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girou no koimizu
橘紅緒さんを初めて読んだ時から、その独特な文体のトリコになりました。人物の眼差し、仕草、一挙手一投足がまるでスローモーションのよう…。動作一つ一つの間にゆっくりと時間が漂います。その時間が視覚的イメージに溢れていてとっても贅沢なものに感じられる。文章自体は短いのに、数少ない言葉にたくさんの情報が凝縮されていて、色々な方面に想像力を駆使しなくちゃならない。だから読むのに時間が掛かっちゃう。描写ごとに色っぽく独自の空気感を創り出していて、文章そのものに色気を感じる、あまりお目にかかれないタイプの作家さまです。
この作品は大阪の遊郭を舞台に繰り広げられる遊女の息子、節(みさお)の恋物語。筋書きは本当にシンプルなのに、節の切ない恋心にギュン萌えが止まらない。年上で余裕のある大人な攻めと、純な受けのカップリングが鉄板な橘先生のイメージそのままに、見事に時代物で再現してくださいました。
節と柾臣の出会いはさりげないのに、とってもドラマチック。確実にこの二人は惹かれ合うだろう…と予感を漂わせています。花魁のところに通って来ているはずの柾臣に、どうか自分に心を向けて欲しいと思い始める節。彼の初恋は叶うのか…、やきもき。
遊郭のしきたりや優雅な花街言葉、柾臣と節の身分差が二人の思いを盛り上げてくれています。柾臣の真意を伏せて描く、焦らし作戦がツボなの。橘作品は攻めが魔性ですよね。極めつけは二人が遊郭で交わる濡れ場の、情熱的でありながら上品さを損なわないエロさ…。萌えます。
挿し絵に甘さが強く、わたしの好みからするとちょっと可愛らし過ぎました。橘紅緒先生のイラストを担当されている先生方は往々にして甘い作風が多いので、逆に抑制された大人っぽい画風のイラストで、ストイックバージョンを勝手に妄想して萌え倍増してます。。
作品の世界にどっぷり入り込める心の余裕がある時にぜひ読みたい。オトナの方に満足していただけそうな、橘節がしっかり堪能できる物語です。『セブンデイズ』が実写化されたのを最後に、もう創作活動はされていないのでしょうか。スゴく好きな作家さんなのになぁ。
本のノンブルが漢字表示で、章が変わるごとに雪結晶のような花のマークが描かれていて、細かいところまで凝っているなと思った。
他のSHYノベルズもそんな風になっていたか、ちょっと見てみないとわからないけども。
宮城とおこ先生のイラストが細かくて美しいし、作中の言葉にも美しいと感じる。
最初は葛城という男と節が仲良さげで、二人がくっついても良いなと思った。
「はなしてんか、つわり起こしそう」
「どこに孕むねん」
「男でも簡単に孕ませそう、あんた」
「試してみるか?」
「試したいん?」
という二人のやりとりが良かった。(セリフはちょっとだけ簡単に書いてます)
でも、葛城は凄く子供っぽくて意地悪な人。節もそこを理解してのやりとりがあるから面白い。
節は花魁じゃなくて喜助という雑用係。借金返すために色目も使うけど体を売ったことはないんですね。
借金を返してここから出たいと思ってる節だけど、何だかんだで不自由なく愛されてるなと感じました。内妓や楼主、浮雲とか和志や葛城に。
ひとつ、疑問なのが節の髪の色。本文では節は黒髪で挿絵でも黒髪なのに表紙と口絵だと黒髪じゃない。
美しいけど、わざとそうしたんですかね。
柾臣と節が一緒になったあとの話がもうちょっと読みたかった。そこに葛城が邪魔しにきたりして、怒る節も可愛いだろうし。
大人気のセブンディズはピンとこなかったのだが、その後読んだ橘作品にやられ
ポチポチと読み進める橘作品。
といっても、全部でもそう作品数ないんだけれど。
舞台は明治時代、難波の大店・近江楼。
表紙はとても美しいのだけれど、受けと思われる子が花魁姿なので
うーん、そいう設定はイマイチツボじゃないんだけれどな、と思って読み始めたが
実際には、途中女装させられるシーンはあるにせよ、
ちゃんと喜助(雑用の男衆)として働いている主人公の話だった。
郭で育った美貌の節(みさお)は自らの借金を減らすべく、座敷で舞を舞ったり
あるいは客のスケベ心を手玉にとって、心付けを稼いでいる。
色恋の達人のように振る舞うが、実は潔癖で純真な節。
そんな彼が出会ったのは、花魁・浮雲の元に一途に通う東京の御曹司・東和柾臣。
礼儀正しく誠実な柾臣と言葉を交わすうちに、
節は未だかつて知らなかった想いを抱くようになる……
ストーリーというよりも、しっとりとしたやりとりや美しい情景が
独特の夢うつつの雰囲気を作り出していて素敵。
それが時代物で遊郭ものという設定に、すごく合っている。
節のけなげだけれど、はっきりとしている性格も好き。
じれったくすれ違う中、節の初めての恋心にキュンキュンさせられる。
最後に伏線が回収されて終わりを迎えるが、話の大筋はある程度予想がつく素直な話。
細部や脇役の造形もなかなかよくて、全体に雰囲気に浸りながら幸せな読書が楽しめる
好みの一冊でした。
うーん、ちょっとオマケだけれど、遊郭物だけれど男娼じゃないという変化球に加点で
評価は「神」。
表紙を見て男花魁的なお話なのかと思ってたら違いました。
遊廓で育った子と客としてやってきた男の恋物語。
廓で育った節(「みさお」と読む)は喜助と呼ばれる雑用係をする傍ら、その麗しさから舞を仕込まれ御座敷に上がることも。
別に遊女の格好をしているわけじゃないし、身を売るわけでもなく、舞の見栄えがいいようにと髪を少し伸ばしている程度。
後は上手くお客に媚を売ってお小遣いをもらったり。
そんな節が恋をしたのが、遊廓に初めてやってきた東和。
東和はそれまで節が見てきた廓に来る人間たちのような感じではなくて。
何故か気になる存在になって。
喜助仲間の前ではフツーに喋っている節が東和の前だとしおらしく従順になったり。
けれど、東和には目当ての遊女がいて。
そこに通ってきているわけで。
そう考えるとせつなくなっていきます。
けれど、その東和の態度もこちらには節に気があるように見えて。
元をただせば、この東和の「やさしさ」がそもそもの始まりであるようで。
やさしすぎるゆえに遊女のことも節のことも…となって。
それはその遊女の抱える事情からくるものだったのですが。
遊女の方がラストの方で東和を切り捨てるようなことを言うところがあるんですが、彼女の言い分も最もでした。
そんな理由で身請けされても確かにねぇ…。
最後にはまるくおさまりましたが。
この2人の中を主に引っかき回してたのが別の遊女の馴染みである葛城。
節の本性を見切っているので、節にとって天敵のような感じで言葉遣いも喜助たちと喋るような感じ。
この葛城、節を困らせたりして楽しむのが好きなようでちょいちょいいたずらを仕掛けてくる。
この人のおかけで2人の関係は進展したとも言えなくもないんだが。
実は節が好きだったとかだったら萌えるのにー。
…って、敵娼(あいかた)いるからそうじゃないのか。
あとは、特徴的だったのがセリフが関西弁…になるのかなぁ、方言だったこと。
私は関西人なので全然OKなのですが、場合によっては人を選ぶかも?
漢字のものはともかく、ひらがなばかりのものは読み取りにくい部分もあるかも。
ちょっと古い時代の物語を探していたのと、宮城とおこさんの表紙に目を奪われて読んでみました。
遊郭モノの小説は初めて読んだんですが、とても切なくて何度も涙してしまいました。
節は遊郭で生まれて、花魁だった母親が身請けされたためにその遊郭に残され育てられます。
両親の顔も知らず、遊郭からほとんど出たこともなく、幼い頃から姉女郎たちを見ているので、夢もなく・・・
18歳になるまで恋の一つもしたことがない節の前に客として現れた、柾臣。
早く、こんな想いは振り切ってしまわなければならない、と思う節の、黙って耐える姿にジンときました。
舞台が大阪で、よく知っている地域がそのまま使われているので、私の知っている景色を想像しながら読みました。
今でもその地域には花街と一般地域を区切る大門の跡が残っていたり、大正時代に遊郭だった所が今は料亭になって当時の面影を残しているようです。
こういった取材もきっちりされてるんだなぁと思いました。
あとがきには、この本が出版された翌年(ということは2008年?)にこの作品のリンク作を出したい、と書かれてたんですが、私が調べたところ今の所はまだ出てないようです。
脇キャラもなかなかユニークだったので、是非リンク作も出して頂きたいなと思います。
舞台は明治時代の大阪難波の遊郭、近江楼。
表紙では節が女装しているけれど、彼は男花魁(おいらん)じゃない。
喜助(きすけ)という雑用係なのだけれど、その女性のような美貌を武器に座敷に入ったり舞を披露したりもしている。
節は遊郭の客のうわべだけの優しさに辟易していて、これまで恋をしたことがない。
けれど、実は人一倍恋に潔癖で、恋を尊んでいるんだよね。
そんな節が初めて恋する相手がお客としてきた柾臣。
他の遊客とは違う真面目で誠実な彼にどんどん惹かれていく。
けれど、柾臣には目当ての花魁がいて…。
たった一週間の間の出来事とは思えない、節の一途で切ない想いにきゅーんとしちゃう。
キャラについて言うと、受の節は気の置けない同僚達や知人にはツンツンしているのに、柾臣には健気で従順な面を素で見せてしまっているのがいじらしくて可愛い♪
柾臣は真面目で誠実な、でも天然たらしの優男なので、こういう男がタイプな私は読むとドキドキして一人赤面。(こういう攻がBLでもっと増えてくれたらなぁ、と思う)
それと、私には未知だった遊郭のシステムがわかりやすく語られていて、へぇ~だった。
はんなりした関西弁が優雅に話されているのがいい。
橘さんは情景描写がうまいので、妓楼の様子や雰囲気がよく伝わってきた。
伏線がいくつもあって、後からそういうことだったのか、とわかる仕掛けになっているので、二度目三度目に読むのも楽しめるよ☆