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なんなんでしょうね、ホント。
この方の書かれる文章はどうにも私の琴線に触れるというか心を擽られるというか。
とても好みの文章を書かれるんですよね。
今までのところハズレがありません。
いや、1つだけ脇役が強烈すぎたのがありましたが。
脇役をのぞけば、それもメインCP好きでしたし。
さて。
今回の物語は「チェリータルト」と「メイプルシロップ・パンケーキ」という2つのお話で構成されているんですが。
甘いお菓子の名前が付いてるから甘いお話なのかといえば、いえいえとんでもありません。
非常に苦く切ないお話でした。
「チェリータルト」
高校生の彰は妹の代わりに入ったバイト先のケーキ屋である男と出会う。
男はいつも1人でやってきて窓の外を眺めながらケーキを食べる。
ある日、男が忘れ物をしていって。
その中に挟まっていた名詞から男が中学教師の矢野という人物だと判明する。
矢野の家に押し掛けた彰は、矢野が「元」教師で、今は「愛人」としてこのマンションに囲われていると教えられるのだが…。
年上のどこか放っておけない空気のある矢野。
それでもそれは最初は年上に憧れるようなものであったのかもしれない。
けれど、矢野の1人Hを目にしてしまい、それに反応する自分を自覚して恋は始まる。
寂しさにつけ込んだ、寂しいから甘えた。
といえばそれまでの関係なんだけども。
それでも確かにそこに絆を結ぼうとはしていて。
けれど、優しくされればされるほど。
矢野の心には相反する想いがあって。
結局のところ、矢野が「甘えてしまっていた」ということになるのかなぁ。
最後には元の位置に戻ってしまう矢野をそれでもどうしても責めることができません。
彼は彼で切なく苦しい恋をしているのだろうし、彰といる現状にも深く悩んでいただろうと思うから。
「メイプルシロップ・パンケーキ」
↑の続編。
彰は矢野とのことは自分を「親友」だと言うアキにだけは話していて。
失恋後は一緒にバイトしたりもしていた。
けれど、ある日、アキに好きな人がいることを知り、それを親友であるはずの自分が知らなかったことに苛立ちを覚えるのだが…。
↑よりは全然、青春の甘酸っぱい感じというか。
苦さはありません。
ハッピーエンドなのでね。
アキは本当はずっと彰のことが好きで。
でも、諦めなければいけないと思っていて。
ずっとそばにいるためには、自分の気持ちは隠し続けないといけないと思っていて。
だから、彰の言葉に傷ついてもグッと歯を食いしばって涙を堪えて笑ってやり過ごす。
その表情を以前はきっと見過ごしてきた彰。
それがアキが好きな人がいると言ったことでなのかアキを見て今までと違うと感じるようになっていて。
それでも、気持ちは擦れ違ってすれ違って。
勘違いもあって、アキが好きだと気づいた時には自分は失恋したと思っていて。
最後の最後で種明かしがあるんだけども。
それまで相手が誰だかわからないノートのやりとりがあって。
このノートのフレーズがどうにも切なくて。
最初に彰がこのノートを見つけた時のフレーズとかホント好きなんですが。
ようやくようやく真実に彰が行き着いた時にもテンヤワンヤがあったりで2人の関係がそっちのけになってしまったり。
読者を焦らしプレイですか?
最後の最後までめいっぱい強がりなアキは非常にかわいかったです。
ちょっと不思議ちゃんていうか天然ていうか…なところあるけど。
今後は彰に散々に甘やかされるがいい。
コレ、96年の作品なんですよね。
もう17年も前。
現在のBLに較べたら、えち度は低いのかもしれませんが、そんなのは今でもソフトなものはソフトだし。
お話自体が今読んでも十分面白くて色褪せていないので機会があれば是非多くの人に読んでみてほしいです。