お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
gentleman
山田詠美氏による一般文芸。2012年野間文芸賞受賞作品。
主人公は、夢生(ゆめお・男)。
クラスメートの漱太郎は、学校一のカースト最上位の生徒。ミスター・パーフェクト。
成績良し、容姿良し、性格良し、家柄良し。
だが、ある放課後。
夢生は漱太郎が女教師をレイプしている現場に居合わせてしまう。
だが漱太郎に下卑な欲望などはない。
いつもの爽やかさで。いつもの快活さで。いつもの優雅さで。
そんな漱太郎の内なる悪魔を知った夢生は、漱太郎の心の奴隷になる…
読んでいくと、漱太郎って確かに悪魔みたいな女の敵なんだけど、別に強盗や殺人をするわけじゃない。寝取りや強姦や、酔っ払いを殴りつけたりとかそういうの。
だから実態はチンケな色男なんだけど、作者様の筆力でカリスマ男のように見えてくるマジック。
ただ、夢生はその後もずっと漱太郎を愛し続けてる。
愛してる?それは愛?
漱太郎は夢生には悪の部分を無邪気に晒し新たな犯歴を楽しげに披露する、それに対しての優越感と恋愛感情が絡み合った感情なのでは?
それに「漱太郎を守る」??
漱太郎は「守られる」なんてこれっぽっちも思ってないだろう。ましてや夢生なんかに!
なぜなら、絶対に自分の行為は露呈しないのだ、という根拠なき自信があるから。
突然変異のように悪魔的な漱太郎だけど、実は誰にも向けない本物の「執着」を向ける人間がいるのですよね。
それが後出しのように出てきて、それ以後は急に夢生、漱太郎、彼らを取り巻く人間の運命が転がるように急変するんだけど。
結末は「えっ」と「やっぱり…」という感想が同時に来ました。
いつか誰かがやるだろう結末。
それを夢生その人が実行できた事は、多分夢生にとって最高で最後のご褒美になったのだと思う。
そして、漱太郎も誰のせいでもなくこんな風に生まれついた事の悲劇的な因果応報だったのだと思う。