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haru wa kimi no tame ni
現在大昔に読んだBLを再読中。その中の一冊。
本作は発刊当時に読んだ。通常のクライムものでは完全悪役になるであろう連中が主役で、悪の論理をあっけらかんと肯定するのが斬新と言えばいえるけど、やはり嫌悪感は残った。
20年近くたって、
「世界の秩序を保つには一部で非道なことをするのも必要。それがなくなれば世界全体に秩序がなくなる」
という理屈もある程度は理解できるようにはなったけど……でもそれで莫大な利益を得ている以上、その理屈はただの自己正当化でしかないよね?という印象はやはり変わらなかった。
彼らの行為の末端に、バナナフィッシュのアッシュのような悲劇があるんだと思うし。
小説としては、作者の博学ぶりに舌を巻く。20年ちかくぶりに読んでも凄いなあという印象は変わらない。膨大な知識をただ並べるのでなくちゃんとストーリーに生かしているのが凄い。
ただ……その反面素人目にもおかしいと思う突っ込みどころが多すぎて。
モサドはエミールの体内に発信器を仕込んでいたのかもしれないけど、それにしても先回りしすぎだしそもそもルドルフとエミールとジュリオの3人だけが城から出てくるかどうかなんてわからないはずなのに。
長年幽閉されて足腰が萎えて、ようやくまともに歩けるようになったばかりの少年がプロとしてのナイフ術を披露するのもおかしいし。
修羅場をくぐっている設定なのに第2話では簡単に毒を盛られるし。
いやでも、そんなことはいい。
BLであり恋愛小説なのだからその描写がしっかりしていれば……といいたいけど、実はそこが一番アウトなのだよな。
ジュリ→ルドへの恋愛感情は、まあわかる。
しかしルドルフがジュリオに恋愛感情を抱くようになった過程って???
長年汚れ仕事をさせて申し訳ない。自分も同じ悪に染まってジュリオの負担を減らしたい。これはわかる。
でもなんでそれが恋愛感情になって、さらにセックス強要にまでなるの?
一応、ジュリオを思いやる気持ちが急速にふくれあがって恋愛感情になったということなんだろう。
それ自体あまりピンと来ないのだが、まあそれはそういうものだとしてもいい。
しかしそこからセックス強要に持ち込むのは無理がありすぎる。
色々言い訳させてるけどまったく響かない。
この展開は、ルドルフが、ジュリオは自分に恋しているということを前から気づいていたが、性別や立場上応えることができないでいたという前提がないと成立しないのでは。
読書メーターでの評価が低いのはむしろそっちの方に原因がありそう。
麗やメアリといった女達の描写は怖くて良かった。
セックスシーンは非常に少なめ。本文248Pの中でセックスシーンが始まるのは146Pからでさらにレイプ設定なので苦痛しかない上に感覚描写もかなりあっさりしている。
第2話ではある程度増えるけど基本的にはストーリー主体で、、今のBLからすればかえって新鮮な感じがします。