kirara
choukai
商業誌『夏の贖罪』の続編同人誌です。番外編ではなく続編です。少なくとも『ラブラブ後日談』ではありません。
こちらの前振りとして、準備号コピー誌『杻械~introduction~』も出ています。
レビュー中に本編ラストのネタバレあります。それが前提のストーリーですので。
『~introduction』で、京介(攻)は馨(受)に身辺調査をされたと思い込んで、馨が否定するのも信じずに腹を立てていました。
実際には、調査したのは本当に馨ではない(今更そんな必要もない)んです。
この『身辺調査』がストーリー上重要な意味を持っているんですね。この調査をさせたのは馨の祖父でした。
馨の実家は相当の資産家なんですが、一人娘だった馨の母は亡くなり、馨は家を継ぐ気がなく後継者と目する馨の息子(本当は馨の母と京介の子)・架はまだ小学生。
架を支える人材として馨の祖父が目をつけたのが京介だったんです。
馨の実家と架と京介の仕事と・・・
いやあ、本編からわかってはいたものの、京介がなんとも傲慢な俺様で(個人的にものすごく苦手な要素なんです)、私よく本編読めたよな~と他人事のように考えてしまいました。
本編は(どれほど言いたいことがあっても!)とにかく『作品』として好きなので、京介のキャラクターについてはあまり気にしないようにしてたんですけどね。
でも、やっぱり苦手には違いないんですよ。
ところで、↑レビュータイトルですが。
この同人誌のタイトル『杻械』は昔使われていた『木製の手錠』のことだそうです。
つまり、京介が『贖罪』のために馨に見えない手錠で(馨がというより京介が自ら)『拘束される』人生を表しているわけですね。
本編ほど暗くて陰気ではないとはいえ、かなり重苦しいものも含んだシリアスですが、うえださんの持ち味の『繊細で切ない』ストーリーでもあります。
表題作は同人誌なのにラブラブじゃないということで、もう1編のSS『なつまつり』が収録されています。
夏祭り(麻布の納涼祭)に出掛けた2人。
人混みの中夜店を見て歩き、射的やヨーヨー釣りに興じ・・・
ラブラブというより、どちらかと言えばほのぼのトーンなんですが、何せこれまでが(Hは十分だけど)ラブ成分が少な過ぎたので、なんか動揺してしまうくらい甘~く感じました。
私は、キャラクターに対する好みが作品の評価に非常に影響します。
それでも、(前述もしましたが)京介がどれだけ苦手なタイプでも、読みながらうんざりさせられても、作品としてはホントに好きなんです。
もっと言うなら、確かに京介はかなり『苦手・イヤなタイプ』ではありますが、ハッキリ嫌いとは言い切れないんですよね。
それも、うえださんの力なのかもしれません。こんなにイヤなヤツなのに!
でも、とても読み応えのある作品だと思います。大好きなんですよ。
本題とはあまり関係ありませんが、冒頭でも書いたようにこちらに先立って準備号コピー誌(『杻械~introduction~』)が2月に出ています。そしてこちらが出たのが8月。
なぜそんなことをというと『~introduction~』の作中時間は2月、そしてこちらの作中は半年後の8月。つまり、作中のキャラクターと同じ時間が流れているんです。
もちろん、当時リアルタイムで読んだ読者にしか通じませんが、なかなか気の利いた演出だなあと感じました。