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父親をなくし、会社も重役達にわたし、母親の介護をしながら日々なんとなくすごしていた稔(みのる)
叔母(母親の義姉)のすすめで叔母親子の住む邸宅に同居して、叔母の仕事を手伝うことに。
幼いころからあこがれていた従兄弟と同居するようになり秘めていた男性を好きだという性癖が稔を苦しめます。
そんなときに、出入りしてはいけないといわれていた禁忌の茶室に入り、やっと一人に慣れる空間をみつけ自分を解き放つ行為に没頭するようになります。
この辺りから、あれ、あれって登場人物の精神構造のいびつさが出始めるんですね。
どうも、おかしい皆様。だんだん変態チックな形相を呈していきます。
どの人も精神がゆがんでいるんです。なにげない日常をすごしている振りをしているだけで、その心根には昏い淵をかかえていました。
旦那の情事の現場に息子を向かわせる母親、一家を崩壊させるとわかっていながら弟をそそのかし、弟の幸せを祈った姉、父親の情事に欲情する息子。
そして、再び息子達をむすびつけようとする母親達。
みんな自分を抑制しようと葛藤するけど、激情に押し流されます。でも、だれも困っていません。ヘ(^^ヘ)(ノ^^)ノ
それぞれの息子たち2人が仲良くなって、仕事も、家庭も充実してるハッピーエンド(?)だからいいか・・^^;
主人公稔が、彫塑で無意識のうちに男根をイメージした作品を作ってしまうというエピソードが、鬼気迫るものがありました。
螺旋をえがくとんがりをつくりながら、欲情する主人公・・濡れ場じゃないのに、すごくエロティックなシーンです。
キャラというよりは(もう少し濡れ場表現を抑えれば)ホワイトハート、もしくは講談社ミステリっぽいお話だなあと思いました。
淡々とした中に激しさを潜ませる登場人物達。
主人公の稔と攻めの宗司より、
稔の母由美と宗司の母聡子に感情移入してしまったのは
二人が強烈だったからか、それともわたしが女だからなのか。
結局檻を作るのは人間なんですよね。
真相が次々と語られるラストに向かっては一気に読み進められました。
お話自体はエロエロという訳ではありませんが、静かだからこそ際立つエロス。
今市子さんのイラストも世界観にとても合っていました。
ミステリがお好きな方にはおすすめだと思います。
萌と神で迷ったんですが、BLにはめずらしく(BLらしくないからかもですが)最後の一行がお気に入りなので神評価にしました^^
私は、病んでる系の作品が好きだけど病みすぎは苦手というめんどくさい趣向なのですが、
この小説はいい感じのじっとりとした湿気感と病み具合で読みやすく、いい感じに萌とエロと闇を補給できる作品です
最後がハッピーエンドなのも後味がよくて最高でした。
病みに全振りした作品はたくさんありますが、いい感じの病み加減で湿気のある作品というのは中々ないので星5を付けさせていただきました。
檻というものは
害を及ぼす恐れのあるものを閉じ込めておく場所。
逆を言えば檻の中の出来事であれば、危険はないんですよね。
で、もっといえば檻の中のものが幸せであれば
檻の外からどう歪に見えようと良いのである。
この物語の“檻”は、まさにそれ。
資産家の家の庭にある“偽湘南”という茶室は
秘密の“檻”なのです。
BLモノで“檻”とくれば監禁調教陵辱・・・と
連想してやまないと思うのですが
“偽湘南”の秘密は、業が深い。
裕福な資産家というだけで、庶民の私には、すでに“檻”で
奇異なものを覗き見るというドキドキ感がありました。
丸く収まったように見える“檻”の中
でもよくよく考えるとちょっとゾゾっとします。
他人の業というものを覗くというのは
サイコホラーにも似たスリルがありました。
烏城さんは、お仕事BLの許可証シリーズも大好きですが、これはサスペンス調でホラーっぽい感じもするので今市子さんの美麗な絵が雰囲気にぴったり合っています。
使われていない開かずの茶室にだけは絶対近づいてはいけません、って言われたら…そりゃあ余計気になっちゃうよねえ。
謎の茶室を誰が使っていたのか明かされていく過程がハラハラドキドキ楽しめます。呪われた一族って感じで耽美に描かれていますが、よく考えてみたらこれって超ハッピーエンドなんじゃないの?皆もっと物事明るく考えようぜ!とも思います。
最後のお母様方のセリフにニヤリとさせられます。
許可証シリーズとは雰囲気が全然違いますが、登場人物たちの心理描写やお話の作り方が自然で面白いのはさすが烏城先生だと思いました。こんなに不思議な感じだとは少し意外でしたが…。
お屋敷も庭も茶室も、想像すると美しくて、日常の自分の安っぽい生活を忘れて楽しめました(笑)。
檻、というタイトルが監禁・凌辱を連想させるかもしれませんが、そういう内容ではありません。それは読んでのお楽しみ…。
終盤に色々の理由が分かってきます。悲しくも辛くもあるけど、みんなの気持ちとか選択はそれぞれすごく共感できました。私は。こういう愛のかたちもあるよな、と。
素敵なお話だと思います。
烏城さんの作品には珍しく、内に籠ったようなお話でした。
1回読んでもなんだかよくわからず、2回3回と読むうちにスルメを噛むかの如くじわりじわりと判り始めました。
愛憎のすべてが家族の中から起こり終息していくので、第3者は何も気づかず傷つかないのですが、その分精神的には非常に濃厚な関係が展開していきます。
自分の今居る場所を確認した時には、もう引き返せないような… そして、それを自分自身も、表にはださいなけれど母親もそれを望んでいて――
小説Juneに嘗て載っていた、耽美小説を思わせるアンニュイな空気を纏っているかのような、しっとりとした仕上がりです。
「許可証をください!」の烏城あきら先生作品。
こちらは許可証シリーズとは随分とイメージが違う。
耽美的とも言えるし、なんとも薄暗く、回りくどく。
設定や展開もあらすじ/説明として書くには非常にめんどくさいのでここでは感想だけ。
他人の目から、それどころか家族からも隔離されている庭。
その中に建つ茶室に隠された一族の秘密…
病に倒れた異母兄弟との、籠城にも似た愛欲。
それを期せずして繰り返してしまう従兄弟との男性同士の因縁話、のような展開法です。
現実にはそれほど暗くも耽美でもない立地点だと思うんです。
それを、同性に惹かれる事、年上の従兄弟に惹かれる事を罪悪と考える主人公の視点で、殊更に「禁断」臭を漂わせている。
必要以上に「庭」とそこにある茶室、そして隠された家族の秘密を仄めかして、暴かれてはいけない禁忌と破滅のイメージを植え付けようとしている。
私個人としては、病気の母親、自分も病弱、将来の夢も諦め、自身の性癖を恥ずかしく思い、従兄弟への憧れも押し殺し…
そんな主人公はやはり一昔もふた昔も前の価値観、のような気がします。
隠さなきゃ、
知られたら終わりだ、
もうそんな事は無いんですよ。過去も今も別に「犯罪」は存在しない。
ことさらなホラー調は読むのはまあ面白いけどね。
二組の母親たちの苦悩は見過ごせないからお手軽に考えちゃいけないとは思うけど…
耽美に囚われすぎだったかな、という印象強め。「萌」で。
檻という題名がぴったりくる、しっとり暗い雰囲気のお話でした。キーポイントである庭の秘密が明らかになった後、みんなの歪みと変態っぷりがよく出てきて楽しいです。特に主人公である稔の母と伯母がいい味出してます。
稔の母が具体的に何をしたのかが気になります(>_<)
ちょっと不思議テイストの話。
稔の元に突然おばが訪ねてきて、同居をして稔に仕事を手伝ってほしいと言ってきた。
ある理由から美大を中退し、会社社長だった父親の残された蓄えでほそぼそと母と二人で生活をしていた稔だったが、体の弱い母の面倒を一人で稔が見るのは大変ということもあり、その話を受け入れることにした。
実は、おばには息子が一人いて、稔は、従兄であるその息子・宗司に許されざる想いを寄せていた。
当然、この想いを伝えるつもりはなかったものの、その宗司と一つ屋根の下で暮らせることになって、稔は喜んでいた。
けれど、宗司に優しく接しられるたびに日毎に膨らんでいく想いを持て余し、稔はその想いを発散するために、かたく入ることを禁じられた庭に足を踏み入れる。
とあるお寺の茶室を真似て作られたという茶室があるその庭は、鍵がかかっているわけでもないのに、入らないように、と昔からかたく言いつけられていた。
その庭で稔が時間を過ごすうちに、茶室の中で誰かが生活していた気配を感じ取るようになる。
そして、屋敷の人たちの奇妙な態度。
普段は優しい人々が、その茶室のことになると態度が一変するのだ。
そんなある日、稔が茶室にいるところを見た宗司は態度を一変させて襲いかかってきて……
という話でした。
作者さんとしては、ちょっとうっすらホラーテイストな感じの話にしたかったんだろうなーというのはよく伝わってきました。
真っ当に見えるけど、みんなちょっとずつ歪んでいてうすら寒い的な感じ。
でも、個人的にはもう一つだったかなーと思います。
もうちょっと幽霊みたいにいるのかいないのかわからない痕跡を感じさせるとか、後はもう少し登場人物が思わせぶりな行動をしてくれるとよかったかもしれません。
ホラーというか、背筋をぞくぞくさせるにはなんと言っても、登場人物の行動が正直過ぎる感じがちょっとしました。
何にせよ、そういう感じの話ってかなり難しいと思うので、仕方がないかなーと思ったりもします。