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okubyoumono ga yume wo miru
嫌いなはずのマイナス思考な主役の受け、なぜか好きでした。
ずっと流され続けるような生き方しかできなかった受けが、失う怖さに脅えるあまり好きな人からのアプローチを許諾できなかったこと。でも、最後の最後に勇気を出して、攻めの腕のなかに自分から飛び込んでいったこと。
ちょっとジーンとしました。
主人公はゲイの官能漫画家(受け)です。彼氏にフラれたばかり。
そんな彼に執筆依頼してきたのが、大手出版社の担当編集者(攻め)。
何度も打ち合わせを繰り返すうちに、主人公は彼を好きになってしまう。期待もしてなかったのに、攻めからのアプローチを受け、主人公は、喜ぶ前に脅えてしまう。
そこで、主人公のトラウマの原因となった過去の出来事のあれやこれやが、回想のなかで掘り起こされてゆきます。
シリアスで暗いムードにはせず、軽いタッチでストーリーを展開させながらも、『ゲイはマイノリティであること』にきちんと向き合った小説で、好感を持ちました。
ある日、官能マンガ家の昂の元に、大手出版社から月刊の少年誌にマンガを描かないか? という執筆依頼がやってくる。当初、あまり乗り気ではなく、少し渋った昂だったが、アシスタントに背中を押されて、一度メールをくれた編集者と会うことになる。
その昂の担当になった編集者は、学術書から異動してきた一つ年下のエリート編集者・真行寺。真行寺は新作のネタ打ち合わせにはとても熱心だけど、セックスの描写の話になると、なぜか話題をそらしてばかりいた。
それを不審に思っていた昂だったが、ある夜、「あなたは経験豊富なんでしょうね」と真行寺に不意打ちでキスされてしまう。
戸惑う昂に真行寺は「つき合ってくれ」と告白してくる。
仕事相手とそんな関係になることに躊躇いを覚えた昂はその話を保留にしてしまうが、そんな時、昂の初体験の相手・上総と再会する。
再会した上総は、「この再会は運命かもしれない」と言い、「もう一度付き合わないか?」と昂に伝えてくる。
昂は、上総に懐かしさを覚えて流されそうになるものの、イマイチ一歩踏み込めなくて……
結局、どちらともから告白された昂は、悩んだ挙句に真行寺と付き合うことにするんです。
上総の執着は、昂には過去を懐かしむだけのようにしか、思えなくて。
まぁ、妥当な選択だとは思います。上総の気持ちはやっぱり、昂の立場だったら、昂のようにしか感じられないと思うし。
ただ、どちらかというと、話の比重的に、上総との関係に重点が行き過ぎてたような気はしてならない。意外と、真行寺の存在がかすんでたように思います。
まぁ、基本的に、この話のメインが、二人の男から告白された優柔不断な男の苦悩って感じのテーマだと思うし、いかに過去に蹴りをつけて、新しい恋に向き合うかっていうのが重要になってくると思うので。
過去をふっ切るために、過去の話の方が比重が大きくなりがちなのかなぁ……と思います。
もっとも、過去の男もまだ、完全にあきらめたわけじゃないようだし、今の男になった男も、なかなかに独裁的っぽい尻尾がひらひらと見えてるので、やっぱり昂は苦労しそうだな……と、思います。