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ai wa kyouseisousa de abakareru
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
小野田さん二冊目がこちら。
デビュー作は警察、今回は検察。
表紙やタイトルから想像するのとは違って、硬派です。
あるIT企業の実際の事件を題材にしていて、ニュースで散々取り上げられましたので、朧げながらも頭に概要が浮かびやすかったです。
正直色気は足りませんが、面白かったです。
三歳の頃父を事故で亡くし、母を癌で亡くした由宇斗は兄の可威斗(かいと)までも母と同じ病で亡くし、天涯孤独の身。
そんな由宇斗を幼い頃から知り、ずっと気にかけてくれたのは、兄の親友だった高津と成瀬。
高津は兄とともに起こした会社を引き継ぎ、破竹の勢いでITの大企業として成長させ、現在もITだけでなく様々な分野にその手を広げようとしています。
成瀬は検事となり、仕事柄異動が多く今は大阪にいるはずでした。
しかし突然成瀬から連絡があり、東京地検に異動になったと聞かされます。
由宇斗は成瀬に密かに恋心を抱いていました。
成瀬が戻ってくることに喜びを覚える由宇斗ですが、成瀬の突然の異動にはわけがあり、それが高津、由宇斗、成瀬の関係を狂わせていきます。
亡くなった兄、高津、成瀬、そして由宇斗の、過去から続く友情や愛情が絡みます。
4人の仲は、それこそ由宇斗が本当に小さかった頃からのもので、それぞれに抱く思いはとても深いんですね。だからただ不正の告発という事件の面白さだけでなく、その裏にある想いが切なさを誘います。
由宇斗と成瀬の恋愛は、由宇斗が意を決して告白をして、成瀬も実は同じ気持ちで、すぐに成就してしまうので恋愛がメインではありません。
由宇斗と成瀬にとって、亡くなった兄にとっても大切な人だった高津の罪についてがメインになりますが、罪と友情の狭間で悩む部分というのはほとんどないです。
どちらかというと高津の罪を明らかにして、償って欲しいという気持ちの方が成瀬も由宇斗も強いです。ですが、その裏にある思いは当然複雑なわけで、そのへんを想像するとやはり切ないと思うのです。
由宇斗視点で進みますので、検察側の推理とか捜査や成瀬の気持ち、検察の動きを探る高津の思いなどがあまり書かれていないのがちょっと残念な気もしました。その辺が書かれていたら、さらに緊迫感も加味されていたでしょう。
だけど、一番切ないのは多分高津だろうと思います。
本編のあとにある「千年の嘘、久遠の恋」を読むとわかるんですが、高津の気持ちを考えると、本編で語られた高津の罪を、また違う観点から考え直してしまうんですね。
高津の心はたぶんまだ癒されていないんでしょう。
その苦しみを考えると辛くなります。
本編ではある意味悪い役となってしまっていますが、実際は高津の話なのかもしれないです。
エロ面も期待できませんが硬派な感じがお好きならいけると思います。