窓月
kimi no naka ni subete aru
リンが可愛いくて癒されました。あ、記憶がない時の、ね笑
『兄と弟〜荊の愛執〜』のスピンオフ作品です。137ページとそんなに長くないので、サクッと萌えを補給できるかと思いますが、わたしには内容がまとまり過ぎていて(つまり展開が早い)もっとじっくり読みたかったかな。同人作品なのでそういうものだと承知してはいますけど…。
お正月が明けて二週目の日曜日。仕事から車での帰宅途中、道端に倒れていた年齢性別不詳の人を保護したミネが、その子に好意を抱いてしまうお話です。
年が明けてまだ動き出しはじめたばかりの街の冷たい空気。寒い路上で意識を失った人を見つけた時の不穏さ…。町のお医者さんや警察官との掛け合いなどから主人公のキャラクターがしっかりと伝わってきます。リアリティを帯びた描写とともに、セリフによってキャラクターを鮮やかに浮かびあがらせてくる描写が、読んでいてとても心地よかったです。
ミネの性的指向は謎でしたが、素直で純粋で健気なリンに惹かれてもおかしくないと思えました。そう、リンは仔猫ちゃんになぞらえて描かれているので、リン可愛いのひとことに尽きるのです。ミネの親友・赫がまるで大型犬で、怯える仔猫みたいなリンとの「はじめまして」シーンが目に浮かぶようでした。そんな拾われてきた仔猫のようなリンを構ってくれるミネの家族達は、姦しくも温かくて…。
リンが記憶を取り戻した後の辛い別れは切ないけれど、リンはやっぱりリンでした。健気な子が安心して過ごせる居場所は、その子のことを心から思ってくれている人達のところが絶対にいいよね?最後は二人とも本当によかったなぁと、(特にリンを重点的に)見守っていたわたしも幸福感に包まれました。幸せのお裾分けをありがとう…
本編に加えて個人的に推したいポイントが他にもありまして、それはhatoさんのイラストなのです。淡路先生の『きみの庭 追憶の青』の表紙絵もご担当されていて、当時レビューに言及するのを忘れてしまったけれど、その幻想的な香りがする独特な美しさに目を奪われて以来チェックするようになりました。
動いている被写体の一瞬を切りとったかのような躍動感のある構図、透明感があるのに質感まで感じる印影の濃い色彩、人物の透けるように白い肌や瞳の輝き……ほぅぅぅ…(うっとりため息)
『きみのなかにすべてある』の表紙イラストも、リンのマフラーが印象的。作中の大事なアイテムです。BL作品でたくさんhatoさんのイラストを見てみたいですね。淡路先生の作品でご担当されているイラストレーターさんの作品はどれも素敵だなぁと思います。