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ノブのシンクロ体質がだんだんクセになってきた。彼は自己評価がものすごく低い人。バイリンガルでツアーガイドの仕事ぶりも同僚・上司からとても信頼されてるのにな。やはりモラトリアムで人生をまだ決定したくないというか責任を背負いすぎたくないとかそんなんかしら。まだ25歳だもんね。
ラストではまたシドニーに何も言わず置き手紙だけで日本に一時帰国してしまうノブ。シドニーが不憫だなあ。次巻はどうなる?日本編にはいるのかな?
硝子の街にての第6巻。
伸行の勤める会社が敢行するNYツアーの客が指名手配犯らしき男に連れられて行方不明になってしまう、という事件が発生します。
舞台はニューヨークですが、だいたいいつも日本人が事件にからんでいて、伸行の助けが重宝する設定になってるのがよく出来てるなあと思う。
毎回何かしら社会的な問題をおりまぜてくるお話ですが、今回はアメリカの移民法について書かれています。
たくさんの人種を受け入れてきたアメリカなのに、移民の受け入れが難くなっている。ビザの更新が厳しくなり、昨日まで住めていた人が住めなくなる、ビザ切れた時点で居るだけで犯罪者になってしまう。
なかなか内容がシビアに感じるときもありますが、伸行がいつもそんな問題から目を逸らせずに真剣に悩んでしまい、シドニーが言う「シンクロ状態」になってしまいます。
こういう主人公だから魅力的なんだろうなあと思う。
ちょっと伸行が鬱々しすぎでは?と思うときもあるけれど、それはシドニーがいつもうまく引っ張り上げてくれています。
伸行は自己嫌悪の固まりだと頻繁に書かれてるのですが、そんなに自分をおぼしめるのは何故?とも思います。
今のツアーコンダクターのお仕事も生活費のためにやってるだけ、将来なりたいものもわからない、そんな、ふらふらした自分に対する自己嫌悪が強くていつもシドニーに心配をかけます。
でも19歳のときに家族に置手紙を置いて1人ニューヨークに来て日本国籍を放棄する手続きをした伸行はとても志が弱いとは思えず…。
その時伸行が求めていたものは「アメリカのほうが自分らしく生きられる」という「自分らしさ」というものだったんじゃないかなあと思います。
今回は他にも「アイデンティティとは」というテーマがあります。
自分とは何か?他人とどう違うのか?
ツアーガイドの仕事も、本人は真面目でないと思っていても周りから信頼されているのが読んでいてわかるし、誰かの痛みにシンクロしてしまうという危なっかしいけど優しさの感じられる能力(?)は愛すべき主人公って感じです。だからね、もう少し自分に自身を持っていいんじゃないかと思うんですが。
今回はほとんど甘い掛け合いのようなものがなかったので少々物足りないのですが・・・事件が主体のお話自体は面白かったです。
この伸行の自分に対する悩み、シドニーに対する気持ちの決着は次回に持ち越しのようですが、最後のシドニーに別れを告げるシーンが、すごくせつなくてすごくよかったので星4で。
こんな終わり方だと早く続きをよまなきゃ…て気分になりますね。