お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
強引だし、色々「ありえなーい!」と叫びたくなってしまう所があるんです、このお話。
これ、かなり昔に書かれたBLだと(これは17年前だものねぇ……)良くあることなんじゃないかと個人的には思うのですが。
「穴だらけ」って言ったら確かにそう。
でも、それを補ってあまりある魅力が私にはありました。
剛しいらさん(昔はゴジラさんと呼んでいたなぁ)は、私をBL小説世界に誘ってくれた作家のお一人なものですから、どうしても点が甘くなってしまう傾向が否めません。
ただ、剛さんの本を読んでいつも思うのは、所謂『恋愛、甘々』ということを書こうとしている訳じゃないんだろうということなのです。
恋をするのが「ガーッ」と行く感じじゃないんですよね。
登場人物が何かわだかまり的なものを抱えていて、恋という中でそれが解けていく感じ。そして元々抱えていたものを理解し、そこから一歩踏み出そうとすること、そんなことを書いている様な気がするのです。
だから、私にとって今作の主人公は、川崎でも天羽でもなく、事件に巻き込まれる高校生の天道歩でした。
人を惹きつけるほどの画力を持っていながら、母と祖母の目を恐れて「絵の道に進みたい」と言えない。進学校に通い真面目に塾通いをしながら、深夜、再開発地区でビルの壁にスプレーで絵を描く歩。
彼をビルまで送ってくれて、見つからない様に見張りをしてくれた暴走族崩れの子が二人、惨殺されたことから始まる歩の葛藤が、大変読みごたえがあり、とても心を寄せることが出来たのです。
歩が天羽に寄せる仄かな想いも感じられるんです。
私、これに萌萌になってしまいました。
いや、LOVEはこっちが主じゃないのですけれどもね。
でも、最終的に歩が下した判断は天羽の存在があったからだと思うのですよ。
まさしく、主人公を喰ってしまったバイプレーヤー。
『身近な人に理解されない孤独な才能ある若者が、様々なものの想いを受けてすっくと立つ』なーんてお話がお好きな姐さまは、楽しめると思うんですよね、このお話。
1冊丸ごと表題作です。
連続殺人犯を捜査する1か月間で、二人は恋人同士になります。
拓人(受け)にとって、川崎(攻め)は交番勤務の頃からの理想の刑事。ペアを組むことになり、喜びます。川崎の同期・鈴木から、川崎は男子高校生に手を出したという過去を聞かされても、鈴木に憤りは感じても、川崎を避けようとしません。一方、ウォーカーと名乗る少年・歩は連続殺人犯に遭遇していて…。
という内容です。
殺人犯に襲われかけた歩の話を聞いた拓人が囮捜査を行い、尻に棒を突っ込まれてしまいます。その夜、助けに来た川崎の部屋でセックスされます。
…それはまだ良しとしても。
川崎は、拓人の代わりに、歩を被害者に仕立て上げます。歩の髪を切り、尻に棒を入れて傷つけるという強引な手口にビックリしました。いくら歩が同意のうえとはいえ、ちょっと…引きました。
推理はしますが、犯人は知っている人というわけでもないですし、シリアスでもありません。穴あきだらけと知りつつも見てしまう2時間ドラマのような作品です。細かいところは気にせず、刑事ものの娯楽として読むには良い作品です。
故剛しいら先生の2001年作品。
刑事ものです。
舞台は1999年のさいたま市。さいたま新都心の開発中のお話。
闇に紛れて建築中のビルの壁にグラフィティーを描いていく少年・「ウォーカー」。
暴走族たちに守られながら警察の見回りをかい潜って、夜の中何缶ものスプレー缶を腰に下げてポップなイラストを完成させていく。
その「ウォーカー」の見張り役だった暴走族の少年が、相次いで2人殺された。
担当となったのが交番勤務から刑事になれた若手の天羽(あまは)と先輩刑事の川崎。
川崎には隠された過去があって…
…と、犯人の謎解き、刑事2人の地道な捜査、若い天羽の正義感、ウォーカーのやりきれぬ日常と焦り。
それらが視点を変えつつ多面的に描かれて、本当にTVの刑事ものドラマを見ているようです。
BL的にはというと。
天羽が川崎に憧れを抱いているわけだけど、仕事の進め方、色々な事件を体験している事、そういういわゆる「慕い」と、父親を求めるような「甘え」の描き方が良い。
また「ウォーカー」を気遣う天羽と、そんな天羽を信頼する少年との間の淡い「何か」。
そういう「漂うなにか」がこの作品では良かったと思う。
なのにやっぱり肉体関係になるのか…別に実際にそこまでいかなくてもよかったかな…という気分。
それに、川崎のとった方法は。やはり問題ありだよな〜。
ラストはこの事件を経験して「ウォーカー」を卒業した少年のモノローグで終わります。
1999年世界滅亡は起こらず、でも世界中で暴力や戦争は止まない。でも自分に手を差し伸べてくれたひとを思って歩いていく。
彼中心に考えると「青春小説」としても面白い作品。
新人刑事・天羽は、新設されたばかりの警察署に赴任する。
そこには以前から秘かに憧れていた川崎がいて、天羽はその川崎とコンビを組むことになった。
コンビを組むようになってから、謎の多い川崎の行動に戸惑う一方で、天羽は強烈な個性を持つ川崎に強く惹かれ始めていた。
そんな最中、少年ばかりを狙った殺人事件が起きた。
初めての大きな事件に戸惑う天羽を、川崎は優しく支える。
けれど、順調に進んでいるかに思えたある日、天羽がある秘密を持ったことから川崎との間に溝が生まれて……!?
というあらすじでした。
まぁ、なんというか……ちょっと物足りなかったなー……というのが率直な感想。
ちょっと身も蓋もない言い方をすると、普段、落ち着いているのに“セックス”のことになったら川崎がこんなに自分の欲望に正直に……というか、素直になっちゃうんだろう……? というのが、個人的な疑問でした。
以前、結構な痛い目……に合ってそうなのに、こんなにストレートかつあっさりと手を出しちゃっていいのかなー……? と。
個人的にはもう少し、一度(じゃなくてもうちょっと多そうだけど)失敗してる身としては、もうちょっと身長になって、大人のずるさ……というか、大人特有の慎重さ……みたいなのが川崎に見えた方が個人的に好みだったかなー……? と。
いやまぁ、もちろん、一ヶ月以上我慢してるだろう……と言われたらそれまでなんですけど……。
でも、一度の離婚歴があって、尚かつ、仕事で知り合った相手に恋愛感情を持ち込んで痛い目を見たことがある男がそんなに簡単に次の男にためらいなく手を出すかなー……? とちょっと違和感を覚えちゃって……。
むしろ、その気になっちゃった天羽を一旦断る……ぐらいの恐怖心的な何かがあった方が個人的な川崎のイメージとしてはしっくりきそうな気がしました。
やっぱりそれなりに年食ってるなら年食ってる男の渋み、みたいなのがほしかったです。
でも、これがシリーズ化する前の一作目だっていうのなら、ちょっと納得かも。
どういういきさつがあって、川崎が前の恋人に手を出すことになったのか、どうして1回目の離婚をしなくちゃならなかったのか……という辺りの伏線の回収が不十分な気がして、少しもやもやが残ったので、ぜひ続きを書いてほしいなー……と。
話としては悪くないですが、個人的に勝手に作ってしまった川崎のイメージと実際の本の後半の川崎のイメージが自分の中でがっちしなくて、不消化な部分が残っちゃってちょっともったいなかったです。