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漢字一文字、英語のスペルの最後がOWで終わるというタイトル縛りのこのシリーズも7冊目。今回の舞台はNYではなく、ノブが一時帰国した日本でシドニー達とも別行動。初めてノブが事件をシンクロ解決、というパターンから外れました。かなりニアピンというか近くにはいたけど。
2人とも一旦離れてみてお互いの存在の大きさ・大切さを改めて再確認するという感じがとても良かったです。シドニーは金髪碧眼のイケメンなのにオレ様でガキ大将キャラだなんて可愛いなあと思います。彼の湾岸戦争での過去編もいつか描かれると思うので楽しみです。
柏枝さんのあとがきもいつも楽しみでこれは97年のストーリーを2000年当時に書かれていますが、この数年後にあの9.11のテロ事件が発生してしまうのです。NY愛の大きすぎる柏枝さんがあの事件をどう物語中で描くのか、実力者であるだけに今シリーズ1番の読みどころだと思っています。前半シーンにはワールドトレードセンターの上階のレストランが何度か登場しますがこの時代はそれがまだ確かに存在し柏枝さんも多分訪れたことがある場所なのでしょう。
そういう観点で今の時代に読むとBLを超えて時代や歴史について考えさせられる大作小説だなあと感じるのです。シドニーとノブの住むアパートの警備員ドミトリーは崩壊直後のソ連からアメリカに渡り、コンピューターの資格の勉強に一生懸命というキャラですから。本当に色々考えさせられる作品です。
自分はいったい何物か?という、前回の悩みを引きずったまま、日本に戻ってきた伸行サイドのお話と、今回初めてシドニー視点でお話が交互に進んでいきます。
NYで不法滞在の日本人に会い、アメリカ国籍を持ってるのに日本人にもアメリカ人にもなりきれていないと感じた伸行。
自分は何をしたいのか、これからどうなりたいのか、その折り合いをつけるため、二度と戻ることはないと思っていた日本へ帰国します。
根を張っていない渡り鳥と自分の立場を重ねたタイトルも素敵だと思いました。
残されたシドニーが思った以上にダメージをうけていて少し驚きます。
いつも冷静だし普段はあんなにしっかりしてるのに、そのシドニーのイライラや不安や焦りが周りや上司にもバレていてます。
それでも事件は起こり、それが2年前に日本で起きた事件と同じ容疑者であることが判明し、シドニーと相棒のヘンリーは日本へ向かいます。
この、NYと日本でシンクロする事件を解決していく様子も、本格ミステリーさながらでとても面白かったです。ですが、今回糖度は皆無です。
シドニーと伸行は本編中一度も会わないし・・・せっかく日本まで行ったのに会わないの?!と思いました。
そこが少し不満があったというか、勿体ないと思ったのですが、でももっと大きな発見や展開がいくつもあり、会わなかったことが逆にとても心を打たれる結末に結びついています。
これは日本のBLというより海外小説ぽい、ゲイであることによる社会的な問題とか、家族や友人や職場でどう思われるのか、それについてきちんと書かれている作品で、そんな中で好きな男性の父親に、「自分はゲイです」と告白するのがどんなに勇気がいることか、読んでいるこっちが緊張しました。
でもいつかは言わないといけないこと、逆を言えばシドニーが伸行を本気で愛してるんだという事が切々と伝わってきます。
今回は、子供の時に伸行と別れるシーンがシドニー視点で書かれています。
いつも、伸行視点だったので気にしなかったけど、このころからシドニーが伸行を好きだったなら、好きな人に次にいつ会えるかわからない状態でお別れする、自分は子供でどうしようもない別れの理不尽さに芝生をむしりながら泣いたというシドニーがすごくせつなかった。
伸行はずっと故郷は自分が生まれたシドニーの隣の家だと思っていて、日本に居たのは通り道だったと思っています。
今はもうない自分の生まれたNYの一軒屋が自分の故郷だと思ってきたのに、日本に戻ってそのままになっていた部屋をみて「ここも故郷かもしれない」と感じます。それでますます伸行のアイデンティティは混乱するのですが…。
それでも帰国してたった3日目で伸行はシドニーに会いたいと強く思います。
日本かアメリカかどちらがホームか、という悩みよりも伸行の中に芽生えた「シドニーがいれば日本でも楽しい」という気持ちにすごく胸を打たれました。
それは「場所」に対する執着でなく、人を感じて自分の帰る場所だと思う、それって友情とか愛情では語れないすごいことなのではないでしょうか。
ヘンリーの妻ケートが言った「女の子ならよかった、でも女の子じゃ親友にはなれないわよね」って言う台詞が好きです。
恋愛感情もあり、でも友情もあるから素敵な二人なんですよね。