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fake diamond
「この身体に、蔭(かげ)りを教えてくれ──」
ハードカバーということもあり少し躊躇ったものの、そんな帯の言葉に惹かれて読んでみました。
流されるままモデルから俳優の道へ進んだ真琴。
自分に自信がなく、挑戦する強さも持ち合わせていない彼は強引にある映画のオーディションを受けることとなった。
目当ては端役。だったはずなのに、なんの因果が横柄な男に出会ったおかげで準主役という大役を掴んでしまう。
押しつぶされそうなプレッシャー。
期待に応えなくては、そう思うのにできない自分を歯がゆく思う。
自分に足りないものを求めるために、真琴は郁馬に懇願する。
俺を、抱いてくれ、と──。
役のため、と躍起になっていく真琴と、映画のため、と言い切られ深みにはまっていく郁馬のやりとりが刹那的でだけど時々甘くて、もう夢中で読みました。
二人とも見えない相手の気持ちに焦れ、意地になり、雁字搦めになっていきます。
郁馬サイドの心理は語られることはないのですが、それでも郁馬が真琴に惹かれているであろう情景が織り込まれているので、焦れったくもあり安堵する部分もあり…非常に楽しかったです。
俺様で年下なのに不遜な態度、だけど時々純情でかわいい一面を見せる、という年下攻めにどうも弱いので、この郁馬はかなりツボでした。
真琴に惹かれながらも、真琴は自分に心を求めていないことを知り、傷つき、でも臆面には出さずにただ悪ぶっている姿がなんともかっこいいというかいじらしいというか。
一方真琴は最初はただ流される今時のイケメンなんですが、郁馬と出会いそそて役にのめり込むことで本来隠されていた芯の部分が表面化し、魅力が増していきます。
郁馬のことで悩み、ぐるぐると同じ位置で立ち止まり、その感情がなんなのか気づかずにいる鈍感さ。
映画のため、郁馬に言うというよりもと自分に言い聞かせるように繰り返し告げる真琴がなんだか痛々しくて、早く気づこうよーと何度思ったか。
土壇場でやっと気づく姿に呆れはするものの、ようやく通じ合った二人に感無量でした。
想いが通じ合っておしまい、だったので、ようやく恋人同士になった二人のその後を覗いてみたいです。
ハードカバーで読み応えガッツリな本。
でも私には、文章のリズムが相性良いのか、サクサクと読みやすかった。
お話は、映画のオーディションから始まって、映画の完成までと、後日談の短編。
映画の設定上、着物での生活に慣れるため,真琴は郁馬の実家である料亭旅館に無理やり連れてこられて、毎日着物で過ごすように命令される。
撮影が始まり、真琴の出番となるが、真琴には、陰りや憂いが足りないといわれ、それを手に入れるには、、、、
本編は、主人公真琴が、「映画のため」の言葉に縛られて、愛の存在を否定しつつ郁馬との肉欲に溺れて苦悩するお話。
痛い系ドロドロセックス描写が、かなりたっぷり。
でも、最後はちゃんと思いが通じあい、ハッピーエンドになる、愛のあるお話。
おまけの短編は、真琴が郁馬への愛を認めて、余裕で年下の郁馬をかまう、甘甘話。