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その夜を彩るのは、駆け落ち、奪う愛!!
東京の外れにあるレトロなホテルを題材したオムニバス小説です。
3作品とも、全部すごくよかった!
「ホテル・ラヴィアンローズ 青」
逃避行もの、それも学生のものに弱いです…。全部捨ててっていう開放感と、終わりもつねに予感している悲壮感が混ざったせつない感じが堪らないというか。
家を出る、先生から逃げる、大人になれば簡単なことが、この時はどうしても出来なくて、だから逃げるという策をとるし、終わりの予感が付き纏うのも力やお金のない未成年だから。この十代独特の無力の悔しさとか、限られた時間でしか出来ないはかなさとか、学生独特だなあとじんわりきます。
高校生の滝口は家に問題を抱え、主人公の久住は学校に問題を抱え、2人は夏休みになったその日に滝口のバイクで町をでます。
久住は滝口を密かに想っていて、バイトをしながら、噴水で遊んで警備員に追いかけられながら逃げる間はとても楽しそうですが、でもいつか大人に追いつかれて連れ戻されるだろう予感を、久住は「悲しい結末だと知ってる映画を見てるときの感じ」だと言っています。
結局ガソリンがなくなり、2人が最後にたどり着いたのはカラフルでレトロなホテル。行き着く先が町外れの古風なホテルだなんて何とも味があります。
この後聞かされる滝口が逃げた本当の理由がとても衝撃的でした。短いお話なのでネタバレはなしにしますが、久住も滝口も、この時子供の無力さを実感しながら、でもそれもよかった、馬鹿だった子供のころが愛おしいと最後は幸福感を感じさせてくれるお話です。
このお話が1番好きだと思えました。
「ホテル・ラヴィアンローズ 赤」
2つめはホテルの中でのお話。ホテルの従業員と、そのホテルに思い出に浸りに来る綺麗だけど奇妙な客のお話です。
昔ホテルで心中事件を起こした雅人は、相手を裏切って助かったことを後悔して、心中で亡くなった人の幽霊が出るという部屋に毎週宿泊しています。
従業員の数樹は、いつまでも思い出に浸り一歩も前に進めない雅人に苛立ち、本来リアリストでゲイでもないはずなのに、いつしか雅人にこっちを見てほしいと思うように。
年上だけど、綺麗であぶなかしくて感情の起伏のはげしい雅人とクールな年下…ものすごく好みでした。ストーリーは他の2作に比べて軽めかな?と思ったんですが、カップリングそのものでは一番好きかも。
死者はライバルにするな、てなんかの本で読んだ気がしますが、思い出は綺麗になっていくばかりで勝ちようがない、てことなんですね。
こっちを見ろ!て数樹の感情ががすごく伝わって来ました。
「薔薇色の人生」
3つめは時代をぐっと遡ったお話です。
ホテルに関係ないのかな?と思ったら意外なところで関係ありました。
こういう最後にあ!て感じで繋がるお話の見せ方、高遠さんの「楽園建造計画」に似てる気がします。
戦争とか、時代の動乱の中で好きな人と別れ、再開して、今また別れが近づいているというせつないお話。
この方の書かれるお話って、何年も恋を引きずってるとか、一度連絡のつきようがなくなって、何年後かに会うとかいった設定が多い気がします。
今回は3つともそんなお話。
終わりよければ…かもしれませんが、私は何年も音信不通なんて気が気じゃない!て思うからそんな心臓に悪い話は本当は遠慮したいんですが^^;やっぱりせつなくていいなぁって思ってしまう。
一緒に過ごした日々は長くないけど、それを思い出に何年も過ごしている。良くも悪くも、そんな話ばかり。
人生あなたがいたから頑張れたんだという言葉と、再開できた時はこの日のために生きてきたんだ、て思ったという言葉がすごくずっしりと響きます。
3作品ともハッピーエンドなのにすごくせつない!とても高遠さんらしい作品でおすすめしたくなる作品でした。
短編3本、登場人物や時代が異なるもののホテルという舞台で繋がっているオムニバス形式の一冊。
過去に遡っていく話の中で情景や心情が丁寧に書かれているのはそれぞれに共通している。
<青>
父親から受けている暴力を部活やバイクで発散させている滝口と、彼を見つめているだけで良かったのに秘めていた恋愛感情を盾に教師に脅されて猥褻行為を強要されている久住。
ひょんな事から打ち解けていった二人が高3の夏休みに起こした逃避行。
この話では逃げ場を探せない悩みを抱えている10代にとって、時間の流れが遅く長く感じる辛さに共感する。
<赤>
赤い部屋に纏わる噂話の真実は、道ならぬ恋の末心中に失敗した呆気ない幕切れが原因だった。
3編の中ではこの話が一番ホテルという舞台を満喫できる。
いつまでも失恋を引きずっている宿泊客・雅人を放っておけず、ホテルのフロアスタッフ・数樹が世話を焼くうちにほだされていく。
見た目不愛想だが根はいい奴な数樹が、20代にしては奥手な雅人を過去から現在進行形の恋愛に引っ張っていく過程にほっとできた。
<薔薇色の人生>
ホテル・ラヴィアンローズの誕生秘話ともいえるエピソード。
青4.5、赤4.5の割合に比べると薔薇色は1といった短い話ながらも、私はこの話が一番好きだ。
終戦間もない頃から東京オリンピック目前の高度成長期のさなかという時代に絡めて、出逢いと暫しの別離が書かれている。
再会を果たした建設会社の跡取り・健̪志と華族制度が廃止されて今は小さな喫茶店の主・千尋。
逢えない間に広がった境遇の違いに身を引こうとした千尋に対して、彼を子供の頃から心の支えとして一生添い遂げる決心をしていた健志に感動し、切なさに泣いた。
『愛と混乱のレストラン』では舞台となるフレンチレストランが《思い出の場所が其処あるからこそ噛みしめられる幸福感》だとすれば、この小説上の舞台、ホテル・ラヴィアンは《既に無き思い出の場所を懐かしむ切なさ》になると思う。
タイトル名にはそれぞれ青、赤、薔薇色とついているが、例え時代が移り変わっても思い出の中で色褪せないでいてほしいと願いたくなるような短編集だった。
みっつのお話しが入っています。
◆青◆
──青い。
読み終わって、思わずそうつぶやいてしまうほど、タイトル通りのお話。
少しずつ大人に近づく高校生。
けれど少年の心をまだ持ち続ける彼らの逃避行。
このまま、ずっと──なんて無理なことは分かってる。
いつか終わりがくることも。まだあどけない彼らの精一杯の背伸びが描かれています。
胸がきゅっと切なくなる。
滝口が守ろうとしたものは何だったのかが判明したときは、なんて愛しい奴なんだろうと胸が熱くなりました。
◆赤◆
置いてきぼりをくらってしまった想い。
綺麗な世界で綺麗なまま。
過去から進めず、ずっとその時を過ごす浅海の痛々しい純粋さに苦しくなりました。
それを壊した柏原に拍手をおくりたい。
綺麗なだけ夢の世界から浅海を連れ去った柏原はきっと、浅海に綺麗な夢を見せてあげるんでしょう。
終わらない、夢を。
◆薔薇色の人生◆
再会を果たして恋人になった千尋と健志。
千尋はずっと健志を待ち続けている。
仕事が。仕事で。仕事の。繰り返される、言い訳の羅列。
そういうことなんだろう、と千尋は別れを決意する。
将来を有望されている恋人のために──。
健志が千尋と満足に会えずにいた理由を知り、彼の深い愛が本当に胸に染みました。
ここから始まった『ホテル・ラヴィアンローズ』。
三つ目はホテルが誕生したお話でした。
幾人もの恋人がここを利用し、そしてそれぞれの物語があったんだろうな。
廃墟と化したホテルでお話は始まり、そしてホテルが誕生したお話で終わり。
始まりがあれば、終わりがある。
けれどそこで過ごした何人かの愛は、終わりなんてなかったと、そう信じたくなりました。
刹那的で愛しくて。
どこか心があったまるお話でした。
タイトルの「ホテル・ラヴィアンローズ」にまつわる短編が三話収められています。
「ホテル・ラヴィアンローズ-青-」
滝口を密かに思っていた久住は、そのことを化学教師の崎田に知られ、証拠のデジカメを返して欲しければと行為を強要される。好きだという気持ちを隠したままいつしか滝口と親密になりそんなある日、事件を起こしたと滝口が久住をたよってきて、二人は逃避行することになった。読後、青春映画をみたようなすがすがしさと満足感を感じました。
「ホテル・ラヴィアンローズ-赤-」
恋に破れ思い出のホテルで自殺しようとする青年浅海、そんな彼が放っておけなくて楽しい思い出をつくろうとドライブや祭りに強引に誘うフロント係の数樹。年下なのに強引な数樹といっしょにいることで、やっと恋に終止符をうち再び歩き始めることができたというお話。
「薔薇色の人生」はラヴィアンローズがホテルとして誕生したカップルのお話。
どれも読後胸の中が暖かくなるようなお話で、シリーズ化してほしいと思いました。
収録されている三作品全てに、
過ぎ去ってしまった美しい時間に対する愛惜の念を感じました。
どれだけこの時に留まりたいと思っていても、
時間の流れは止められません。
後悔や、忘れられない恋。
どうしようもない思いが交差する様子に、胸を衝かれます。
個人的にお話としては「赤」が一番、好きなのですが。
少し泣いてしまったのが「青」「薔薇色の人生」。
特に「青」は、いつか旅の終わりが来ることを
ちゃんと分かっていながら、逃避行を続ける若い二人の姿。
デジカメのエピソードが切なくて……
しかしどのお話も過去を振り返り後悔するばかりではなく、
ちゃんと未来へ向かおうとするところが素敵です。
中篇が三つ収録されてますが、一作目の「青の部屋」の話がめちゃくちゃ良かったです。
読みながら息苦しかった。
どこにも行き場のない高校生二人の逃避行。いつか終わることが決定されているなかで、脆くて儚い時間を二人で過ごしている姿に、ホロリ。
軽いどんでん返しも良かったです。
高遠さんの描く世界は、私にはなぜかセピア色に感じる。青い部屋の話も、赤い部屋の話も、私の脳裏ではすべてセピアだった。郷愁を誘うような切ない物語たちだった。
まず手にとって感じたのは、厚いなぁ、という印象でした(笑)。324ページです。
部屋ごとに色が違う「ホテル・ラヴィアンローズ」を舞台にした3つの話が収録されています。
「青」では、高校生二人が逃亡の果てに、「青」の部屋に客として泊まり、その5年後に廃業したホテルの前で、二人が再会するという内容で、ホテルは二人の思い出の場所という小道具に過ぎません。ホテルにたどり着くまでがメインのストーリーです。
「赤」は、「青」で二人を接客したフロントマンが主人公で、以前心中未遂を起こした「赤」の部屋に泊まる客に惹かれ、彼を過去の幽霊から解放しようとします。ホテルが舞台らしい作品だと思いました。
「薔薇色の人生」は、元華族の千尋は戦後に屋敷を失う。それを恋人の建設会社・専務の健志が購入してホテルにするという内容です。
映画みたいな作品だと思いました。作中に「また逢う日まで」という映画があり、読むのを中断してあらすじを検索して読んで、切なくて泣きそうになりました。それはキスシーンで有名な映画なのですが、この作品でもキスが効果的に使われていて、良かったです。
千尋の現在(健志を待つ)、過去の回想、現在の続き(健志が来て一緒に出かける)という構成ですが、終盤の健志が約束どおり屋敷を取り返したという場面で盛り上がり、そんな中で千尋が健気にも玄関で健志に別れを告げる、それを追いかけて、ハッピーエンドへ繋げる光景が目に浮かぶようで、素敵でした。
読んでいて、胸がきゅっと切なくなる場面のある作品ばかりでした。
切ないけれど幸せになる、ピュアな中編を読みたい方にお勧めです。