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作家さんの新作発表
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音大で声楽を専攻する良きライバルだった岸本と槇。
才能に恵まれた二人は意気投合し、やがて恋人として親密になっていく。何事にも情熱的な岸本に自分にはないものを感じて強く惹かれていた槇だったが、卒業後、活動拠点を海外に求めた岸本に捨てられる。それから5年が経過し、退官する恩師のため、門下生主催の祝賀コンサートの準備をしていた槇は、欠席予定だったはずの岸本がコンサートのためにドイツから帰国したことを知る。
読み始めると先が気になって止まらなくなり、途中からなんとなく先が見えたものの、最後は涙しながら読み終えました。ラストシーンが泣けます。
本作はこれまで読んできた池戸作品のうちのまさにひな型であり、中でも秀でた作品の一つだと思いました。ラブラブな二人だったのに突然受けが攻めに捨てられて、受けは攻めに思いを残しているのに、再会しても攻めは終始冷たい態度で受けを傷つける…ううっ、萌える展開。
王道とはいえ、好物の展開に仕事と人物の生き様が濃厚に絡んでいくので、展開が読めそうなのに引き込まれました。これはメインの二人がどちらも声楽家なので、お仕事ものでありながら芸術家を描いたお話です。芸術を生みながら生きねばならない彼らの背負う十字架の重みが、誰かを愛し愛されることで少しだけ軽くなる。そんな彼らによって生み出されたものの中にこそ、人々の心を揺さぶる力がある。
芸術家の創造力にも愛は欠かせないんですね。
岸本と槇はライバル同士でありながら、互いが最も必要とするかけがえのない存在。槇は岸本を純粋に深く求めていましたが、芸術か愛かのどちらかしか選べず、自己愛が邪魔して苦悩する岸本の姿が憐れです。無理にどちらか一つを選ばなくてもいいのに…。その潔癖さ、不器用さが創作上のキャラクターとはいえ人間的というべきなのでしょう。
一冊で満足できる、シリアスで読み応えのある作品でした。
受けの復讐と復活愛と、秀才攻めVS天才受けの意地と意地のぶつかり合いです。
どちらも才があるが故の悩みと苦しみと戦いながら、愛にも惑わされます。
リバにはなりませんが、攻めに捨てられてから槇が受け攻めどちらもいけるタイプになるので苦手な方はご注意。
声楽家(テナー)・岸本恭輔 自信家攻め×声楽家(ソプラニスタ)・槙一洋 プライドが高いタイプで誘い受け
五年前に一方的に別れを告げていなくなった岸本のことを、槇はいまでも引きずっていた。
そんな時に、岸本と再会することになって、岸本への復讐を決意するのだが。
まだ残っている岸本への思いが蘇る度に、辛くなって。
『一度躓くとダメージの大きさになかなか立ち直れない、弱くて人間臭い所が案外可愛い』
岸本が一緒に連れてきた友人兼、伴奏者の結城が言っていたことが、岸本の本質をついていると思います。
攻めの打たれ弱さが、無性に愛おしくなります。
岸本に復讐を誓っていながらも、いざ弱った攻めを見ると心を痛めてしまう矛盾も、愛憎が通った人間らしくてよかったです。
声楽家のライバルとして、そして恋人として、常に側にいたが故の悲劇のような感を受けました。
時間が2人には必要であり、あの時の別れは必要であって、互いの大事さを知ったいまだからこそ、思いきりぶつかれたのだと思います。
それには、プライドが高くて凝り固まった2人の間を結城が溶きほぐす事が必要でした。
珍しいポジションに立ったキャラで、2人から同時に想いを寄せられていながら、自らの着地地点を知っている大人な癒し系の方でした。
BL業界だと受けがぼろぼろに打ちのめされる展開が多いので、ここまで弱る攻めって中々見かけないので、ヘタってしまう攻めが見たいと言う方にもオススメです。
復讐するのであれば、男を抱けるようになった受けが、攻めを攻める逆転現象があったら、もっと衝撃的だったと思いました。
エロ:★3 誘い受け、普通
総合:★3 3人目である結城の存在が珍しいポジションで、新鮮でした。
天才ソプラニスタが恋人に一方的に別れを告げられ5年。その彼が日本に恩師の退官公演のために恋人のピアニストを伴ってかえってくるところから話が始まります。
別れを告げられ、自殺未遂にまで追いつめられたほど愛していた男が帰ってくると知り、主人公は復讐のため相手のピアニストを奪おうと画策します。
捨てられたという憎しみと岸本を忘れられない悲しみが、からみあい、なんだか豪華な二時間スペシャルドラマをみているような愛憎劇です。うまいです。池戸裕子さん。
岸本が不器用なんです。(笑)諸悪の根元は、すべてこれ。
こつこつと努力して苦しみながら現状を手に入れた岸本、不器用だから、槇を愛し続けながら、歌を極めることができなかったんですね。
そんな岸本の事が理解できない天才槇。
復讐のため岸本のことはわすれたという振りをして、誰とでも寝られる事ができるようになったと岸本を誘います。
槇より歌を選んだというのに、まだまだ未練が残っていた岸本は、ほいほい槇の奸計にはまってしまって・・
槇にふりまわされ、おいつめられ、岸本はぼろぼろになり、歌えなくなってしまいます。槇としては、復讐なんですから無事目的を達成したわけですが、後味の悪い想いにさいなまれ、後悔し始めます。
槇を捨て、歌をとったはずなのに、その歌さえ取り上げられ追いつめられる岸本。
どうなるんだ、この二人と最期まではらはらどきどきさせられます。
槇を選ぶ“ふり”をして、岸本に本心を気づかせる役回りの、ピアニスト結城がすごくいいですね。自然体で、岸本や槇のぼろぼろに疲れた心をいやしてくれます。二人どちらからも求められたのが納得いきます。
ラスト、いつも自分のレベルにはい上がってくる事だけを要求していた天才槇が、かわいらしいところをみせてくれまするのがいいですね。