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複雑でとてもあっさりとは感想を書ききれない、そのくらい感銘を受けました。
読んでいてすごく幸せそうだけどすごく悲しい。
似たようなタイプのBLが思いつかない、こんなの読んだことないなぁって思える作品です。
「愛って色んな形があり人によって違う」とはこの作者さんが度々別の本でも提示していることなのですがこれは正にそんな複雑な愛をテーマにした作品です。
「今でも一番君が好き」とは、前の「セラヴィベイビー」で悪役(?)である欅が言った台詞なのですが、これを読んでからその台詞の意味を改めて考えるともう理解の範疇を超えてせつないし苦しいしやるせないし…。
子育てBLとはちょっと違うのですが、不思議な生命体「セラヴィ」を育てるカップルのお話です。ものすごくコメディーでもあるし、ものすごくシリアスでもあります。
このアンバランスさが面白い。
前回から2年後の設定で、欅の手を逃れて山中でたった二人でソフト会社を立ち上げ暮らす室生と玲二は、貧乏だけどとても幸せそう。
色んな人物が(人外含め)出てきて、色んな複雑な思いが交差します。
お話としてのドキドキ感もあるし、BLとしての萌えもある。
普通のBLとは大分毛色が違うのですが、ほんとにもっと読みたい!って思います。
前半は新幹線にセラヴィと共に閉じ込められる室生と欅の秘書のお話です。
この秘書、なんで欅についてるのかわからないくらい健気でよく出来た人物です。
「新幹線の感情」というとても変わったものがテーマになってるんですが、結構感動的にまとまっていてドキドキ感もあって面白かった。
この作品、攻めキャラである室生が何故か色んな人から襲われるのが面白い。無防備というか、もと天才ハッカーなのに馬鹿というか世間知らずというか^^;
本当に天才?てくらい色んなことを恋人の玲二に任せきりで能天気なキャラです。
普段は私は受けキャラ贔屓なのですが、この話は玲二に共感して室生を守りたくなります。
このお話がBLとして面白いのは、室生、怜二、欅の関係が複雑だから。
室生は欅に調教され監禁され、10年目に出会った玲二という助手と恋に落ちて欅のもとを離れます。
欅は、好きになった人と馴れ合い惰性で長く付き合う事を嫌がり、めちゃくちゃに調教し、いう事を聞かせ、一切触れない、でも甘やかす、というちょっと理解に苦しむ愛しかたをします。
後半はその欅と室生の過去のお話。セラヴィが絡むとコメディーになるお話ですが、こっちはドロドロのシリアスで異常な欅の愛にぞっとします。
それでもちゃんと愛してくれていたのなら欅を受け入れたという室生。
そうならなかったのは「自分が受け入れられる愛」を欅は望まなかったから。
この複雑な愛は理解に苦しむし欅は褒められた人物ではないのですが、何だかすごい読んでいて胸が苦しくなります。
ただ、漠然と、理解はできませんが、「こういう愛しかたもあるんだなぁ」と。
少しでも社員が室生に接触したら海外に飛ばしてしまう、室生が勝手に誰かに話しかけたら何時間もお仕置き…。それって愛しているなんて言葉では表せないほと大きな執着だと思うのに、かと思うとあっさり室生を山奥に閉じ込めて10年も会いに来ません。
室生は誰も来ない異常な環境で欅のことばかり考え、愛ではないのに結果的に欅のことしか考えられないようになっていきます。
これはもう読み手から見たら異常な愛であり、病んでいるんじゃないかと思える域ですが、それでも欅は「今でも一番君が好き」と言うんですよね…。
でも最後に室生が選んだのは、ツンデレで普段は厳しいけど、やきもちやきで心配性な玲二の愛。
玲二が素直じゃないのにすごくすごく可愛いです。室生を甘やかさないし簡単に触らせたりもしないのに、欅に取られるんじゃないかといつももやもやしているところとか、意地っ張りなのにヤキモチは素直に隠さないところとか。
過去話がドロドロな分、今の室生の脳天気な生活と玲二の健気な愛はバランスが取れていていいなあと思います。
難点を言えば、前回より更に玲二の出番が少ないことでしょうか。
「受けキャラ」として肝心の玲二より室生のほうが目立っていて、さらに「攻めキャラ」としては室生より欅のほうが目立ってしまい、本来のカップルの役割を果たせていない気がします。
補完するためにもう少し続編を読んでみたかったなぁって、思う気がして残念です。
よくあるお話とはちょっと違ったお話を読みたい方に、本当に本当にオススメしたい作品です!