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dakaretemoii
私のこの作品との出会いは少し変則でした。
妃川螢先生の作品を読んだことがなかった当時の私は、ひょんなことから妃川先生のオフィシャルサイトに辿りつき、番外編SSを読みました。
その番外編の中の2人がすごくいい雰囲気で、なれそめが気になって本編を読みました。
普段はこういう読み方はしませんが、奇妙なご縁がありました。
この作品は妃川先生の3作目で、私が読んだのは2009年です。
2人は1枚の写真がきっかけで出会います。
高瀬尚哉(たかせ・なおや)は広告代理店に勤めていて、大きなプレゼンを控えています。
ある日の出張帰りの飛行機の中で、偶然見た雑誌の写真に目を奪われます。
高瀬はそのカメラマンの撮る写真がプレゼンに必要だと思い探しますが、なかなか情報が見つかりません。
使えるコネ・人脈を使い尽くして探し出した人物、それが志賀龍之介(しが・りゅうのすけ)です。
高瀬は電話すらない志賀の事務所へ飛び込みで行き、話は聞いてもらえたものの冷たく断られます。
説得を試みれば、ヤらせてくれたら考えると挑発的に言われ、カッとなって企画書で殴ってしまいます。
でも、どうしても仕事を受けてほしい高瀬は事務所へ通います。
高瀬から見た志賀は、写真の腕はいいのに人物は最悪で「難攻不落」感が満載です。
高瀬は長身にスレンダーな体格と甘いマスクで営業には有利ですが、抱かれるとかは考えたこともありません。
志賀の撮る自然写真は素晴らしいけれど、外見は日に焼けた彫りの深い顔立ちの大男で粗野な感じです。
志賀の撮影に高瀬が同行したり、志賀の事務所で野良猫の出産に立ち会うことになったり、一緒に過ごすうちに2人の関係が変化していきます。
高瀬の心境の変化はとても深いところで起こっていて、それを志賀が全て理解しているような不思議な空気が漂います。
外見も性格も全く違う2人が、時間をかけて互いが抱える孤独を癒やす存在になっていく経過が追えます。
この2人は仕事と恋愛が密接になりがちなのに、仕事はきっちりこなすところがクールです。
志賀と寝てからは高瀬の周囲にも変化があり、BL的お約束の(笑)どんでん返しがあって面白いです。
志賀はマイペースな感じでプロポーズしますが、高瀬には男同士なことに葛藤がある点もポイントです。
高瀬がこれだと思った雑誌掲載の志賀の写真と、高瀬と組んだ広告の写真が見てみたくなります。
後日の仕事で、志賀の写真が使われたポスターも見てみたいです。
それは読者の心の中に浮かぶもので、小説の醍醐味だとわかっていますが見てみたいと思うのです。
脇キャラにも個性的な人達が登場して、会話も面白く、読み進めるとわかる仕掛けもあります。
途中から仔猫を飼うので、猫好きの方にもおすすめです。
志賀の事務所の経理担当の公香(きみか)さんのポジションがちょっと羨ましいです。