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iro no nai soshite hikari
書くことが好きな作家が、深く思い入れを込めた作品。
展開が上手い。状況進捗と心理描写に力を入れた作品。
無自覚の魔性の美貌を持つ昴は、母同様に自分を守る術も知恵も無い。
昴より4歳年上の葛城が昴に執着する物語。
過疎な島で生まれ育った美貌の母。妻子を愛する優しい父は、医師。両親に愛されて育つ昴。
母の希望で、島で暮らす親子三人。
ある日、島民に暴行され、母は自殺。・・ここからドミノのように幸せが崩れていく。
父子は島から離れ、父は翌年に再婚。二歳年上の義兄は昴に一目ぼれ。
昴は混血の母に色素がにた少年(パーツは父似)。
母譲りの昴の美貌は、人を魅了する魔性。「美貌が呼ぶ災い」を避ける為、母に倣って昴は気配を消して生きている。タイトルの「色のない・・」の意味は昴の様子を指している。
女性の母は、自死に逃げた。男性の昴だって、レイプは心に深い傷を負う。
四歳年上の葛城は、中学生の昴に将棋倶楽部で見かけて一目ぼれ。
葛城曰く「昴は魔性タイプ」。危うい昴をずっと陰でガード。葛城の口癖は「俺は執念深い」
・・・昴が知能犯の葛城に追い込まれていく様子は、読んで息がつまる。
同僚の市瀬は優しくて自己制御できる強い人、昴が選ぶべき恋人は、本当は市瀬。
でも市瀬にとっては、魔性から解放されてよかったのかも。
二冊分の量が詰まっている、濃い一冊。価格を比較してAmazonキンドルで読了(挿絵無しの半額)。
続編がRENTAで先行販売されていたので、読みました。
関連作時系列。
「色のない、そして光」→「色のない、そして光 番外編」→「インパルス」→「埋葬計画」
こういった、単なるハピエンBLじゃない作品は、賛否両論になると思いますが、、、
執着がハンパない葛城。感情を殺しているかのような宇佐美。
万人に好かれる市瀬。
彼らの過去と現在、抱えてきたもの、宇佐美なんかは人間ぽいんですよね。誰しもが抱える暗いところをどうして良いか分からず、それでも出会った葛城との関係が光になっていたのだろうなと思う。
兄の事件で、さらに抱えるものが増えた、というか増やすことから逃げたのか、逃げたから増えたのか。
また闇を抱えながらも年月が過ぎる。
葛城に至っては、彼の執着、宇佐美への想いが強烈すぎてある意味潔い。そのままストーカー(苦笑)宇佐美に寄ってくる奴を手を回して避けるとか、お金あるから出来ることだけど。やるなぁ。
寛人と友人になったのも策だったのか。宇佐美はその時は「将棋教室に居たなぁ」程度の認識だったのに。事件の後、アメリカへ渡り、執念で再会を果たす。
その後、ずっと、市瀬と関係を持ちながらも色のなかった宇佐美が、光を取り戻す。市瀬には出来なかったこと。
落ち着くところに落ち着いた、というエピローグでした。
番外編もしっかりあって、電子書籍のセール価格(55円!!)での入手ですが、めちゃくちゃ価値がありました!
電子で長編小説読むのが久々で、手強かった…
紙で読む時のようにちょっと気になったらパラっと前に戻ったり、が面倒で、引っかかる部分があっても前に前にと強引に読んだけど、それはそれで意外と見える景色が面白い。
というのも、この作品は主人公的人物が一人いるわけだけど、必ずしもその人物が中心となっての進行になってない。
あれ?この人…あれ?この場面…
流れていく人物風景や出来事、それをいちいち確かめたり行きつ戻りつせずに小説世界の時間軸のまま読み進めること。
それがこの作品の流れの中に浸る、という効果になった。
さて、内容はなんとも濃い。
いつもの私なら「ドラマチック過剰」と言ってしまうような部分も、小説世界の時間の流れの通りに読めば辛い過去も酷い体験もすでに流れ去った過去な訳で、過剰というより「濃い体験」をしてきた人間たちの現在、という捉え方ができる。
自分だけに向けられる愛情を欲していた少年としての宇佐美。
そこに現れた年上の少年・葛城。彼に心の持ち方を教えられ、何より「愛」と快楽も教えられ。
だが嫉妬した義兄に傷害事件を起こされて一度は別れ。
今また思いがけず上司と部下として再会する。
「思いがけず」なのは宇佐美だけ。実は葛城はずっとずっと宇佐美を見ていた。
宇佐美ははじめは、かつて自分が逃げた立場だったから葛城に合わせる顔がない的に拒絶していたけど、葛城のしつこさに負ける形で復縁する…
宇佐美には同僚兼今カレがいます。
後半に配される番外編で、この市瀬に想いを寄せる男、に恋をした男、という少し視点を外したスピンオフが語られます。
同じ会社の狭い世界でそんな同性愛関係のこじれ?みたいに感じるけど…
ままならない感情の揺れのような世界の描き方は、この番外編の方がずっしりと読めるかもしれない。