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本屋で始まるFirst Love Story。
kagami no naka no kugatsu
「つめたい花」では展開よりも、ビートニク的なキャラクターに魅力を感じまして、
またまたいっちゃいました榊先生。
で、今回は本屋の店員と取次店の営業という異色な組み合わせです。
う~ん、まず本屋の日常業務描写が面白い!
本屋の店員が出てくるBL作品はほかにも多々ありますが、
それを丁寧に描写したものってあまりないような。
BL小説読んでレビュー書きまくっているみなさんはさぞかし書店好きだと思いますが
本作の本屋描写は一読の価値ありです!
もう一つの読みどころ。
攻めのどうもおっさんくさい魅力ですね(笑)
27歳にして相手をひきこむセンスがこんだけ老練なのってどうよ?
…と思わなくもないんだが、いいキャラです。
本当なんだか嘘なんだかわからんことばっかり言って、
それでいて送り狼にはならない紳士的な面もあるし
押してだめなら引いてみな、と受けを作為的に翻弄します。
こういうオレ様&おっさんくさいキャラ、大好きです(笑)
まさに、初恋という感じのお話です。
主人公は20歳の大学生なんですが、今まで恋をしたことがないという、かなり稀有な種類の人物です。
もう大人といっていい年なのに、恋愛に関しては中学生が初めて付き合うような、何にどう反応していいのかさえよく分からない、という状況。
攻めの生方は、恋愛に関しては経験豊富そうな感じがするのですが、決して秋雨にプレッシャーをかけず、秋雨から心を開いてくれるのをじっと待つという姿勢を崩さないところが、彼の愛情の深さを表しているようで、とても好感が持てました。
穏やかに、じわじわと染み入るような、ゆったりとした恋愛がお好きな方にはお奨めです。
木下さんの絵が、とってもこのお話に合っている気がしました。
帯『孤独な胸に響いたのは、その人がくれた言葉』
派手さは無く地味で、けれどその地味さが似合う作品です。
2人が出会うのは本屋、秋雨[受]は本屋バイト店員で、生方はその本屋担当の取り次ぎ社員。
一般的に本は出版社から直接ではなく取り次ぎを通して、本屋の元へと搬入されます。
その取り次ぎの仕事をしているのが生方なのですね。
秋雨はコミックコーナーを担当しており、バイトながらに売り上げ成績を上げています。
淡々としている印象な秋雨なのですが、彼には病弱な弟がおり、幼い頃から両親が弟にかかりきりになってしまって孤独に育ったというのがあって母と弟へは微妙な感情を秘めています。
ですが弟は性格も良く、憎むには罪悪感をおぼえてしまうし嫌いという訳ではない、けれど総て許して愛する事は出来ないといった存在です。
秋雨は実家で1人離れに暮らし、生活費はバイトで稼ぐという半自立生活をおくっています。
そんな秋雨なのですが、飲み会で酔ったはずみで己の孤独な状況を生方に話してしまうのです。
本来、生方な苦手なタイプでよりによって彼に内に秘めていた孤独を愚痴ってしまった事を秋雨は後悔しますが、生方は焦らずゆっくり少しずつ秋雨を愛してくれます。
彼等の年齢差は7歳ですが、学生と社会人からか生方は本当に大人大人した大人で、気長に気長に見守り秋雨の心へと近付いて行くのです。
ゆっくりと見守られ、やがて恋へと落ちて行く。
地味ですがその地味さがこの作品の味でもあると思います。
木下さんの挿絵はその点ぴったりで、派手ではない二人の姿を自然に描いてて内容にとても合ってますね。
表紙での2人の表情も内容を暗示している様でいいのです。
子どもの頃、家族に愛されなかったために、人間関係に壁を作ってしまっていた主人公が、
根気強い大人の男に愛されることで、
少しずつ、自らを変えていくお話。
って、なんだか、この作者さんで、このパターンのお話、続けて読んじゃってるな。
今回の主人公・秋雨は、どうして親の愛情を感じないまま育ったかというと、病弱な弟に親たちがかかりきりになって、自分もまだ子どもなのに、兄で、健康だということで放置されたのね。
そのことで、親も弟も、許せない、とか、恨む気持ちもある一方で、そんな感情を持つ自分にも嫌悪感を持っている。
どちらの気持ちも、人には知られたくなくて、そつなく振る舞っているようでも、他人と深く関わることを避けている。
そうやって自分の殻に閉じこもっていた秋雨を、「なぜか」、大人の男の人・生方が好きになってくれて、「ゆっくりと」、殻を溶かしていってくれる。
この、「なぜか」の部分は全く説明されないけど、恋に落ちるのに理由はいらないって事かもしれない。
むしろ、この本のキモは「ゆっくりと」の方にあるから。
他人と深く関わることを避けていた秋雨、二十歳の大学生なのに、当然のように恋愛経験も全くない。
だから、アプローチされても、まず、自分が恋してるってことになかなか気付かないし。
気付いても、どう相手に返したらいいかわからない。
思っていることと、言葉になって出てくることは裏腹で、ついぶっきらぼうになっては落ち込み、愛されていることを信じ切れずに不安になり、もう、ぐずぐず。
生方は、それを大人の余裕ぶって、押したり、引いたりしながら付き合っていき、ようやく結ばれるのが、「誕生日のプレゼントに、秋雨が欲しい」。
それも、お食事デートの後、家まで送ったタクシーの降り際にささやく!!
もう、どんな、乙女な展開なんだ!!
でも、ある意味古風な、焦れったい、乙女チックラブとして、かなり萌えた。
多分、この秋雨が、しっかり自己分析と自己反省をしながら、自分でも成長したいって思っている真っ当な子だから、安心して萌えられたんだと思う。
エロよりもロマンチックをお求めの方にはオススメ。