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cafe eden no koisuru tantei
活字中毒ですが、文字でBLを読むのに抵抗があって小説には手を出さずにいました。この度ついにデビューを。
食べ物大好き、飲食店設定はご褒美の食いしん坊にとって、BL小説って宝の山なんですよね。
「その設定、コミックスで読みたい!」と思うようなカフェ、定食屋、ビストロ、リストランテ設定、ものすごく多い。
その誘惑に抗えなかった…。
タイトルから分かる通り、カフェです。さらに探偵です。
ホームズにポワロ、ミスマープルに、いつもバーにいる例の人まで「探偵」という設定も大好物なわたしには、読まないという選択肢はなかった。
ペット探偵の右京は、その名の通り「ペット探し専門」の探偵。
彼が2階に事務所兼住居を構える建物の1階部分には、高校からの親友である葵が営むドッグカフェ「カフェエデン」がある。
卵サンドにサラダとコーヒー、そして葵の小言。
いつもと変わらない1日だったが…。
という始まりで、探偵の依頼とそれぞれの想いや気持ちの変化、出会った頃から今までの回想を織り交ぜつつ進んでいくストーリーです。
卵サンドにビーフシチュー、ミートドリアと出てくる食べ物が美味しそう。
コミックスと違って、右京と葵の風貌をある程度自分で想像できるのもいいなあと、改めて小説の良いところを確認できました。
ついでに言うとわたしが小説を嫌厭していた大きな理由である「性描写を文字で読むのが苦手」という点に関しても、そこまで喘いだり、擬音があったりしないので読みやすかったです。
ただ…、視点がころころ入れ替わるんですね。
葵目線で始まったかと思うと右京に入れ替わっていたり、その逆だったり。
そこの切り替えが曖昧なところがあったのと台詞がどっちから始まった?これはどっちの台詞?というのを確認し直さなければいけない箇所がいくつかあって。
たぶん作者さんの頭の中にはカフェの空間なり、探偵事務所が思い描かれていて、そこにいる2人が自由に動いているのをレポートしているような感じ。
目の前で見えているものを第三者に伝えるにはそれなりの配慮が必要で、ちょっと不親切な部分を感じました。
長い間想い続けてきた葵と、軽口で「愛してる/好きだ」と挨拶のように言ってくる右京の心理的なギャップは読み応えがあったし、恋愛感情に無頓着な右京が自分が葵に対して抱いている執着の正体に気付いていく過程の描写も引き込まれました。
だけど解せない部分もあって、葵が右京を「バイ」だと言い切る場面が何回も出てくることに違和感。
三十路手前、しかも目を引くルックスでモテまくりの右京が、今まで特定の誰かに好意を寄せることもなく、誰とも付き合って来なかったのに、「バイ」。
なぜ?
恋愛感情が欠けている、アセクシャルというのなら分かるけど、「バイ」。
さらに過去に嫌な経験をしたせいで周囲が「宇宙人」に見えていた葵が、誰にも興味を示さない右京は自分と同じ、宇宙人じゃないと感じる場面があって、その後も「他人はみんな宇宙人、右京だけが自分と同じ」押しをしているのですが、これも意義あり。
葵は高校生のときには既に自分が「ゲイ」だと自認していて、大学生になってからは一夜限りの相手と遊んだりしてきてるんですよ。
恋愛感情も性欲もない右京と、恋愛感情があって性欲もある葵は「同じ」じゃないんじゃないかと。
むしろ葵はその時点で、「自分も宇宙人だったのか!」と思う方が自然に思えたのですが、「右京と同じ」を貫き通すことに違和感がもりもり盛り上がってまいりました。
こういう決めつけや、型に嵌めたがるところに、作者さんの「この2人は運命共同体なんですよー」という思惑を感じてしまって、やや興醒めでした。
警察が絡むような犯罪に関わる依頼の辺りは、唸り続けてしまいました。
この流れって、いつもバーにいる探偵と大学で研究助手をしている相棒に感化されすぎてませんか。
ダメ出しばっかりで心苦しい。でももうひとつだけ。
ペット探偵なのになぜかふつうの依頼が来まくる/2階に事務所があるのになぜかカフェ=探偵という認識ができている点について、もう少し情報が欲しかった。
街で噂になるくらい口コミ情報が飛び交っている状況を、電球を替えるような雑用ばっかり頼んでくるおばあちゃん(実はビルのオーナーで、不動産を手広くやってる)が良かれと思って宣伝してくれていたおかげだったとか、そういうエピソードがあったら、もっとすんなり読めた気がします。
ドラマや映画にもなっている「便利屋」と被ってしまって、それを前提に書かれているような印象を受けました。
愛犬マルコは可愛いし、食べ物もいっぱい出てくる。
えろすの描写は擬音なしで喘ぎ少なめだから、BL小説初心者でも読みやすいかと思います。
でも力一杯おすすめするには、ちょっとツッコミポイントが多すぎる。
そんな1冊でした。