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hotaru
1999/09発刊の古い作品、
あとがきに著者の体験が描かれていて、この作品の一番良作はあとがきだと思った。
自分のことをカミングアウトするって、他人から見たら小さなことでも
本人にとっては凄く重いことで、勇気が必要です。
でも書く事、いう事で超える事が出来る何かが有りますから 作品にも表れている筈、
「ホタル」以後の作品をもう一度読んでみようと思いました。
萩尾望都さんも然りでトラウマをテーマに描く作家は、動機になる過去を持っていて、
物語を展開する中で、自分を投影したキャラを介して自分の傷を癒す事は、よくあるようです。
逆から言えば、トラウマが無い人にはトラウマものを芯から書けない。
綺月陣さんの作品にある、共依存や執着を絶てない登場人物の行動の不可解は、
ご本人の体験にあったんだなと、分かると凄く腑に落ちました。
粗筋は、知り合った男娼の少年が実の子と分かり、どうしたらよいのか迷う男性の話。
親とは?を知らない男と女は、子を生んだけれど結局親になれず、離婚。
少年が男娼になって求めていたのは、肉親の温もり。
「産めば誰でも【親】になれるわけじゃない」、産む能力と育てる能力は別だという訓を含んだ物語。
サラッとした展開だけど、深い内容です。
親は無理だけど、恋人としてならOK・・大人になれない男への皮肉も込めて居そう。
月に一度、自分を買ってくれる「部長」さん。高校生のユウは、秘密クラブで体を売る”バイト”をしている。現代では許されないような設定も、当時はOKだったのかな?1999年と古い作品のようです。
やはり綺月さんは文章力が高くよみやすいです。そんな”バイト”をしている高校生だから、心もすさみそうなものの、ユウはなれたふりをして純情で、「部長」さんと会うのを楽しみにしている。
一方、デパート勤務の課長、藤枝は、男性と浮気をして妻子に逃げられ、会社でも居づらい立場にたたされている。そんな藤枝は、ユウと会うときだけは少し見栄をはって、つかの間の癒やしを得ている。
いつしか、客と店員の関係を超えて、惹かれ合う二人。しかし、二人にはとんでもない因縁がありー
時代の耽美を感じさせるような作品。
神評価は「あとがき」に捧げてます。
まずはレビューを書かれていた方に感謝したい。皆さんのレビューを見なければ手に取らなかかったと思う。わりと早い段階で、佑にも孝輔にも逃げ場がなくなり、八方塞がりの状態に閉塞感を感じて息がつまりそうだった。それでもひたむきな佑と罪悪感に苛まれ続ける孝輔にはこの先、地獄しかないんじゃないかと思っていました。最終的にご都合主義じゃないか、とツッコみたくもあったが、いやっこのオチでふっと気持ちが楽になったので良かったと納得しました。もう一つの物語として「あとがき」が秀逸。ほんと考えさせられる・・・・・自分に置き換えて涙があふれ出た。後書きを読み終えて、改めて「ホタル」を読み返してみよう。
綺月作品を読むのはこれで4本目です。毎度痛く暗く切ないお話を描くのがうまいなぁと思います。真に迫っていて、とても軽く読み流してしまえるようなものではありません。
このお話も、重い。
祐との関係に悩む孝輔の描写。沢野にふたたび襲われる祐の描写。
余計な言葉を省いてぽつぽつと必要なところにライトを当てるような、シンとして静かな描写に胸を打たれました。心を引き絞られるような場面なのに、美しい。
耽美、というのがぴったりとくる作風なのかなと思います。(ほかをあまり知らないので、ずれていたらごめんなさい)ほんのりとなぜか和のテイストのある、上品な美しさが感じられました。
綺月さんの作品では受けちゃんの生い立ちや家庭環境が悲惨で、酷い目に遭うという設定が沢山登場する。
「鴉」はバッドエンドでJUNEの香り満載のタブーなお話でしたが、これもまた切なさとやりきれなさを、受けである少年にも、攻めであるおじさんにも背負わせて、悲哀あふれる作品となっている。
切ないよー。
デートクラブ「ホタル」の№1ホストは高校生の祐。
月一回、彼を指名してホテルでの行為に及ぶ中年男性・藤枝は、過去身重の妻と、男性と浮気したことが理由で離婚し、その事から社内でもうだつのあがらない立場でいるデパートの課長職の男である。
たまたま支払った紙幣の間に藤枝の給与明細が挟まっていて、その実態をみてしまった祐は、その藤枝の他の客と違う誠実さに本気の想いを持つようになる。
店では禁止されている客との恋愛、ホステスをしているだらしない母親と、その男、祐の背負うそんな障害から逃げるように真剣に藤枝を求めるも、藤枝は一度は受け入れるものの、祐の正体を知って距離を置くようになる。
生まれる前に母と別れたという父親にあこがれるあまり、年上の男性が対象となる少年の一途さ。
藤枝の過去からくる社内での理不尽な立場。
給与明細の内容はそれは実に彼がいかにつつましい生活を強いられているか、祐を買うことが彼の唯一の楽しみであることを象徴するような場面だった。
祐のその一途さは藤枝を追いつめるのだが、悪者だった周りの人々が好意的に動くことで、二人の幸せが訪れる結末になっていて、なんともほっとさせられた。
こんな未来も何もない中年の藤枝には、救われない一途な祐には、綺月さんはひょっとすると”死”という結末を用意するのではと読んでいて心配でなりませんでした。
あとがきにて作者の過去が語られいます。
綺月さん自身が家庭内暴力を経験して、大変に苦しい思いをしたことを告白されています。
そうか、そういう過去があったからこそ、今までのあんな、そして今回のような作品を書くことができるのだ!ということがわかりました。
だからこそ、上辺だけでない、とことん悲惨で悲しい状況が書けるのだと。
ひいきではありませんが、このあとがきを読んだ後に、もう一度この作品を読み返すと、とめどなく涙を誘われてしまうのです。
心に染みいるお話でした。
孝輔は、妻にも逃げられ職場でもさげすまれ、その鬱憤晴らしのために月に一度出張デートクラブで、一人の少年を買います。
売れっ子のはずのユウも、孝輔に懐いており、いつしかお互いを求め合うようになります。
売春のつきあいが、本気の恋に発展してというだけで、すでに切なくて苦しい話なのに、ここに作者ご自身の葛藤が反映されるのです。
孝輔だけが、ユウが自分の息子(離婚後あわせてもらえずわからなかった)だと気付き、あまりの罪悪感にユウを退けようとします。しかし、真実をしらないユウは、突然冷たい仕打ちをする孝輔にすがりつきます。
事実を知っても親子だろうが、この手は離さないと強く求めてくるユウに、孝輔もユウのために身を引こうとしていたことを告げ、その手をとる決心をします。
あとがきを読んでいたので、親から愛されたい、手を取ってほしいというユウのすがるような感情が、作者のそれとだぶって何ともいえない痛い作品でした。
そのまま別れを選び悲劇で終わらせることもできたろうに、やはり作者は孝輔にユウの手をとることを選ばせます。
あとがきに書いてあるのですが、幼児期に父親の暴力や母親の言葉の虐待をうけたという作者、この作品を書くことですくわれていることを祈ります。