしれないが、
夏の夜のおとぎ話にお勧めの一冊。