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もんのすごい王道です。ベタベタです。でもそこはもういいんです。
とにかく松幸さんの『貴族・王子さまもの』にありがちな『無理矢理から始まるラブ』じゃなかったよ!それだけでも個人的にポイントアップです(なんか激しく間違ってる気がするが)。
とにかくヴァルター(攻)が紳士で優しくて包容力があって、その分ストーリーはもういかにもありがちな展開のみと言っていいくらいなんですがそれでもいい。先読みできてもそれなり以上には読ませます。
第一次大戦前のドイツが舞台です。時代ものになるのかな?
ドイツ政府から日本に派遣された建築技師(男爵)夫婦の養子になり、その帰国時にドイツへ連れて来られた葉月(受)は音楽学校でヴァイオリンを学んでいます。
葉月は学内演奏会の代表に選ばれたことで、それを妬む誰かの手の者に襲われたところをヴァルターに助けられるんですね。
出逢いからして王道一直線です。また、葉月の養父母も実にいい人たちです。そのあともセオリーを一切外しません。ヴァルターに恋する貴族の娘が出て来るところまで、清々しいほどにお約束の展開が続きます。
決して悪い意味で言っているのではありません。確かに意外性はまったくないですが、その代わり安心してあまあまに浸れます。そのためのストーリーだと思えば十分楽しめます。
私が読んだ松幸さんで『無理矢理から~』系統が続いたので、こういうのがあるとホッとします。心からそう思いました。
正直な感想としてそう思ってしまいました。もちろん、攻め様のカッコよさとかそういったものはこれでもかといった感じであるのでそこは評価するのですよ。問題は、どことなくなぜヴァルター(攻め様)から身を引こうとするのかということをめぐる政治的な問題(当時のドイツ刑法175条によって同性愛が処罰の対象になっていた)や同性愛をめぐる認識と妄想にしっかり付き合いきれていないのかなというところで薄いものを感じてしまいました。
純粋なボーイズラブとしたら十分なまでの軍服ものとロマンスもので「ごちそうさまでした」になってしまうのですが、それから一歩それると心もとない気分になるようなそんな感じで。
クラウス・テーヴェライト『男たちの妄想』と比べて読むと意味がわかると思います、このレビュー。