お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
matsukaze no toriko
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
茶道の家に生まれた睦月の物語。
題名も表紙も口絵(肌色99%!)も「和」を感じさせますが、ファーストシーンはNYから。
表は東洋のお茶を出すカフェ、裏は限られた客にエスコートサービス、そんな店の一番人気のジャンこと睦月の元に、初恋の人、家元秘書の征親が連れ戻しに来る…現家元の兄が癌で余命3ヶ月なので次期家元を継ぐように、と。
物語のかなり序盤から征親の正体や魂胆、また家元一族の秘密も明かされて、何も知らず翻弄される睦月の運命は⁈という展開です。
それほど長くない一編に、睦月の家族との軋轢と家出、兄の死期、家元を継ぐ事への拒否感、征親への依存心や執着心、出生の秘密、これらの濃い要素が詰まってかなりスピーディーに話が進んでいきます。
それと同時に、「茶道」という稽古事の鍛錬と、血に関わらず持って生まれる万物・自然・精神世界へのセンスと感性を結びつける鮮やかな描写が素晴らしい。
睦月8才のエピソードは印象的です。睦月が茶を点て、22才の征親が客となったその席で、蝉が鳴く暑い毎日、その小さな茶室に一瞬の白雨、夕立を降らせ涼を誘う…そんな刹那の幻覚を抱かせる感受性を持っていた睦月。
茶室には、茶の湯には、そういう世界観もあるのか、と認識を新たにし興味も湧きました。
もちろんHシーンも切なさが際立っています。幼い頃からどこか疎外感を感じ愛に飢えていた睦月が、どうしようもなく征親にすがっていくさまなど萌え所も満載です。おすすめ!
茶道の宗家である兄が病に倒れ、アメリカに単身渡っていた睦月は跡を継ぐために連れ戻されてしまう。
征親は心のよりどころのない睦月を抱き、傍に置くことで自分の復讐を果たそうとする。
支配することで欲しいものを手にいれたいはずなのに、気持ちはどんどん睦月へ向かうよになっていく。
一方で睦月は父に愛されなかった自分には宗家を継ぐ資格はないと思い悩み、そして自分の出生の秘密を知ってしまう。
全く入れ違うように与えられてしまった家の為に、苦しみ続けてきた2人がゆっくりと遠回りし代えがたい人になっていきます。
ともすればドロドロするはずの関係なのに、茶道の手前や、立ち振舞いの品の良さが伝わってそう感じません。
家に伝わる松風の間の言われ。そこで2人で話をし、交わったことも、長い歴史の中で人の口をつぐんできたように、2人だけが知り、新しい2人の姿を刻んで行くんだろうなとそう感じました。
鳩村さんは作家買いしているので読んでいるはずなんですが、表紙だけではまったく内容が思い出せない……そういう内容だったようです。もともと、和風系の設定にはモエがないせいなんでしょうか?