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少し前にパブリックスクール物が流行りましたが、20年近くも前に同ジャンルでこんな名作があったとは。しかもかわいゆみこさん作の円陣闇丸さん挿絵。繊細かつ耽美がこれでもかという位つまっている名作ですよ。
主人公のロレンスは厳格なカトリック司教の家に生まれたのに先天的なゲイで18歳まではっきりとはそれを自覚していなかった。しかも当時のイギリスでは同性愛が法律で禁じられていた。という悲劇に向かうしかないような悲しい設定。
受けのロレンスは繊細なガラスハートの美少年だけど、困った友達を見捨てたり、自分の同級生への失恋がきっかけで、振られた彼に容姿がよく似た下級生が自分に気があることを知りながら体は許さずに彼を近くに置いて、自分が我慢できなくなったら結局深い関係を結び…とちょっと小狡い所もあるあまり愛せない性格でした。
精神的に受けより大人びていた攻めの年下彼氏ブライトも最後は親や世間に追い詰められ、受けから自分への愛も信じられず絶望して悲劇のラストへ向かいます。でも育ちも容姿も良い思春期の少年達をお城のような場所に閉じ込め、同性愛が生まれやすい環境を作っておいて国でも宗教でもそれを禁じてるってアホかと思います。禁じられたら余計に恋は燃えるっつーの。
主人公カップルは悲恋でしたが冒頭に出てきた友人カップルの方はその後幸せになれたのか気になります。受けは攻めを守るために他の人に体を投げ出し、精神も壊されたのに本命とは結ばれないままなんて可哀想すぎる。かわいさんの設定の中ではあの2人は出来上がっていることを望みます。
1冊まるごと表題作です。
1932年12月23日の朝から始まり、2年前にさかのぼります。
舞台はイギリスの名門パブリック・スクール。同性愛が犯罪として処罰される時代の話です。
序章はオリヴァーを気遣うラッセルの姿がありますが、主役の二人はブライト(攻め)とロレンス(受け)です。
ロレンスは幼馴染のウェルザーへの恋心を抱きますが、ウェルザーには下級生のスタンレィがおり、受け入れてもらえない思いに苦しみます。そんなウェルザーにブライトは惹かれて…という話でした。
カトリックの厳しい家庭に育ったロレンスは、人一倍同性愛をタブー視しており、自分を許すことができません。ウェルザーへの片思いも長く、ブライトを受け入れても罪の意識に苦しみ重苦しい展開が続きます。そしてようやく、二週間ぶりに会えたブライトに逢いたかったと抱き着くロレンスという甘い場面が来たのかと思えば…序章へ続く悲しいラストでした。
あとがきで「私の中ではハッピーエンド」とあったのがせめてものなのでしょうが、ブライトは誤解したままというのが私には切なかったです。そう、ロレンスにとって自分はウェルザー身代わりなのだというのは誤解なのだと私は思っています。
上流階級によるパブリック・スクールでの派閥争いの中、禁忌であると知りつつ想いを捨てられない若者達の話がお好きな方にお勧めだと思います。
ただ、カタカナに弱い私には、登場人物の名前を覚えるのがちょっと大変でした。派閥争いなので友人も登場しますし、ファーストネーム呼びが登場すると誰?と戸惑いました(笑)