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utsutsu no yamai
一冊の中におさめられている全ての話が怖いホラーです(霊とかではなく)
以前、木原作品に心のホラーの表現が云々、、と書いたことがありますが、あちらはそれでも救われるのですが、こちらには救いがありません。
暗闇へまっさかさまに堕ちて行きます。
それが、まだ未成年の少年達の姿で表現されるのだから怖いのです!
出版元は今はない会社ですが、今なら作品として出なかったであろう作品が96年にこうして世に出ていたと言うこと自体、実を言えばありがたいな~と思いました。
それは、ある意味現代の社会問題でもある「苛め」ということについて、ある一種の極端な見方でもあるかもしれないが、そう思う部分があったからです。
晃生は、幼い頃SMセックスにふける両親の姿を見て以来、虐げられ興奮する父親になりたい、いたぶられたいと希望する性癖を持つようになります。
もちろん、母親にわざと叱られるような態度をとることはもちろんですが、学校内においても、クラスの中心人物である松野にパシリとして使われることに快感を得ていました。
しかし、それは直接晃生に松野から下される命令ではなく、間接的なもの。
ある日、松野の忘れた水着のサポーターに自慰しているところを松野に見られ、クラス中の男子の犬となることを直接、松野に命じられ激しく興奮するのでした。
『ABUSOLUTE~』はその晃生のいるクラスへやってきた転校生目線で、このクラスが語られます。
晃生はクラスのペット(?)として、彼をいたぶることでクラスは実にうまくいっているという、先生も公認の、外から見た常識的な眼からすれば異常なクラスの姿。
転校生は、それがおかしなことだと嫌悪感を抱くのですが・・・
はみ出ない為に、同化していこうと思考がゆがめられる瞬間が怖い!
苛めには、ある種のサディズムが存在するのであるが、この2本を通して、それだけではなく、自分が弾かれ者にされない為の同化という姿も見せて、表現が極端であるものの、集団に存在する為には、という理不尽な面をクローズアップさせてデフォルメした姿に、恐怖を感じるのです。
表題は、その苛めの張本人である松野の過去ということになるのであるが、ショタの近親相姦です。
裏切られた父への信頼の失墜が、彼のサディズムの基盤になったという話の展開は、こじつけかもしれないので、全く別モノの話として読みました。
晃生を奴隷にする姿と、彼が受けたトラウマが結びつきにくかったからです。
『夜にさえ溶けない』も疑似的近親相姦です。
自分の親が年をとっていて、それがコンプレックスであるばかりに隣人のおじさんを理想の父親として体の関係を求める、
おじさんが単身赴任で淋しい心に付け入る子供のズルイ一面。
歪んでいる子供!!
フロイトのリビドーを曲解した展開に、嫌悪感を抱きながらもそれでも眼が離せなくて、
子供というのは、いつまでも大人のモノサシで見ることはできない存在なんだ。
何かキッカケがあればそれを自分なりの道理と理屈で自分のものにしていってしまうんだ、と
子供だけに怖さが増幅されるのでしょう。
萌えとは違う次元での傑作的問題作品であることは間違いないと思います。