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『朝を待つ間に』からの桐沢×実友シリーズのスピンオフ・支倉編です。
これはかなり好きです。無骨な支倉(攻)も、箱入りお姫様の秋(受)も、どちらも落ち着いた、口数の少ないキャラクターなので、ストーリー全般がとても静か~なイメージなんですよね。
そのわりに、秋の背景はかなり重苦しいです。家(やそれを巡る周りの人間たち)のために犠牲になる運命を、黙って受け入れている秋。そんな秋が唯一望んだのが、2年前にボディガードとして偶然知り合って惹かれた支倉と、最後に過ごす時間だったんですね。
非常に現実味のない設定なんですが、支倉と秋ならなんとなく納得できるような・・・なんというか、設定とキャラクターの雰囲気がよく合ってました。
支倉のような、いわば『温度の低い』キャラクターは、いったん本気になったら脇目も振らずに一直線なんでしょうね。これからもこの2人は仲睦まじく寄り添って生きて行くんだろうな、と容易にそのイメージが浮かびます。
しかし、秋の名前のエピソードはちょっとあんまりですね。それは自分の名前が嫌いにもなりますよ。
民間の警備会社に勤める支倉将稔が館森秋と出会ったのは名門のいわくありげな御曹司の秋をボディガードした時だった。
二年前のあの時、秋はある島から東京に出てきて、まるで見張りのようなお供を一人連れたまま、家の仕事をこなしていた。和服の似合う美しい人形のようだった秋は、どこか独特の雰囲気があり、話しかけるのをためらわせるような雰囲気をまとっていた。そんな秋は、まるで意図的に自分の気配を抑えているようだった。
仕事を終え、残り2日は休暇となったある日、秋は伴の目を盗んで、ホテルからの脱走を図る。逃げ出した秋を支倉はすぐに見つけることができたが、「外の世界を見てみたい」という秋を支倉らしくもなく、美術館へとつれていき、デートまがいの行動をとった。
そして、そんな日々の最終日、秋は支倉を一人、部屋に呼び出して「好きだ」と告白した。支倉もその想いに答え、二人はキスを交わす。
しかし、「必ず連絡をください」と言った支倉に、その日以来、秋からの連絡はなかった。
それでも秋が忘れられずに二年が経ったある日、再び秋のボディガードとして十日間一緒に――今度は秋と二人きりで、過ごすことになり支倉の秋への想いはより強くなっていく。
一方、家の事情から「これが最後」と決められている秋は、この「十日間」を思い出に支倉への想いを諦めようとする。しかし、それを知った支倉は……!?
想い合ってるはずの二人の行動がとてももどかしいような小説でした。
でも、穏やかでゆったりした書き方でつづられる物語は、とても読みやすかったです。
最後は、支倉が一念発起して、もう外に出れず、閉じ込められることになっている秋を取り戻しに、島まで向かって、無事、取り戻せてハッピーエンド。
社長の粋な計らいで、仕事も首にならずにすんで、ますますハッピーエンド!
支倉のいうように、これから人、一人を背負っていかなくちゃならないんだから、それはそれでとっても責任重大だと思うけど、支倉くらいまじめで融通が効かないと、逆に大丈夫だと思うので、頑張って、秋を守ってほしいと思います。
個人的には、嫌っていた忌まわしい意味のこめられた名前、でも自分の名前で呼ばれ続けるのと、恋人に新しい名前をもらうのと、どっちが幸せなのか? と、ちょっとだけ、考えてしまいました。
主人公の秋の秘密が終盤まで読者にも明かされないので、読んでいてモヤモヤする。
「ローマの休日」が作中で触れられてますが、あの映画は見ている側が主人公の秘密を知っているからこそ共感できて切なくなるのでは、と思いました。
その秘密も私には意味がよく分からなかった。引っ張った割には説明が足りないというか。
他に理由付けなかったのかな?という印象で、世界観に馴染めませんでした。
二人の空気感が好きだっただけに、惜しいです。