お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
愛は繰り返す。どんなときも、いつまでも、永遠に。
ashita mo aishiteru
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
図書館の蔵書にあったので、あまり深く考えずに手に取りました。
が!なんとも深いお話で、彼らのバックグラウンドやこの先も見ていたいと思いつつ、津田の苦しみと深い愛情に脱帽です。自分なら逃げ出してると思う。。。
記憶は13分しか持たない。
でもそれを毎回、毎日、新しい出会い、新しい物語だと思える津田。そうじゃないと無理よね。
この本で描かれているのは切り取った「一日、24時間」の部分。櫂の方は無意識なので、毎回の現れる「ハウスキーパー」の男の理解が違う。敵だったり、男娼を買った客だったり、愛しい人だったり。
それに合わせて津田は演じる。
終わりのない、繰り返し。
この24時間が毎日、何年も(既に17年繰り返している)続けられていて、そして続いていく。しかもこれから13分は短くなり、果ては全く記憶できなくなる時がやって来るかも知れない、救いが無い。。。
そんな櫂にもほんの一瞬、記憶を思い出すこともある。津田のことを愛していることを無意識に認識していることもある。
津田の救いはちゃんとありますが、やっぱり読後感は重いですね。
読ませる、読者を選ぶ作品だと思いました。
好长好长的一天结束了!当一个人的记忆受限于随时可能坏道的只读硬盘(17/30已损坏)+13分钟容量的Fifo内存+只能记录几句话的缓存…毫不讲理的绝望设定注定了这只能是个沉重虐心的故事……然而实际读下来却是甜蜜到心痛(看烟花那段简直无法自已),是被剥夺的未来,还是被赐予的宝贵当下,「我是从很久以前开始,持续让你施予魔法的男人。」…无数次被櫂的坚强和悠儿的深情打动……ps.近半本书的纯肉真是猝不及防
初めて読む作家さんでした。
高い評価を受けている作品だったのですごく期待して読みましたが残念ながらハマりませんでした。
ストーリーは切なく、題材とされてるテーマは重い物です。
時系列が混在しているので集中して読まれることをお勧めします。
お話自体に魅力があって最後まで読みきることができて充実感はありました。シリアス系が好きなので特に。
ただ、エッチシーンが無意味に多いのと、文体が好みじゃなくて・・・。
内容は面白かったのでドラマCDとかで聞きたい一作です。
事故によって18歳までの記憶と直前13分の記憶しかない櫂。
そんな櫂と9年付き合い続けている恋人の悠児。
たった13分という記憶の中で、毎朝目が覚めるたびに自分がいる場所もわからず戸惑う櫂。
自分が記憶障害であることを書き留めたファイルをよむ度に途方に暮れて涙を流す櫂の生活を思うと胸が痛くなりました。
そして愛する(愛し合っていた)人から13分ごとに「誰ですか?」と疑いの目を向けられる悠児もまたつらいだろうな・・・。
櫂を困らせないように「ハウスキーパー」と名乗ったり、時々自分を抑えられず強引にせまる悠児も切なかったです。
迷子になった櫂が、電話をかけた妹をお母さんと勘違いして会話するシーンは泣けました。
障害という回避できない原因だからこそ、本人も親しい人達ももどかしくて悔しく悲しいだろうと思います。
でも花火大会の夜よみがえった「あなたのことを忘れたくない」という櫂の潜在意識が消えることなく、櫂と悠児が毎日惹かれあって愛し合い続けていってほしい。
久々に泣けるお話で素敵な作品でした。
あらすじと表紙の印象から、記憶障害のせいで同じ相手と何度も恋に落ちる、というプラトニック系純愛モノ、と予想していました。ドリュー・バリモアの映画でこんなのあったなあとか思いつつ。
いざ読み進めてみたら確かに序盤はそんな感じだったけど、エロシーン突入でアラ意外と濃厚!、この櫂クンも自分たちのHビデオなんて録っちゃうんだ、自分も十分楽しむエロっ子系?と思わせる。
しかし、次に意識が焦点を結んだ時『デリヘルのバイトを、始めたろ?』の
セリフを見て、え?!と我に返ったというか。突然読み手としての「私」が記憶障害の底知れない深刻さに直接触れてしまった感があったんです。
正気に戻った、というか、心が1つの焦点にフォーカスするその瞬間ごとに違う時間・空間・自分自身が立ち現れる現象。これは「恐怖」ですよね。自分が誰なのか、ここはどこなのか、目の前の男は誰なのか、自分にとってどんな意味のある人物なのか。全くの「ゼロ」からの再構築。読み手としての私も、「えっ?デリヘルって?そんな設定だった?」と慌てたわけです。
そして次に正気に返ると、今度は「監禁されているから逃げなければ!」というシチュエーション。マンションの外まで逃げて、外にいた学生さんに110番してもらって。携帯を拾ってもらって履歴先に掛けてみるけど妹なのかお母さんなのかも混乱して、監禁の犯人が今度はお母さんの知り合いに変容する………。読み手も「櫂」本人の混乱を追体験するのです。
1つのクライマックスは、花火大会。ここで櫂は記憶の内の1つを呼び覚ます。それはさしずめギリシャの哲学者のような思索の世界。
津田に対する言葉遣いなどもこれまでとは全く違い、読み手としての私は、ああ記憶障害というのは多重人格にも似ている、と感じる。目が覚める毎に別人になっている感覚…
そして私は、この思索者としての櫂と津田の会話が一番萌えました。攻めと受けとかそういうのではない、完全に対等な2人の恋人同士(メチャお堅いけど)の空気が出ていたから。そして、この「櫂」はとても知能指数が高く、この自分が消えてしまうことも良くわかっている。だから腕に文字を書き記す。でも次に出てきた「別の」櫂はやっぱりそれすらも忘れていて。
切ない。正に「刹那」の切なさ、な訳です。
一方津田もある意味「共依存」的な執着愛も感じさせます。
そして結局櫂は何をしていた人なのか、お金持ちなのは何故なのか、謎のままです。
津田視点のエロ無し目の後日談(櫂の記憶障害も進んでいる…)があるそうなので、まとめて新装版にしてくだされば、より一層この作品世界が深く感じられそうです。
色んなところで「名作」「感動作」と耳にして気になっていた作品です。残念ながら私はハマりませんでしたが、情熱を持って書かれた渾身の物語だということは感じ取れました。
記憶障害を持つ主人公・櫂と、その恋人・ツダの長い長い一日が時系列で描かれています。二人の設定と「明日も愛してる」というタイトルだけなら間違いなく「神」評価でした。あまりにも切なく、私も冒頭の数ページを読んだ時点ではゾクゾクするほど名作の予感がしました。すでに泣きそうでした。
しかし、その後に続く (そして一日の間に何度も繰り返される) 濃厚で非常に長いセックスシーンがどうも物語とそぐわないように思えて、読んでいて疲れてしまいました。また、櫂のパーソナリティが一日の間に何度も変化している点も違和感を覚えました。記憶障害であっても人格そのものは変わらないはずなのにちょっとずつキャラクターが違っているような…。さらに言えば、十八歳の平凡で明朗快活な青年の櫂と、ツダが語る「賢くて美人で小悪魔」な櫂が一本の線で繋がらないまま終わってしまいました。おそらく、櫂視点であることの演出の一つとして二人の馴れ初めを含む十七年間のことが仔細に書かれていないのだろうとは思いましたが…。
こんなに長くて大変な「今日」が終わって、また「明日」がこんな感じだとすると…二人とも疲れちゃうからセックスはほどほどにね、と冷静にツッコんでしまいました。
テーマがテーマだけに安易なハッピーエンドを求めるのはお門違いなのでしょうが、この切なさとやるせなさを補って余りあるカタルシスが欲しかったなぁと思いました。
電子書籍版を購入。
ものすごく泣ける話ということで、手に取りました。
ネタバレ無しで読んだ方がよいとのことだったので、他の方のレビューを一切見ずに読み始めました。
読み終わっての感想は、
「壮絶」
その一言です。
読んでいると、ナイフで心臓をえぐられるような、キリキリとした痛みが襲います。
でも、ものすごく甘い。
痛くて甘い。
とても不思議な感覚。
万人受けは、しない作品です。
読む人を選びます。
そして、状態も選びます。
心が少しでもしんどいときには、この作品は無理かな。
きっと、引きずられてしまう……
いつか、読み返したいと思いつつ、今の私には無理そうです(汗)。
攻めの津田は、本当に櫂を愛しているんだなぁ。津田は何度も自己紹介と愛の告白を繰り返すけど、返って来る言葉は半分以上が容赦ないものだった気がする。
記憶喪失モノのBLは何冊か読んだことありますが、この作品は異彩を放ってますね。感動ものかと思えば、あからさまにエロティックな表現もあり、悲劇とも喜劇ともつかない物語なんですよ。
セックスのシーンが比較的多いですが、それにも意味がある気がしてならないのです。櫂の記憶は13分しか持たないから、津田が愛を囁いてそれを櫂が受け入れたとしても13分後にはリセットされてしまうわけです。例えばプロポーズして永遠の愛を誓い合っても、薬指に指輪をはめてみても、櫂は忘れてしまう。
だから津田にとって、愛を確かめる方法は身体を重ねることしかないんじゃないかと。津田がキスマークを身体中につけるのも愛し合った証を残しているんじゃないかなぁ。
でも、謎は深まるばかりですね。この作品には二人の馴れ初めもなければ、どういう事故で櫂が健忘症になったのか、とか櫂(もしかしたら津田の方?)はなぜあんなに金持ちなのかとかが一切書かれていないのですよ。
HOLLY MIXに続きがあるとのことで、それも購入しましたがまだ読んでいないのでそっちの感想はまた後日。
記憶喪失物と言えばお涙頂戴です。
そしてBL界では定番も定番、様々なパターンで色んな作家さんが挑戦してきたジャンルでもあるので、ちょっとやそっとのことでは驚きません。
そんな感じで少し斜に構えて読み始めたものの、いろいろな意味で濃厚すぎて、読後の疲労感が半端なかったです。
数多ある記憶喪失もの、とりわけ前向性健忘を扱ったものの中ではピカイチだと思います。
受は事故により13分しか記憶がもちません。
しかも受視点であるため、過去にどんなことがあったか、どんな仕事をしてきて、攻とどんな風に過ごしていたのか……なんてことが見事なほどに一切触れられていない。
ひたすら13分を繰り返し、そのたびに受はリセットされる記憶の中で生まれ変わります。
攻はそれにただただ淡々とつきあい、毎回毎回辛抱強く愛を向けます。
読む側も13分リセットに付き合い、こりゃ濃厚だ一体全体何ヶ月経ったの……?
と読後にずっしりと肩にへばりつく疲労感に溜息を吐きつつ考えると……
何とまぁ、これがたった1日の間に起こった物語だったことに呆然とし、そしてせつなさに胸が熱くなるわけです。
お見事としか言いようのない緻密さでした。
ストーリーの題材はすごくよかった。
でも…ここまでエロエロしてなくてもよかったんじゃないかなと。
エロエロシーンを減らして、もっと二人の日常のできごととか、馴れ初めとかを読みたかった。
そして、一番気になったのが情景描写。
これは私の日本語レベルが低いだけなのかもしれないが、語句の羅列でかなり遠回しな表現をされている箇所が多々あって、理解するのに時間がかかってなかなか読み進めることができないのが辛かった。
レビューの評価もいいので、読むのを楽しみにしていただけに残念…
丸ごと1冊表題作です。櫂の目線で語られます。
本人が事情を覚えていない部分は書かれませんし、本人が事情を覚えている部分は、あえて脳内で再生する必要がないので語られません。そのため、現在の状況になった原因やそれまでの経緯はすべてが明らかになることはありません。
切ないという評価を知ってから読み始めたので、序盤部分での長いエロ場面は予想外で、おおっ、とのけぞりました。しかし、それを過ぎてから語られていく物語に胸が痛みました。
主人公、櫂(受け)は、13分しか記憶をキープできません。そのため、一日に何度も「リセット」されてしまいます。そのつど、初対面の挨拶をするツダ(攻め)…そんな彼らの長い1日の物語です。
なお、「HOLLY MIX」で番外編「今日も愛してる」が読めます。ツダ目線で語られる本編から2年後の話です。そちらを読んでから本編を読み返すと、序盤のエロ場面にもまた違った切なさが沸いてきました。
ちるちるの中で泣ける作品だと言う掲示板のレスを目にして読んでみました。
結果は泣けました。
個人的に、家族愛で泣けるものや死ネタなどは「恋愛」で泣けるわけではないので泣ける作品に含まないです。
BでLなので男同士の中での悲恋や報われない恋が含まれると「うぉーーーーー(TдT)ダーーー」となるタイプの私ですが、この作品はその点ではツダ視点で考えても切なく、先生だった?!時の櫂の視点からでも切ない作品だと思いました。
序盤のエッチがかなり長めに続いて、まだちゃんとお話に入り込んでない状態だったので「んん??」と思いながら読み進めて行きました。
13分毎に新しい櫂になる状態では家の外に飛び出して警察沙汰になっても仕方ないことなのかなと思いつつ、自分や自分の周りの人がこうだったらと、我に返ってしまう部分でもありました。
櫂が妹の事をお母さんと間違ってしまうシーンも「妹よ・・・」と涙しました。
一番泣けた所は中盤あたりの先生だった頃の櫂の人格??(一瞬これは二重人格ものも含んでいる作品かなという気もしました)とツダの花火のシーンです。
本当にいやになったら面倒をみなくていいと言う櫂にツダが思った気持ちを思うと今思い出しても涙が出そうです。
何度もツダがハウスキーパーと言う度に苦しかったです。
終盤はこの流れがあったので会話でウルウルする所が何箇所もありましたが旅館?でのエッチはすっとばしました。すいません!!!!!
個人的に「泣ける作品」での最後はエッチという作品の流れがあまりなのです。
でもその後の櫂の心情はまた泣けました。
読み終えたあと、続きが読みたいと思いましたが、きっと同じような1日を永遠と繰り返していくのかなと思うと、これはこれで終わりでいいのかなとも思いました。
という訳で、「中立」だからいまいちだった、という意味ではないです。正直言って何を選べば適当なのかが判りません。あえて点をつけるとすれば「評価無し」、でしょうか。
粗筋や他の方々のレビューで辛いお話だと解ってはいましたが、それでも本当に辛かったです。読むんじゃなかったと思う気持ちもあります。どんなに悲しいお話でも、(創作だし)と割り切って気持ちを切り替えることが普通は出来るのですが、今回の題材は実際にこういう困難があること、また、自分や自分の大切な人達がいつそうなってもおかしくないと判っているからこそ、なかなか割り切れない大きな悲しみを感じました。
皆様書かれていらっしゃいますように、記憶力に深刻なハンデを負った櫂の視点でお話が進むため読み手には状況が断片的にしか伝わらず、欠けたパーツをツダや櫂の妹、近所の人達の言動や態度から繋ぎ合わせ、類推していくようなお話です。2、3回読み直して細かい伏線や時系列、人間関係等は把握しましたが、どうしてこうなったのか、どんな状況で事故は起きたのか、櫂の生業は何だったのか、ツダの足の小指の欠損の理由等々、肝心な事柄はほとんど霞に包まれたまま終わります。いち読者としては不満にも思いますが、櫂の視点ですので流れとしてはごく自然だとも思わざるを得ません。唯一何もかもを知っている、読者にそれを詳しく教えることが出来るツダにしても、事のあらましを櫂に全て語ったところでどうにもならないというやるせなさを抱えている気もする。だからほとんど語られないのかもしれない、そんな風に思いました。また、櫂の視点だからこそ、13分間の記憶がリセットされる度に彼の感じる戸惑いや不安、混乱、狼狽の様子がひしひしと伝わっても来ました。短い十数分の中でほんわりと根付きつつある「この人を忘れたくない」という深い祈りの様な切ない想い、でも確かにそう願っていたことを数分後にはまた忘れてしまう―これ程残酷な事があるかなと思うと泣けてきます。
ただ、それ以上にしんどいのはやはりツダでしょうね……。想像を絶する苦しみだと思いました。櫂を混乱させないために彼の利かせる咄嗟の機転、それは二人の実情とはかけ離れた「設定」の数々なのですが、一体ツダは幾つこんな風な台詞を準備して櫂を守って来たんだろうかと思うとやるせなくて仕方ありません。どんな思いでそれを口にしているのかと思うと……。深い想い、献身や愛情、根底は勿論それなんでしょうけれど、自分が壊れないままにそれを実践していくのはきっととても難しい。もし自分がツダだったらどうするだろう、涙を見せずにあんな風に出来るだろうか、生きていてくれさえすればいい、数分のことだとしてもその時だけは自分を見てくれればそれでいい、そんな風に思えるようになるだろうかと考えさせられます。ほんの時たまに訪れるらしい、回路がきちんと繋がった状態の櫂との邂逅、それもまた読んでいてやるせなく、その時だけはそれぞれの口調も(おそらく)昔に戻り、互いが本当に繋がっている会話をするのも、愁いなく幸せだった頃の過去の二人を想起させて、かえって寂しい気持ちになりました。どうにかしてここで時を止めてあげられたら……と思わずにはいられません。
よく、無償の愛とか見返りを求めない愛とか言いますが、まさにそんな愛の物語でした。一生懸命自分を納得させて、そう思い込むだけでなく本当にそう思って、櫂のために尽くしたい、前向きに頑張りたいと思っている。でもやっぱり時には辛くて哀しくて仕方なくて、失ったものへの未練を抑えることが出来ない、そんなツダの切ない想いに一緒に泣きました。
泣けるBL小説を探していてお勧めしていただいた本です。
13分しか記憶を持続出来ずどうやってストーリーは進むのだろうかと考えながら読み始めました。
?マークいっぱいでどういう事?だったはずなのに伏線が回収されるとなんて深い話なのだろうと、
そしてまたもう一度始めから読み直ししました。
この本は2回読む事でまた違った感情で読むことが出来ます。
進化ではなく後退してしまう記憶は本人しか分からずどれだけ体力気力が必要なのか。
覚えていたいはずなのに忘れてしまう。
正解か不正解かも分からずに進んでしまう現実。
反対に忘れられても思い続ける気持ち。
したい事も出来ないもどかしさ。
それを承知で愛すると決めた人達。
これが愛するということなのかと思いました。
世の中にはいろいろな形の愛がありこんな人達だっているんだよと少しでも分かる一冊ではないかとおもいます。
面白そうな設定とタイトルに惹かれて読みました。
櫂は記憶の保持ができません。記憶がないことで時間軸もおかしくて、時間感覚は記憶によって裏打ちされてるんだ、なんてことを思いました。
記憶力を失った櫂の生活はゆっくりと進む逆行性健忘のおかげで、普通の人とは逆の時間の中を生きているかのようで、まるで映画「ベンジャミンバトン」みたいだと思いました。
出口も終わりもない毎日を支えているのは、しまいこまれて取り出せなくなった愛の記憶と想いだけ。その上にも日々さらさらと見えなくなっていく記憶が雪のように降り積もり、真っ白な記憶の雪原に立つ櫂とそこにたたずむ木のような津田。
どこまでも淡々と静かで、音のない声で「愛している」と響いているおとぎ話のようなお話でした。
初めて読む作家さんでした。イラストを描かれている深井結己さんが大好きで手に入れた本でした。100ページ過ぎまで、エロチックなシーンに嫌悪を覚えていつまで続くのかと読むのをやめようかと思いましたが、そのあとからどんどんと展開される話に夢中になり200ページあたりではじんじんと涙がにじんできました。
読み終えて、どうしようもなく辛くて、1ページ目から読み直しました。もう、涙があふれてとまりませんでした。「せつない」とかではなく、とにかく哀しい。この悲しさはなんだろうと頭を巡らせてみると、リアルな恋が壊れたときの痛さと似ています。せつない物語に感動して涙した後は爽快にさえ感じますが、恋情が砕けたときはしばらく苦しくてどうしようもない・・・その辛さに近いものを感じます。
似たような記憶障害を道具立てとした、ずいぶん前に観た映画「メメント」は患者自身をメインに進むことでスリリングな話でした。この小説はエロチックにコミカルにシリアスに・・・と様々なスタイルで渡瀬櫂の視点で展開してゆきます。それに合わせて櫂の恋人はその場を繕うようにでまかせで櫂を安心させようとする。まるで、櫂が失った記憶という遺跡に積もる塵のようなでまかせが降り積もってゆく。
登場人物の詳しい設定については、読者の好奇心を引き付ける小道具を並べておきながら生殺しのように説明を怠り、それでいて不自然なく進行させていく小説としての力には驚かされます。
酷さというだけなら、深井結己さんのマンガでもっと酷いお話もありますが、この小説は悲惨な設定を使わずに悲しみを際立たせている点で、とても読後感が悪い。この悲しさに弱い方は何度読んでも泣かされると思います。
これね、迷わず神評価つけるし、ずっと大事にとっておくけど、
人におすすめは、なかなかできない。
神評価か、低評価のどっちかに割れているのもよくわかります。
読むのにあまりにもエネルギーを消費したので、私自身、二度と読めないかもしれない。
けれど2年前に1度読んだきりのこの小説の、ほとんどすべての場面を覚えているんです。
1つ1つの場面が私の中であまりにも鮮烈で、鮮やかな映像の断片として頭をよぎっていく。
読んでいる最中も、すべての場面がくっきりと鮮やかな映像で見えていました。
BLに限らず本はたくさん読む方ですが、
こんなにも強烈に記憶に残ってしまう小説は滅多に出会えません。
記憶が鮮やかすぎて、なかなか2度目が読めないのかもしれない。
基本的には「途中苦しくても最後は気持ちよく笑ってハッピーエンド!」な本が好きなんです。
でもこの本だけはちょっと、別枠。大事に持っておきたい。
*** 以下ネタバレ要注意 ***
色々と無理のあるところも大いにあるし(櫂の人物像がハイパーすぎとか)、
そもそも記憶障害の櫂の視点でずっと描かれているので、
説明無く次々と状況が流れていって「???」な部分はたくさんあるのです。
読者の解釈にまかされている部分がものすごく多い。
だけど読み始め数ページからぐいっと物語に引き込まれてしまって、
13分を繰り返し、繰り返し、短く鮮やかなシーンが次々に現れる。
混乱して、困惑して、未来も過去も見えない不安定さに脅えて、
頭の中のハテナをどうにかやっつけようと必死にもがきながら、
溺れるように時間の濁流に流されて、そしてまた次の13分。
読み手の「???」はそのまま櫂のハテナ。
そんな風に読む内に、完全に櫂にシンクロしてしまっていました。
櫂にシンクロしているから読みながら本当にしんどかった。
櫂と一緒に常に全力疾走しているようなしんどさ。
しんどいけど早く未来を知りたくて、何かに追われるように必死で読み進めてしまう。そんな感じ。
「あいつは13分ごとに試験を受けているようなものだ」
というツダさんの台詞があまりにも的確。
ツダさんの行動は時には無理があるように、時には非道にも見えるけれど、
彼は医者でも保護者でもなく、献身的であろうとはしていても、決して完璧ではいられない。
記憶障害の恋人と一緒に暮らす以上、彼の精神は常に揺らぎ続けるし、
道理に合わないことをたくさんしてしまう。
それは多分、櫂の保護者や介護人ではなく、恋人でありたいと願っているから。
ならば何故一緒に暮らすのか。
一緒にいることで時に櫂を混乱させ傷つけるなら、離れるべきではないのか。
ツダさん自身や家族が長い間抱えてきたであろうその葛藤は、
櫂が外へ逃げた辺りの描写に痛切に現れていて、読んでいてすごく苦しかった。
そして長い、長い、ほんとうに長い一日をようやく終えて、
放心しながら、脱力しながら、震えそうな手で本を閉じて、
ふと目に飛び込んでくるタイトル。
明日も愛してる。
うわあああああん、って、声をあげて泣きました。
今思い返しても背中がざわっとする、あの気持ちはちょっと、言葉にならない。
事故が原因で前向性健忘という記憶障害を負った渡瀬櫂は13分しか記憶をとどめておけない。
そんな櫂のハウスキーパー、実際は恋人らしい津田悠児。
記憶を持たない櫂が次から次へと現れてくるせいで時間の流れがさっぱりわかりません。
どうやら色々あったわりには、たった1日の物語だったようです。
事故に遭う前の櫂や悠児のことはすべて曖昧だし、記憶がない櫂になしくずしに身体の関係を迫る悠児がすごく不自然。
重いテーマ、手書き文字、新しい試みはあるけれど小説としての完成度には不満が残ります。
13分後に何が残る?
喪失をモチーフに据えた作品は残された者が『どんな風に思い続け、忘れ、新しいステップを踏み出すか』という軌跡を辿ることが多いけれど、この作品には、それがありません。
なぜなら13分おきに区切りが用意されているから。
事故による障害で13分しか記憶を持続できない櫂。
覚えていたいこと、大切なことを書きとめておかないと【まっさらな自分】になってしまう。
記憶や思い出に寄り添えない櫂は悲しみを繰り返し体現することもないかわりに根本的に救われることもありません。
野放しの想像力を重ね、【自分】を探します。
そんな白い記憶の混乱の中を泳ぐ櫂にハウスキーパーを名乗る悠児が寄り添います。
時にイメクラ、時に亡き母の知り合いに姿を変えて。
でも、どれほど尽くされていても記憶(記録)の再確認を怠ると白紙になってしまう櫂は【身に覚えのない】持て余すほどの優しさで包もうとする悠児に戸惑ってしまいます。
それでも悠児は常に櫂を見つめています。
自分を忘れてしまう櫂にゆらぎながらも。
ふたりとも孤独。
それでも、、
13分の【そのあと】に残るかもしれない笑顔、見ることのできなかった表情も、続けられなかった会話も拾いながら悠児は櫂を愛しています。
事故以前のふたりのことが詳らかにはされてませんが(随所に匂わされてますが)悠児…どれだけ櫂のこと大好きなの?って感じです。
…特効薬の存在もなければ病の回復等、劇的な展開はありません。
あやふやな13分後も可能性のひとつ、と捉える悠児のしなやかな愛情が染みいります。
作中に描かれない部分にも2人の毎日は続きます。
嘘すら入り込めない短い13分に【ふたりの日々】は存在しているのです。
切なくも幸せな日々が。
うまく伝わらないかもしれないけど、暗い話ではないのです←今更。
まっさらゆえの櫂の屈託のない明るさに救われたのかな…。
評価が高かったのでずっと気になっている作品でした。
読んでみるとやはり、かなり重くて切ない。
究極の愛を見せつけられているのにやり切れません。
櫂視点のため、全く過去の事を描かれないところがいいです。
どんな事故にあって記憶をなくしたのか
若い頃は割と苦労していて、性格も純朴な青年であったのに、大人になったらうんちくを持って先生風をふかす理性的な人になってる。どうして真逆な性格になっているのか謎のまま。
今では学生のころには考えられないくらい家が裕福になってるけど、当時櫂は自分がどんな仕事をしていたのかさえわからない。
足の小指がなくなってる。
徹底して過去を描かないのは、13分しか記憶が保てない櫂にとって現状だけがすべてという事なのかもしれません。
そんな櫂を愛するツダにとっても今現在だけがすべてなため、櫂に過去の事を聞かれても適当に流しているのかもしれません。
ツダ視点があったらきっといろいろ分かるのでしょうが、憎い事にツダ視点はなし。
本当にあくまで櫂との一日を描いているだけなんです。
きっとツダはこれから先もずっと毎日違う櫂と出会って恋をしての繰り返しなんでしょうね。
ツダが櫂を見捨てる姿なんて想像できませんから。
13分しか記憶が保てない自分でいいのかという櫂の問いに、あなたでなくちゃだめなんだというツダの返事を聞いたらそうとしか思えない。
毎日苦しみながらも、それでも楽しむことを忘れずにツダは櫂とずっと一緒に居続けると思います。
いやほんといい意味で胸に棘が刺さったまま終わってしまうような苦しみを残してくれました。
純粋に面白かったです。
目が潰れるくらい泣いた切なすぎる愛。津田って本当にいい男、神様が意地悪過ぎと思います。付き合って九年になって、その半分以上はずっと知らない人扱いされた、よく気が狂わなかった(T_T)櫂に合わせて色んなストーリーを作り出したから、櫂を愛してること以外はどれが現実かどれが作り話か訳分からなくならないかしら?神にすべく作品ですが、実はこういう救いのない終わりのない話は苦手(;_;)ツラすぎるから
事故による記憶障害で13分しか記憶がもたない櫂と自称ハウスキーパー・ツダの2人の物語。
普段は1冊一気に読んでしまう私ですが、じっくりじっくり読ませていただきました。読み終えて、余韻に浸っていました。とにかく、ぐっと物語に引き込まれる。
ここまで、深く難しい作品は初めてかもしれないです。忘れてしまう櫂、忘れられてしまうツダ。どちらも見てて苦しくなりますが、半分まで読んでみると断然ツダの方が見てて可哀想で、苦しかった。
櫂が朝起きたら「まじめまして。」という自己紹介から始まる1日。既に切ないですよね。記憶がなくなっていくから、ここが何処かも、目の前の相手がだれかもわからない。そんな状況で時々櫂は暴れてしまいますが、それを精神的に長年支えるツダはホントにすごいと思う。最初は気付かなかったけど、読み進めるうちに改めて強く実感しました。
どんなことが起きても、愛する人と一緒だったら幸せって感じられたら最高なんじゃないかな。そう思いずっと櫂と一緒にいるツダは何度も言いますがすごい。耐えられないですよ。まさに究極の愛です!
長く長くそして濃い櫂の1日の終わりにツダが言った、
「…おやすみ、櫂。また明日な…。」
がやはり一番印象に残りました。
王道のBL小説に飽き飽きしてるあなた。
とても切ないラブストーリを覗いてみませんか?
この一冊には心を動かす何かが詰まってます。
人目がないところで読むのをお勧めします。絶対涙がでますから。
本が終わっても謎な部分はたくさん残ってるけど。
とてもほろ苦い暖かさが心に残ります。
ぜひ、ぜひ読んでみてください!
やっと読み終わった・・・。別に面白くなかったっていうわけではないです。むしろその逆なんですが、なんだろう。苦しい。他の方も書かれているんですが、まさに「究極の愛」という表現がしっくりくるかと。愛にレベルがあるわけではないんですけど、この状況の中でっていうのでこう、ずっしっとくるんですよね。
で、泣かずにはいられなかったです。
この人はずっとこうして一緒にいるのか。
考えさせられます。
幸せとか、不幸とか、他者が決めることじゃないけど、どこに希望を見出しているんだろうって。
愛してるからずっと一緒にいる。
なんか複雑とういか鬱屈な気分になります。
13分しか記憶がもたなくて、でも治ることはない。むしろ悪化する。
でも、どうせ忘れてしまうなら13分でも5分でも同じか・・・・。と思ってしまいました。
でも、一ヶ月後も、一週間後も、明日も、愛で乗り切っているんですよね。
いや、乗り切っているってのはおかしいか。
なんだか「究極の愛の形を見た」という破壊力があるのに、全然幸せなエンディングな気がしなくて、けれどこれ以外のエンディングはないんだってことも分かってるんです。
津田は苦しいだろうなぁ、って思うのは、きっと私の勝手で、津田は幸せなのかもしれないけど、見ているほうはやっぱり苦しいです。
13分しか記憶が持続しない主人公の一人称という、「え?それで展開できるの?」な導入に、ビックリしました。
あらすじなどもまったく見ないで読み始めたので、読み始めてすぐに「あんた誰?」的な疑問や不安にぶち当たり、告げられた言葉や突きつけられた事実への戸惑いも、櫂と一緒に体感しました。
そんな感じで最初は櫂に感情移入しながら読むんですが、当然ですが私は13分過ぎても記憶はちゃんとあるから、何度も同じ場面を繰り返すたびに苦しくなってきました。
律儀にはじめましての挨拶をするたび、津田はどんなことを思ってるんだろう。
知らない人だと言われるたびに、怖がられるたびに、どれほど寂しい思いをしているだろう。
櫂目線だから、当然描かれません。
想像するしかないから、ちょっとでも津田が報われればいいな、報われないかな…と、私は必死で、津田の愛情を見守っていたような気がします。
上手いなぁ……。
というのが、正直な感想です。
こんな設定を、よく書ききってくださったと思います。
津田目線だったら、全然違う後味のお話になったはずで、それだと私の中では「普通の感動的なBL」だったと思います。
櫂はなんでこんなにお金持ちなのかな?とか、なにがどうなってこんな暮らしをすることになったのかな?とか、そのほかにも、何気にいろいろと謎はばら撒かれているんですが、このお話に関しては、謎が謎のままだからこの後味があるんだと思います。
逆にこの謎たちが綺麗に解決するような説明があったとすれば、そんなあらすじのような事実確認を津田と櫂が毎日してるってことで、途端に「日常」ではなくなる気がするんです。
特別なことがある日もあれば、ない日もある。
そんな「日常」の中のほんの「1日」のお話だからこそ、「こんな切なさが特別じゃないだなんて!」っていう苦しい読後感に繋がるんだと思います。
どんなに願っても、奇跡は起きないんですよね。
だけど、一瞬昔のように戻ったり、何度も同じ人と恋に落ちたり、そういうことこそを「奇跡」だと思える強さが、本当に愛おしかったです。
惜しいと言えば…、ちょっと暴君風味のエロは要らなかったかな。
あれがなければ間違いなく「神」でした。
正直、この方の前の2作を読んだとき「あ~この文章合わないかも・・・」と思い、長らくこの本は寝かせていたのですが、全く良い方向に裏切られました。以前感じた読みづらさは今回完全1人称になったことで安定し、それでも時々不安定に感じる部分も、この設定ならではの不安感とうまくはまっていました。
なにより構成がうまい!にくい!
事故の後遺症で13分しか記憶が持たない主人公、櫂と、ハウスキーパー(と名乗っている)津田の長い長い1日の話です。
そうなんですよね~、これ1日の出来事のお話なんですよね。あとがき読んでハッと気付きました。濃厚でした。
濡れ場も執拗にエロです。でもこのエロは必要エロだと思いました。
ソレの後に起こる、些細な出来事が倍返しで涙腺を揺さぶります!
いろいろ謎があり、そして解明されないまま終わるのですが、それもとても良かった。最後に津田目線にならなくて本当に良かった。
実は一番泣けたところは現在の妹との携帯電話でのやり取りシーンでした。
母親と間違えるなんて・・・!
そんなところまで、ニクイ構成でした。
これほど考えさせられる作品はないかもしれません。 悲恋?? ハッピーエンド?? 受け取る側次第の作品です。同性愛うんぬんという枠ではなく本当に人を想う・愛するという事をリアルに考えさせられました。 自分だったら、どうするだろう・・とか ここまで一人の人を愛してあげれるのだろうか・・とか ほんとうに自問自答しながら読み終えました。 自分の中で大好きな作家さん、自分好みの好きなストーリーを書いてくれるお気に入りの作家さんがいるにもかかわらず この作品オススメするかな!
でも、小説初心者はやめといた方がいいかな・・・読み終わって、受け取り側次第のENDなので、よんだーーー!!っていう爽快感とか よかったーーーHappy Endでvv(^^)なんて終わりではないので ちょっと疲れるかも。 たくさん読んだけど、まだ読んで無い方 是非 是非 必読です!
5年前に事故に遭い、前向性健忘という障害を負った櫂。
18歳のつもりで目覚めたのに、自分が32歳だと知ったときの驚き、13分しか記憶がもたず、次々に忘れていく切なさが、読んでいて辛かったです。
同じテーマを扱った本では「博士の愛した数式」(小川 洋子)も読みましたが、こちらは家政婦さん視点で描かれてました。
「明日も愛してる」は本人視点で、それだけにショックも悲しみもダイレクトに伝わってきました。
常に側にいて櫂を支える悠児の切なさも。
忘れてしまうからそのたびに「初めまして」からやり直す悠児は、それでもなかなか前向きだと思えました。
切ないけどよかったです。
この作者さん、初めて読みましたが、よかったので他のも読んでみたいと思ったのですが……。
97年に1冊目が出て、11年でこの本がまだ5冊目!?
しかもそのうち1冊はノベルズが文庫で出し直されたもので、実質4冊目。
しかも全部絶版で、古本でしか買えないとは。
でも既刊はどれもタイトルを見た限りでは、今回の小説とはずいぶん趣が違うようですね。
これから新作を書いてくれることを期待しますが、かなり寡作な作家さんのようなので心配です。
昨年読んだ中で一番衝撃を受けた作品です。
忘れられ続ける津田が切ない。
病気の当事者である櫂の方は、結構平気に生きてますね。
悩みも何もかも忘れてしまうのだから。
記憶は戻るどころか、失われていく一方。
希望がない。
とても哀しくなるお話です。
でも「悠児は忘れる俺も、結構楽しんでるんだ」というセリフで救われました。
結局はらぶらぶバカップルな二人なんですね。
個人的にはあんなにエロいらんです。
あと謎が多い。
伏線回収してくれ~。
たった1日の出来事なのに、すごく濃密な1日。こんな日常を繰り返す2人。どんなに大変だろうと思わずにはいられません。
それでも櫂が「俺でいいの?」と津田に聞き、「おまえでないと、だめなんだよ」と津田が優しく語るラストシーン。この二人には、これ以上ないハッピーエンドなのかもしれませんね。
とはいうものの、エロはあってもラブが少々不足気味なのが、仕方がないこととはいえ残念でした
記憶が定かでない櫂視点なだけに、正直わからないことの方が多くて。結局最後までわからないことだらけ。
たとえば、結構ゆとりある暮らしをしているんですよ、この二人。部屋にラグが飾ってあって、それは櫂が織ったものだと津田は言うんですが、櫂っていったい何を生業にしてるんだ?とか。
津田と櫂との馴れ初めとか。9年前から同居しているらしいから、事故に合ったのは恋人同士になってからだし。
あと最大のナゾが、津田の足の指。小指がないって、絶対事故と関係してますよねぇ? でも、櫂がそのことに気が付く描写があるだけで、それ以後は一切触れられていない。
他愛もないことだと言えばそうなのかもしれませんが、いやいや、私のお腹の中はモヤモヤでいっぱい……。
このモヤモヤが晴れる日は来るのかなぁ?
読み終えて、複雑な思いで胸がいっぱいです。
この話はまるでシャボン玉の色みたいに、見る角度によってどんな風にも受け止められると感じました。
不幸にも幸せにも思える、津田と櫂のふたりだけに与えられた空間がそここに散りばめられています。
私は読んでいて、混乱してしまう櫂には早くアラームが鳴ればいいのにと思わず願ってしまったり幸せそうにしている二人のシーンでは鳴ったアラームが悲しくて悔しくて…。
それでも、夜には優しくおだやかに「また明日」と言う津田のセリフが本当に泣けました。「また明日」というセリフがこんなに愛と覚悟の詰まったものとして胸に響くなんて。この作品を読んで、いろいろ考えさせられました。
私は櫂と同じ障害を持ったひとと学校でクラスメイトとして肩を並べたことがあります。
そのひとも事故が原因でした。櫂のように13分ではなかったのですが、やはり一定の時間で記憶は無くなってしまうというものでした。
いつでも手帳を首から下げていて、メモ帳も必ずポケットに入れていて…。この話を読んでそのひとの姿が何度も思い出されました。
そのひとには夢があって、その夢を諦めない姿はとても美しく私の記憶には残っています。
そのひとの姿を見ているからこそ、津田と櫂はきっと大丈夫だと思いました。
だれかの幸せを願わずにはおれない素敵なお話です。
前向性健忘という記憶障害によって、13分しか記憶がもたない男と、そんな彼をずっと面倒みている男の話。
長い長い一日が、一冊になってます。
読み終えた最初の感想は、『ウマイ…』でした。
こんな難しい設定の話を、最後まで一人称で書き抜いたのがスゴイと思う。
泣けなかったのは、頼まれてたまにやってる介護ボランティアのことを思い出しつつ読んでしまったからで。長く続く介護が愛を疲弊させていくリアルを思い出して、軽い鬱な気分になったというか…。センチメンタル気分で泣くより、現場の閉塞感を思い出して、胸が詰まりました。
実際はこんな美しい愛はないと思う。
一日なら耐えられる。一ヶ月でも耐えられるかも。でも何年も何年も続くとなると、私なら耐えられないと思う。不思議なことに、愛する人よりも、赤の他人のほうが、逆に耐えられるんだ。割りきれるし。
そういう小難しいことを考えてしまった一冊でした。
美しいお話だと思います。
皮肉じゃなく、愛のファンタジーとして、素敵な物語だ思いました。
すごく内容の濃いストーリーだなぁ、と思いました。
一言では「感動した!」なのですが、ちょっと複雑な気分です。
13分しか持続しない記憶、そんな障害を持つ櫂。
その櫂の世話をする、自称ハウスキーパー・ツダ。
二人は恋人同士だったのだが、櫂にその記憶はない。
ツダも時と場合によって、恋人だった事を思い出させたり、そうでなかったり。
とにかく13分というリミッター付きなので、14分目には持続している行為をインプットしていかなくてはならない。
櫂は時間進行とともに過去を忘れていくので、ツダは忘れないようにどんどん情報を提供し続けるので、その努力が痛々しい。
しかしツダはそんな櫂と長く付き合っていく最良の方法として、その場その時で違う自分を役者のように演じるのです。
ずーっと続けていく情報の提供、それが過去の自分に縛られる事なく自由奔放にステージを変えて、役者の様にお互いをまったく違った人物に仕立てて記憶が消えるまで様々に時を楽しんでいるのです。
ツダは不幸のように思えますが、決してそうは見えません。
櫂が記憶を忘れるたび、毎回違う場面で櫂に恋をする男として生きているので、むしろ幸せそうです。
ここが、きゅん…とくるところなんですが、現実に13分の壁を考えると読者としては複雑な気持ちになります。
ツダにとっての幸せが、こういう形でずっと続いていくのかと思うと、少し悲しくもなりました。
いろいろと、考えてしまう作品でしたね。
あとがきに「長い長い、一日が終わりました」とあります。
まさにその通り。「また明日」と言うまでの、津田と櫂のほんとに長い長い一日を綴った、甘くて苦しい愛のお話なのです。
まずは主人公櫂の特殊な事情。
読者は櫂と一緒に唐突に主人公が事故が原因で「前向性健忘症」だと知らされます。
蓄積できないたった13分の記憶、おまけに事故以前の過去も遡って忘れていくという逆行性の記憶障害も併発している。
13分しか記憶を保てない主人公の視点でちゃんと話として成り立つんだろうかと心配になったのですが、いらん杞憂でした。
そして読み進めて感じたのは、構成の素晴らしさ。
例えば、前後に2つのエッチシーンがあるのですが、状況把握した段階でいきなりのセックスに面喰らいました。
でも最初にふたりは恋人なのだと読者に知らせることで、この後、櫂が記憶をリセットする度に小さな嘘を重ねる津田の言動のせつなさがぐっと増すのです。
それから、記憶が途切れる度にどんどん出てくる櫂の魅力。
子供のようにはしゃぐ素直さや、少ない情報の中で算段を考える利口さ、妹を心底大事にする情の深さ、悲観的にならない芯の強さ、ちょこちょこのぞくおかしみのある脳内ツッコミ。
ああなるほど、こんな風に色んな顔を見せられる度に、津田は櫂に目がくらむんだなあと納得です。
特に、津田が「アナタ」と呼んだ本来の櫂が登場する13分間の挿入タイミングには、唸ってしまった。それにしても、聡明で何て思慮深い人柄なんだろう。
「アナタ」と津田の儚い会話に、ボロボロと涙がでてしまいました。
そして布団の中で交わす魔法の話。
どんな魔法かは、ここまでのふたりを読み辿ってきた人だけが理解できるのです。
全編通してまるっきり櫂の視点なので、ともすれば櫂の話という印象なのですが、読み終えて残るのは津田という男の、とてつもない愛情でした。
櫂というフィルターを通して、津田を書いた。そんな風に感じました。
ふたりの関係に羨ましくも感じ、同時にどうしようもなくやりきれなく思うのは私の勝手なのでしょう。
作中で津田がこう言っています。
――『俺がどんな思いであなたと過ごしてきたか知らないくせに、勝手にひとりで悟ったふりをしないでくれ』
そしてこう続くのだと思います。
『明日も愛してる』
こんなに悲しいBLを久々に読んだ。
主人公・櫂は17歳で交通事故に会い、目覚めたら35歳になっていた。彼は記憶障害を患い、13分間しか物事を記憶しておくことが出来ません。
――そう、この人は、愛しい人の記憶を、13分間しか覚えていられないのである。
13分でリセットされる恋愛という難しい物語を、安芸先生、よくぞ描いてくれました。こんな悲しい話があるだろうか。櫂の持つ、11分置きに鳴る腕時計が残酷に時を告げる度に、彼らは別れを繰り返すのである。
読む前に、そんな話が成立するのだろうかと相当不安に思ったのですが、安芸先生の深い感情描写が素晴らしく、全く無理無く読むことが出来ました。
13分置きに笑いながら「はじめまして」と自己紹介を繰り返すツダと、13分置きに手元に置いてある、身の上を知る為のファイルを読んで嘆き悲しむ櫂が痛々しい。
幾度も13分前と13分後を繰り返し、読んでるこちらも頭が錯乱してきますが、この本は櫂のたった1日を描いた作品。つまり、1分1秒が常に新鮮な櫂にとって1日がどれほど長いかが分かります。
ツダ曰わく、櫂が忘れてしまうことに対して「あなたは今のあなたでいるために、十一分おきに絶対落とせない小テストを受けているようなものなんじゃないか」と言う。それ程、私達の想像を絶する世界の中に櫂は生きている。
しかし読了後、きっと『13分間の恋愛なんて悲しすぎる』、という考えは変わっている筈です。
題で書いたように、私達は外野。彼らの世界に触れた時、きっと何かが違ってみえる。
最後に言ったツダの言葉が、悲しい筈なのに、こんなに幸せに聞こえるなんて…。
大変お勧めです。
う~ん、とてもしんどい話でした。
シリアス好きの私が読むのも大変だった感じです。
重い話と言うことが一番ですが、でもそんなに文面は暗い感じはしませんでした。
むしろ、同じことを繰り返す受けの様子をこちらも繰り返し読んで繰り返すのが苦痛になってしまって……
やはりこの手の題材を扱うには、大変な文章力と、引きつけるだけの組み立てが綿密に必要だな……と勉強させて貰いました。
あとはこの攻めの忍耐力にただただ脱帽です。
一番苦しいのはこの人だろうから。
これだけ愛された受けは実はとても幸せなのかも知れない。
自分がすべて忘れてしまっても……それでも愛してくれる人はいるかしら?
自分が忘れられても……愛し続ける勇気はあるかしら?と自分に問いかけた作品です。
事故の後遺症で13分しか記憶が保てない櫂。
櫂を献身的に世話をするハウスキーパーツダ。
そんなあらすじを読んで「辛くて痛くて重い話」だと思い、
覚悟をして読んだのですが。読後感は非常に爽やか。
じんわりと胸が温かくなりました。
13分で記憶をリセットしてしまう櫂視点で語られるお話なので。
ツダと櫂がどういった経緯で結びつき、一緒に暮らすようになったのか。
櫂の唯一の肉親は、ツダと櫂の関係をどこまで知っているのか。
記憶障害の後遺症が残るほどの事故とはなにか。
それにツダは関係しているのか?
とにかく何も判りません。
毎日、混乱し不安に揺れる櫂に、ツダは色んな話を聞かせますが。
それもどこまでが真実なのかも定かではないのです。
しかしそんな訳のわからない状態でも、ただひとつ。
ツダが深く櫂を愛していることは、ハッキリと読者に伝わってきます。
13分で自分を忘れる恋人に、毎日「愛している」と伝えるツダ。
一日に何度も「初めて」会う男に、恋に落ちる櫂。
櫂は記憶を失っても、何度でもツダを愛します。
彼はもう本能で、ツダを愛するんですね。
これは凄いラブストーリーだ!と思いました。
二人の置かれている状況は決して楽しいものではないです。
ツダも櫂も苦悩しています。
しかし相手に出会わなければ良かったと、後悔しない強い愛情が、
この物語を暗くしないでいるのだと思いました。