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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
子羊狩りというゲームで次期生徒会長を決めるミッション系スクールを舞台にした、「全寮制櫻林館学院」シリーズの最終巻。
今回もべたな不幸受け…といってしまえばそうなのですが、とてもツボをつかれました。
主人公が変わるので恋愛ものとしてはこれ単体でも読めるのですが、今までのキャラも出てきますので順番のほうがより楽しめるかと思います。
1巻と違って、ゲームの内容が何かすでにわかってる事と、前みたいに周りが敵なのか見方なのかわからない状態でなく、信頼できる人が(読み手には)わかっているので、最初のゴシックの春美よりは痛々しくないかと思ったのですが…あれよりはるかに痛々しかったです。
前作はいじめられてもルームメイトは見方だし、何より相手役の先輩は最初から最後まで見方でいてくれたのですが、今回の主人公で新入生の千聖は、クラスメートからもルームメイトからもひどいイジメを受けます。
お話とはわかっていても、ほんとに高校生なのか?小学生じゃないのか?て感じの悪質なイジメにムカムカしました…。
それでも千聖が我慢して頑張るのは、久々に会う大好きな兄・穂高が同じ学園にいるからなのですが、その穂高からも「弟じゃない」と皆の前で言われ、冷たくされ、「目の前から消えろ」とまで言われます。
おそらく最後はハッピーエンドになるとわかっていても、途中が可哀想すぎて辛い。
肝心のゲーム自体の描写は少なめで、ゲームによって危険にさらされることはなかったのがまだ救いでしょうか。
それにしても、「ロザリオを奪うこと」と「抱くこと」がイコールなのはいまさらながらにちょっと疑問…なのと、学年一の人格者でなければいけないはずの生徒会長をそんな犯罪紛いのゲームで選ぶというのは、今回ゲーム自体を廃止しようと春美が唱えるシーンで今更ながらやはり腑に落ちない気もしました。
体か弱くても兄のために学園に居続けるのに、「お前なんて嫌いだ」という穂高が酷いキャラクターに感じられますが、後半は次第に穂高視点のお話にシフトしていきます。
自分が兄弟ものが好きで、多く読みすぎたせいなのか、兄弟で愛し合うことが大きな罪であると涙するのは久しぶりにガツンときました。
ミッション系の学校のお話だからか…。殺人・同性愛・近親愛は罪でその罪を背負う決断をせまられるシーンが生生しく、兄弟ものであれば背徳感のあるものがいい、という方にはおすすめなのではないでしょうか。
それでも純粋で綺麗な作品です。
穂高が酷い酷いと思ってきたから、ここに来て、兄弟だから千聖を愛してはいけないと涙するところに胸を打たれました。
千聖が歳よりだいぶ幼く、舌足らずなところがあるので、ベッドのシーンはちょっと好みが別れそうな感じもします。
最初の痛々しい件が長いのに対し、ラストはあっさり終わってしまった感じがしたので、2人のその後とかも少し見たかったです。
ミッション系スクールにゴシックな衣装に子羊狩りのゲーム…なんともべたな設定かもしれませんが、もう少しシリーズとして読みたい作品でした。
「全寮制櫻林館学院~ロマネスク~」
ソルトラム2年・羽倉穂高×健気な1年・桜井千聖
今回は「ゴシック」に登場した春実が2年になった代の生徒会長争奪子羊狩りのお話。
新入生の千聖は実は穂高の父親と愛人の間にできた子供で、穂高を追って学院に入学してきた。
ただただ穂高に会いたい一心でここまで来た千聖だったが、穂高は「知らない」と言い千聖を相手にしない。
その様子を見かねた春実が何かと面倒を見るのだが、それがルームメイトやらに目をつけられる結果となり苛められてしまう。
千聖はいくらいじめられても学院を辞めようという気はなく、ただただ穂高のそばにいたくて。
どんなに穂高に冷たくされてもただ遠くから見てるだけでもいいからってとにかく健気で。
穂高は穂高で思うところがあってそういう接し方をしてるんだけど、本心では助けてやりたい気持ちがあって、最終的には報復に出掛けて行ったり。
この報復がこわいです!
メインはそんな2人なんだが、私が気になったのは「ルネサンス」で子羊になった真琴。
この子が、もう見事に「おグレ」になっておられて(笑)
あの純真無垢で健気だった真琴がもう堕落した生活しっぱなしですよ!
来る者拒まずな感じですよ!!
そんな真琴に想いを寄せているのが穂高と生徒会の楓生。
楓生もそれなりに遊んではいるのですが、それも真琴に重いのは嫌みたいなことを言われたからで。
本当は真琴だけをちゃんと好きで。
それをずっと真琴に伝えてはいるんだけども、真琴ははぐらかすばかりで真剣に向き合おうとしない。
そこに気持ちがないからではなく、自分のような人間には楓生は勿体ない、釣り合わないと考えているようで。
ラストで奇跡のようにある手紙が真琴の手に渡るんだけども、この手紙を読んだ真琴の未来に幸せが待ってるといいなーと思いました。
「楽園」
ルネサンスの代のソルトラムメンバーの卒業式後のお話。
全寮制櫻林館学院シリーズの三巻。
シリーズ最終巻です。
第一巻のゴシックで主人公であった春実が、ソルトラムメンバーとして登場しています。
受けの千聖は、櫻林館学院へ兄を追って入学。
攻めの穂高は千聖の兄で、ソルトラムメンバー。
ソルトラムとは生徒会執行部のような特権集団のこと。
今巻もソルトラムの伝統行事・子羊狩りを絡めています。
既刊を読んでいる方にはおわかりでしょうが、子羊狩りは次代のソルトラムリーダーを決めるゲームです。
子羊と称される生徒のロザリオを奪った者が生徒会長に選ばれるというルールで、奪う(身体を奪う)という薄暗いもの。
もちろん一般生徒には知らされていません。
千聖は自分自身よりも穂高を大切に思い、慕っています。
穂高や同級生たちから冷たくされても学院から去ろうとせず、一途でひたむきです。
穂高も同様なのですがそれはひた隠しにしていて、千聖に対し一貫して冷徹な態度。
このふたりの表面上の温度差がひじょうに切ないのです。
千聖というキャラクターはわたしが苦手な女の子ちっくな雰囲気ではあるものの、穂高がクールなので対象的で良い具合です。
穂高もよくいる、『クールでいながらも、可愛い受けに慕われて実は良い気持ち』というわかりやすいキャラクターでなく本当に冷徹なもので、「大丈夫かいな」と思っていたくらいです。
作品ごとに主人公カップルが違いお話的には別々なのですが、このシリーズは始めから読まれた方が世界観に浸かれて良いと思います。
ゴシックの春実、ルネサンスの真琴がかなり出てきますので、彼らの過去も知っていた方がだんぜん面白いです。
この巻はシリーズ中トップの暗さかと思うのですが、ゴシックの王子様・朝水がわたしは一番好きなので、彼のこともかいま見れて嬉しかったな。