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haikei shitsuji dono
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英国コルフォート伯領、アントネルの街。
大通りの裏の、貧しい労働階級者の集う小路沿いのベーカリーで、ノエルは働いていた。
孤児院からパン屋夫婦に引き取られて、孤児院より劣悪な環境で8年ずっと暮らしている。
夜明け前から日暮れまでパンを作り続けて、眠るのは竈の横で毛布にくるまり、食事は余りもの、風呂にも入れないし着替えもない。
ノエルは、生きる意味を感じない毎日だった。
通る
小路を月に一度通る、左足が悪い紳士に、ノエルは店から救い出される。
紳士は、この領地の領主。
無賃就労が違法になった時期に、孤児院から家族と偽り引き取られた多くの孤児たちのその後を調べて居た。
それからノエルの人生が大きく変わっていく。
BL版シンデレラ物語といえばいいのか、健気なノエルが、恩に報いようと頑張る物語。
★この作品、英国の様子がよく描写されていて、「王子と乞食」と比較しながら読みました。
桜部さく先生の「マンハッタン・プロポーズ」が好きで、こちらの作品にも手を出してみました。
とってもいい作品なのにレビュー数が少なくてびっくりです。
他の方が「BL版シンデレラ」と感想を書いていらしたのが言い得て妙だなと思います。
私もそのBL版シンデレラな部分を大いに楽しみました。健気で不憫な主人公が救い出され、認められ、見初められていくといのは読んでいてとても気分がいいです。
しかも、よかったね〜ちゃんちゃん♪
で終わらない、何か心に残るものがあったので「神」評価です。
健気で不憫な主人公(受)を救い出す方の攻めが、地位も名誉もあって容姿もよくて……というよくある完全無欠の設定、でなくどうにもならない過去があったり。いつも心のどこかで燻っている悩みや自分を卑下する気持ちがあったり。そういうのが垣間見えて、物語にのめり込めた気がします。
※以下、重大なネタバレ
途中、過去の病気のせいで行為ができない……という展開になっているのに「え?!」って驚きました。今までそういうBL読んだことなかったので。思いが通じあったら、その後はあまあまハッピー!になるだろうと。
でも、不思議と「物足りない」という気持ちには全くならず。結局想いが通じたのか最後までできてましたが、それはそれで「よかったねー!」ってなりましたし、別に出来なくても、私の想像してたあまあまハッピー!とは違うけれど、きっと2人は静かに愛を育むのだと。そしてただ触れ合うだけで満たされるような、そういう関係でも2人は十分幸せなんだろうなと。自然とそう思えてました。
また、時代背景や身分制度などを通した苦悩などがしっかり書かれていて、でも必要以上に重くなりすぎず、だったのでよかったです。受けのノエルが純真で、恋人となってからも執事という仕事をおざなりにせず紳士に向き合ってるところも好感持てました。
全体的に満足度が高いです。
ちなみに、普通BLだと受けのピンチに攻めは助けにきてくれるというか、まあ今回もそうなんですけど。たいてい受けは「待つ」んですけど、(というよりは「さ待ってても絶対攻めが来る」の方が正しいかな?)
この作品はただ「待つ」だけでは助からなかったんじゃ……と思うので、受けが捕まって?いた時よりもむしろ助かった後の方がなぜか心臓バクバクしました……。笑
助かってホントによかったーーー!涙
後に執事となるノエルが健気でとてもかわいいです。
自分を助けてくれたルイスへの献身は読んでいて心温まりました。
一方でルイスもノエルの心根の美しさを見逃さない、繊細で心の広い人物です。
二人の距離が少しずつ縮まっていく様子が愛らしく、思わず応援しながら読みました。
途中痛々しい場面もありますが、極端な描写はないので苦手な方でもそこまで気にならずに読めるかと思います。
何より二人が結ばれたあとの生活が優しくて、満ち足りているのでぜひ最後まで読んでいただきたい作品です。